【ゲキ追】業者を直撃!クレジットカード不正利用 “使えないカード”で買われた商品の行方を徹底追跡

通販サイトで急増しているクレジットカードの不正利用。通販会社が、商品を送っても、代金は支払われることなく、商品だけが購入者の手にわたる。商品の行方を追っていくと、その先には「転売」の実態が…。様々な人物が関わり、複雑化している不正利用。専門家によると、分業体制が進み、1人の人間で不正利用が完結していることは、もはや少ないという。巧妙な手口と実態を、徹底追跡した。

【特集】通販サイトで急増!クレジットカードの“不正利用”でだまし取られた商品の行方を徹底追跡

 近年、通販サイトを狙ったクレジットカードの不正利用が後を絶たない。代金が支払われることなく、商品だけがだまし取られるという被害―。犯人は商品を転売して利益を得る一方、店側は泣き寝入りするしかないのが現状だという。商品の発送先をたどり、行きついた先には何があるのか…見えてきたのは様々な人物が関わる巧妙な手口。その卑劣な犯行の実態を追った。

商品をだまし取られる被害に遭った 通販会社社長 松尾充泰さん

 大阪で火災警報器やペットフード、防災用品などを取り扱う通信販売の会社を営む、松尾充泰(まつお・みつひろ)さん、53歳。2021年10月、不正利用されたクレジットカードで商品をだましとられる被害に遭った。

(松尾さん)
「東京都の方から注文がありまして、あるお客さんに商品を送りました」

 注文されたのは、災害時やアウトドアで使われるポータブル電源。価格は4万円を超える高額商品だ。ところが…。

注文された商品は、4万円を超える高額商品

(松尾さん)
「これは、そんなにうちで売れる商品ではなかったんです。それが一つ売れることは特に怪しくはなかったんですが、同じような注文が立て続けに入ったわけです」

 別々の人物から連続して入った、3件の高額注文。不審に思った松尾さんは購入者の情報を調べた。すると…

(松尾さん)
「お客様の電話番号に電話したところ使われていない電話番号だということが判明して、他の2件も調べたら、それも電話番号が使われていない。かつメールアドレスがフリーのメールアドレスでした。これで私たちは間違いなく不正利用による詐欺事件だということに気付いたんです」

 しかし、詐欺だと気付いたときにはすでに最初に注文された商品を発送した後だった。実は、松尾さんは2020年にも同じ手口で、3度も不正利用の被害に遭っている。

クレジットカードの不正利用による被害

 クレジットカードを不正に利用された場合、商品は不正利用した人物に渡るが、代金はもともとのカードの持ち主が支払うことになる。しかしその後、不正が明らかになれば、商品を販売した側、この場合は松尾さんがカードの持ち主に代金を返金しなければならない。

 つまり、商品を販売した側は不正利用者に商品をだましとられた上に、その代金も負担しなければならないのだ。松尾さんのこれまでの被害額は22万円にのぼるという。
   
(松尾さん)
「1件売って私たちの利益は数百円。千円を超えることはまずないんですよね。金額としては22万円というのは我々の小さな会社の規模であれば大きなものです」

 会社の経営へのダメージは大きい。

だまし取られた商品の“発送先”を追跡

商品の発送先には30代くらいの中国人女性が住んでいた

 詐欺に関わっているのは一体どんな人物なのか―。

 記者はクレジットカードの不正利用で購入された商品の送り先である、東京都世田谷区のアパート訪ねた。購入者は日本人の男性と思われる名前だったが、そこに住んでいたのは30代ぐらいの中国人女性だった。

 女性は我々の取材に対し、「自分は商品の購入者ではなく、届いた荷物を別の場所に転送するアルバイトをしているだけだ」と話した。商品の購入者の男性とは面識がないという。女性はアルバイトを始めたきっかけについて、SNS上で、ある中国人男性が出していた求人に応募したと話した。

女性が中国人男性とやりとりした、実際のメッセージ

 女性と中国人男性が実際に交わしたメッセージのやりとりは…

(男性からのメッセージ)
「荷物1つで30元~80元(約540円~約1450円)で、1日に8個くらいから始めましょう。慣れてきたら10数個でもいですし」
(女性が送ったメッセージ)
「具体的には何をするのですか?」
(男性からのメッセージ)
「荷物を受け取ったら写真を撮ってそれを発注します。それから梱包して顧客の住所まで送ります。送料は我々がすべて払います」
(女性が送ったメッセージ)
「通常はどのような荷物ですか?」
(男性からのメッセージ)
「化粧品、日用品、電化製品などです」

女性は自宅に届いた80個以上の荷物を転送していた

 男性は自らを通販会社の関係者と名乗り、女性に届く荷物は全て注文があった商品で、それらを顧客に送るのが仕事だと説明した。女性は犯罪に関わっているという自覚はなく、1件、1200円程度の報酬で、これまでに自宅に届いた80個以上の荷物を男性から指示された住所に転送したという。女性によると、その転送先のひとつは、東京都墨田区にある通販会社だった。

だまし取られた商品と同じ型番の商品が安く販売されていた

 そして、この通販会社のホームページを見てみると、松尾さんがだましとられたポータブル電源と同じ型番の商品が安く販売されていたのだ。松尾さんは真相に迫ろうと、その商品を購入した。すると…

(松尾さん)
「私たちが騙し取られた商品と同じ物なんですけど、シリアルナンバーを見たくて購入しました。私たちがメーカーから聞いたナンバーが付箋で、実際のシリアルナンバーがこちらです。間違いなく私たちが仕入れてだまし取られた商品と全く同じものであるということが、これで証明できます」

届いた商品と、だまし取られた商品の“シリアルナンバー”が一致

クレジットカード不正利用の犯人なのか?関係者を直撃

東京の通販会社を直接訪ねた松尾さん

 松尾さんは直接話を聞こうと、東京の通販会社に向かった。住宅街にある3階建ての建物の1階にその会社はあった。早朝、会社の前で待っていると現れたのは社長を名乗る男性。松尾さんはすかさず直撃した。

(松尾さん)「うちの盗み取られた商品をたどっていったら、ここにたどり着いた」
(被害品販売していた通販会社 社長)「買い取りして、買い取りしたものを販売していただけです。うちは古物の買い取りをしていますので」
(松尾さん)「おたくは仕入れを依頼しているわけ?」
(通販会社 社長)「そんなことは依頼しないですよ。向こうが送ってくる。これを買ってくれって」
(松尾さん)「じゃあ値段は、どうやってつけるんですか?」
(通販会社 社長)「LINEです。LINEのやりとりで買っています」
(松尾さん)「商品が先届いてから、いくらなら買い取ります。みたいな?」
(通販会社 社長)「そういうことです。合わないものは返品する」

 通販会社の社長は、「クレジットカードの不正利用の被害品とは知らなかった」、「身元を確認したある人物から送られてくる商品を買い取っているだけだ」と説明した。一方、どんな人物から商品を買い取っているのかを語ることはなかった。

横行するクレジットカード不正利用 通販狙う手口の共通点

クレジットカード不正利用の被害額(グラフ/日本クレジットカード協会調べ)

 近年、クレジットカードの不正利用は右肩上がりに増えていて、2020年の被害額は1年間で253億円に上る。

 かっこ株式会社では、通販サイトでのクレジットカードの不正利用を監視していて、約2万の通販サイトと契約を結んでいる。

(かっこ株式会社 青木泰貴部長)
「不正者の注文の仕方など、外部のデータや自分たちが持っているデータを駆使して、注文が入るたびに、その注文が“どれくらいリスクがあるかを瞬間的に判定する”ことを提供しています」

 不正利用されたクレジットカードによる注文には、いくつかの共通点があるという。

不正利用されたクレジットカードによる注文の共通点

(かっこ株式会社 青木泰貴部長)
「クレジットカードの不正利用となった注文の画面になります。NG、この注文は出荷すると非常にリスクが高いですよ、という判定をしています。なぜNGになったかという理由が出ています。『この注文の配送先の住所が過去不正にあった住所と一致しています』というのを表しています。あと、言語設定がベトナム語とあるんですが、海外から不正のアタックを受けるケースが非常に多いので、そこも判定の材料として使っています」

 不正と検知される注文のほとんどは海外からのもので、注文者や電話番号などを偽造し、架空の人物になりすまして荷受人がいる住所へと発送させるケースが多いという。

(かっこ株式会社 青木泰貴部長)
「実は弊社の方で不正と判定している物自体は、2021年1年間で約750億円ほどありまして、実際に公式に発表されているものよりもはるかに大きい額の不正が発生しているというのが実際としてあります」

クレジットカード不正利用の要因…「フィッシング詐欺」の手口

巧妙に作られた“偽サイト”へ誘導する、フィッシングメール

 後を絶たないクレジットカードの不正利用。被害が拡大している大きな要因となっているのが、「フィッシング詐欺」といわれる手口だ。

(フィッシング対策協議会 吉岡道明さん)
「フィッシング詐欺に関しては実在する事業者をかたって本物のサイトと誤認させて、IDパスワード、個人情報を詐取する行為をフィッシング詐欺といっています。多くのフィッシング詐欺は クレジットカード情報の詐欺が目的と言われています」

大手通販サイトのログイン画面 左が本物で右はフィッシングサイト

 ある大手通販サイトのログイン画面。一見、2つの画面は同じものに見えるが、実は左の画面が本物で右の画面はそれを模倣したフィッシングサイトだ。ある日、URLが載ったメールが届き そこから精巧につくられた偽サイトに繋がってしまう…有効な対策はないのだろうか?

(フィッシング対策協議会 吉岡道明さん)
「カード情報を本人確認と称して入力させようとしますので、通常のサイトでカード情報を入れる タイミングはほとんどないので、そういった情報を入れさせようとした場合にはフィッシング詐欺かもと怪しんでもらって、十分確認するということをお願いしたいと思います」

松尾さんは、大阪府警に被害届を提出した

 松尾さんはその後もだまし取られた商品の痕跡を辿ったが、不正利用者にたどり着くことはできなかった。大阪府警は松尾さんから被害届を受理し、捜査に乗り出している。

(松尾さん)
「詐欺を行った、不正を行った人が一番腹立つわけですけど、その人たちだけでは、この仕組みは成り立たない。なんてひどいことをするんだろうという悲しい気持ちと怒りが大きいです」

(読売テレビ 「かんさい情報ネットten.」 2022年1月18日放送)

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