1月13日(火)
“危険な踏切”事故続出も…ナゼ解消進まない?遮断機が上がってもすぐ警報音“開かずの踏切”も 関西各地の踏切を取材
全国に約32,000か所あり、私たちの暮らしに身近な存在である「踏切」。しかし現実には、いまも2~3日に1人のペースで踏切事故による死傷者が発生しています。なぜ、危険な踏切の解消はなかなか進まないのでしょうか。
神戸市垂水区の「歩行者の待機場所が狭い踏切」、大阪府堺市の「開かずの踏切」、兵庫県高砂市の「交差点との距離が近い踏切」など、関西各地に点在する「危険な踏切」。その現場と関係者への取材を通じて、対策の現状と難しさを「ゲキ追」しました。
【実態】幅80cmの待機スペース、1時間のうち46分“開かず”…全国に残る危険な踏切 “命の対策”が後回しにされるワケ

“危険な踏切”その実態とは―
私たちの暮らしの身近に存在する『踏切』。しかし、そんな踏切を巡った事故が全国で後を絶ちません。残存する“危険な踏切”の実態と、解消が進まない理由を取材しました。(取材・報告=読売テレビ・瀧本怜佳記者)
中国人観光客に何が?2人が死亡した踏切事故

なぜ事故は起きたのか
2025年1月、兵庫・神戸市垂水区の踏切で、中国人観光客2人が電車にはねられて死亡する事故が起きました。現場は、JRと山陽電鉄の線路が連なる踏切です。2人は横断歩道を渡るために信号待ちをしていた際、誤って踏切の遮断棒の内側に立っていたとみられています。

拡張工事が進む神戸市垂水区の踏切
事故当時、踏切と国道2号の横断歩道の間にある『歩行者用の待機スペース』は、わずか1mほどの幅しかありませんでした。待機スペースが不十分だったとして、国や市などは2025年11月から拡張工事を始めました。
地元住民も恐怖を覚える“危険な踏切” 一方、市の認識は…

待機スペースの幅は約80cm
実は、その踏切からわずか500mほど西側に、一部の地域住民やネット上で「危険な踏切だ」とささやかれているスポットが存在します。中国人観光客が亡くなった踏切と同様、JRと山陽電鉄の線路が連なっている踏切で、「危険ではないか」と指摘される理由は2つの踏切の間にある『歩行者用の待機スペース』です。狭いところは幅約80cmほどで、歩行者のすぐそばを電車が走る造りになっています。

記者の目の前を電車が通過
どのぐらいそばを走るのか、記者が体験しました。
(読売テレビ・瀧本怜佳記者)
「姫路方面へ向かう快速電車が目の前を通過します……近いっ!音も、かなり大きいです。初めて来た人は、びっくりしてしまうと思います」

地元住民さえも恐怖を覚えるという
利用者はそれほど多くないものの、地元の住民でさえも恐怖感を覚えることがあるといいます。そんな中、この場所の危険性を管理者に尋ねようと取材を進めたところ、ある事実が判明しました。

神戸市・建設局道路管理課 澁谷修平課長
本来、踏切や周辺の道路には、鉄道事業者や市町村といった管理者が定められています。しかし、神戸市によると、この待機スペースについては管理者を定めた記録がなく、いつ・誰が造ったかもわからないといいます。
(神戸市・建設局道路管理課 澁谷修平課長)
「5年間、事故報告などは受けていませんし、地域の方から直接は『危ない』とか、鉄道事業者からも特に『危ない』という声は聞いていないので、今すぐ何か対応しないといけないという認識は持っていません」

関西大学・安部誠治名誉教授
これに対し、2005年に発生したJR福知山線の脱線衝突事故など、多くの鉄道事故を研究してきた関西大学・安部誠治名誉教授は、「かなり事故のリスクの高い踏切だと思う。2つの鉄道会社の線路を1回で渡るのは、ダイヤ上なかなか厳しい感じがする。初めて踏切を渡った人は危険だと感じると思う」と懸念を示しています。
大阪・堺市の“開かずの踏切” 遮断機スレスレを走る人々

“危険な踏切”ほとんどが残存
現在、全国には約3万2000か所(2025年度時点)の踏切が存在していて、1336か所について国は「緊急に対策の検討が必要」と定めています(2021年10月時点)。5年前と比べて100か所ほど減少したものの、いまだほとんど残っているのが現状です。

踏切前で多くの人が滞留
そのうちの一つが、大阪・堺市のJR阪和線『鳳駅』すぐ北側にある踏切です。記者が平日の午前8時すぎに訪れると、通勤・通学の時間帯ということもあり、多くの人らが踏切前で遮断機が開くのを待っていました。そして、遮断機が開いた途端、またすぐに警報音が鳴り始めました。

子どもも車もギリギリ
ここは、1時間のうち最大46分も遮断機が下りている“開かずの踏切”です。仕事でこの踏切を頻繁に通るという車の運転手は、「このせいで仕事の時間が変わる。10分、いやもっと待つ時もある」と話していました。ひとたび遮断機が上がっても、またすぐに下りてしまう踏切―そのため、危険を顧みず踏切に進入していく人たちの姿が日常になっています。

“開かずの踏切”は堺市に9か所も
堺市には現在、JR阪和線と南海高野線で合わせて9か所の“開かずの踏切”が存在します。堺市は南海高野線などから高架化計画を進行中ですが、堺市・建設局道路部の松岡敬太さんは「一般的に(高架化をするのに)約1km当たり250億円という費用がかかる。(南海高野線などの高架化が)一定めどが立ってから、次の新規の路線については総合的に検討して進めていきたい」としています。
事故が発生しても残る踏切 高架化が進まないワケ

遮断機~交差点が“車2台分”
一方、これまで何度も事故が起きているにもかかわらず、いまだ残っている踏切もあります。
兵庫・高砂市にある踏切は、最寄り駅から200mほど離れた場所にあり、周辺には住宅のほか工場が立ち並ぶため、トラックの行き来が多いのが特徴です。しかし、遮断機から交差点までの距離がわずか12mと、車2台分ほどしかありません。交差点側の信号が赤になり、車が滞留すると、車と電車が接触する恐れがあるのです。

トラックが交差点に収まりきらず…
実際に13年前には、トラックと特急電車が接触する事故が発生しました。当時、トラックは前の交差点で車が滞留した状態で踏切に進入し、後方のスロープが遮断機に引っ掛かりました。そして、スロープを倒したところに電車が突っ込んだのです。この事故で特急電車は脱線し、電車の運転士や乗客など15人が重軽傷を負いました。

運転手が即死する事故も発生
さらに、この場所では61年前にも、一時停止を無視して踏切に進入してきたとみられるトラックと普通電車が衝突しました。トラックの運転手が即死、電車の乗客40人が重軽傷を負う事故となりました。

県と市が協議を始めるも長期化
兵庫県と高砂市は2017年から協議を始め、周辺区間の約2.5kmの線路を高架化する計画を進めています。しかし、高砂市・都市創造部の阪本賢太郎さんによると、今の時点では事業の完了時期は未定で、工事自体は10年でも難しい事業になるといいます。阪本さんは、「事業を進めるまでに(住民などの)合意形成を取るための丁寧な説明や、協議の中で様々な修正・調整が入ることで、長期化してしまうのが現状」と話していました。

一時的な対策は行われているが…
13年前の事故を受け、現場では、トラックが踏切内でとどまることを防ぐために、交差点に向かう中型以上の車の通行を禁止しています。注意喚起の看板を設置するなど一時的な対策が行われていますが、近隣住民によると、一日一回は中型トラックが通っていくのを見ることがあるといいます。危険という認識があっても、莫大な費用や関係者の多さから、抜本的な対策に時間がかかっているのが現状です。
「事故が起きるまで光が当たらない」悲惨な事故が起きる前に…

残っている踏切には個別の対策が必要
“危険な踏切”解消に、なすすべはないのでしょうか?鉄道の安全対策に詳しい関西大学・安部名誉教授は、「40年ほど前までは、鉄道事故というと踏切事故だった。(現在は)即効性のある対策がほぼ出尽くした段階なので、残っている踏切にはかなり特徴があり、個別の対策を取らなければいけなくなっている」と指摘します。

踏切事故件数は減っているが…
国土交通省によると、全国の踏切事故の発生件数は減少傾向ではあるものの、いまも2~3日に1人のペースで死傷者が出ています。しかし近年、それを上回って増えているのが、駅のホームなどで人と電車が接触する人身障害事故です。

事故が起きてから社会は認識する
事故の増加を受け、国や鉄道事業者は『ホームドア』や『ホーム柵』の導入を進め、今では当たり前の光景になりました。しかし安部教授は、「事故が起きてから対策に重い腰を上げる姿勢」に苦言を呈します。
(関西大学・安部名誉教授)
「実際に事故に直面すると『対応が必要だ』ということで、社会はそのことを認識します。しかし、事故が起こるまで、なかなかそのリソース(財源)の配分をする際の光が当たらない。大変いじいじする思いで 30年間、事態を見てきました」
事故が起きてからでは遅い―悲惨な事故が起きる前に、積極的な対策を進めることが必要です。
(「かんさい情報ネットten.」2026年1月13日放送)
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