10月4日(火)
精巧なニセモノ、スーパーコピーを見抜け!偽ブランド品をめぐる闘い 10月から法改正で輸入規制を強化、その背景とは
海外の業者が販売する偽ブランド品は、個人で使用する目的であれば輸入が認められ、税関でも没収できない現状にありました。しかし、法改正で10月1日からは「個人使用目的」でも没収が可能に。しかし既に偽ブランド業社はあの手・この手で規制を逃れようとしています。「素人が見てわかるようなものはもうない」…精巧に作られる偽ブランド品と闘う最前線を取材しました。
【特集】“偽ブランド品”被害損失は年間6000億円超 素人にはもう見抜けない「スーパーコピー」の事態

精巧な“偽ブランド品”を巡る攻防
後を絶たない“偽ブランド品”などの商標権侵害物品の摘発。2021年、税関が没収した商標権侵害物品は2万7千件以上、点数にすると約62万点に上ります。これまで、海外の業者が販売する偽ブランド品は、「個人で使用する目的」であれば輸入が認められていましたが、10月1日に法律が改正され、禁止となりました。なぜ規制が拡大されたのか?偽ブランド品をめぐる闘いの最前線を取材しました。
摘発の最前線 違法な荷物に目を光らせる大阪税関

違法な荷物がないか目を光らせる職員(大阪国際郵便局)
大阪府泉南市、関西国際空港の敷地内にある大阪国際郵便局には、1日に1万点以上の荷物が世界中から届きます。ここで偽ブランド品や違法薬物などが紛れていないか目を光らせているのが、大阪税関の職員たちです。届いた荷物を全てX線検査機にかけた後、画像を一つ一つ、くまなく確認していきます。
「これ何かの医薬品、漢方薬っぽい匂いがしますね」(税関職員)
違法な荷物と対峙し続けた経験が、わずかな違和感を見逃しません。
「軽い品名のものが書いてあるのに、重さが重い。逆に言えば重い品名が書いてあるのに、こんな軽いのかなって思うものもあります」(税関職員)
「過去にあった事例を自分で覚えておいて、それに似たようなものや同じような名前、そういったものを開けたりします」(税関職員)

怪しい荷物は開封して確認する
そして怪しい荷物を実際に開封すると、出てきたのは偽物の疑いがある品物の数々でした。2021年、税関が没収した、偽ブランド品などの商標権侵害物品は2万7424件、点数では62万点以上に上りました。しかし、この荷物の輸入を差し止めることのできない、「法の抜け穴」と言うべき深刻な状況がありました。
海外業者から偽ブランド品を輸入した場合、日本国内で転売するなど、「商業目的」であれば没収の対象となっていましたが、「個人で使用する目的」であれば没収できなかったのです。

「個人使用目的」を主張する意見書が届く
「郵便物に対する意見書が届いているので、それを確認しているところです。インターネット・アプリまたはSNSなどで、自己使用目的のために購入したという意見が多いです」(税関職員)
税関では、偽物の疑いがある品物について没収を試みますが、「個人使用目的」を主張する意見書を受取人が送ってくれば、没収できないケースも多いのが現状でした。
これを理由に輸入の正当性を主張する件数は年々増加し、2021年には没収を不服として争う件数が4080件に上り、8年前の約2倍になりました。そのため、10月1日に改正関税法が施行され、海外の事業者から送られる、商標権・意匠権を侵害する物品は「個人使用目的」でも、没収できるようになりました。しかし、偽ブランド業者は、既に、あの手この手で規制を逃れようとしています。
「問題視してない」 偽ブランド品業者は規制に対抗

破格の値段で取引される「スーパーコピー」
偽ブランド品の通販サイトを調べると、精巧さを売りにした「スーパーコピー」と称する、偽ブランド品を販売するサイトがずらりと出てきました。本物であれば100万円以上する、高級ブランドのバッグや時計などが破格の値段で販売されています。法改正により、こういったサイトは無くなると思われましたが、未だに存在するサイトには、この改正関税法に対する対応策が書いてありました。

偽ブランド品を売るサイトには“対策”も
Q.購入はできなくなる?
A.いいえ。これまで通り購入が可能です
Q.没収されたらどうする?
A.再度、新しい商品を無料で発送させて頂きます。当店他、中国のレプリカ業者もそれほど問題視していません。
没収されてしまうことは避けられないとしつつも、何度も商品を発送すれば、いずれは税関の目をかいくぐることができるという狙いなのでしょうか。
「素人に見抜ける品はない」 偽ブランド品被害の拡大

オンラインで高級ブランド品の買取・販売を行う「株式会社RECLO」(東京・品川)
偽ブランド品と闘う、もう一つの最前線があると取材班が向かったのは、東京都品川区。オンライン専門で高級ブランド品の買取・販売を行う会社です。海外の客に向けたオンライン販売にも力を入れていて、多い日には1日で600万円を売り上げたこともあるといいます。
「日本の鑑定士が鑑定しているので、海外のお客様にはすごく安心感があるということで海外でもよく売れています」(株式会社RECLO 古志野史嗣社長)
年間約3万点以上を鑑定する中で頭を悩ませているというのが、今のコピー品の質の高いものは、ほぼ見分けがつかないことです。どれだけ精巧になっているのか、鑑定士が実際に持ち込まれた偽物の一部を見せてくれました。

なかなか見分けがつかない偽物(左)と本物(右)
「違う点というのが、わかりにくいんですけど、本物の方だと縫製の糸がしっかり密に縫われていまして、きれいな長方形を描いていますが、偽物の方は少し縫い目がガタついていたり、糸の太さに対して穴が大きかったりします。つくりとしては雑です」(株式会社RECLO 小坂哲矢鑑定士)

よく見ると若干縫い目が違う
比較すると、偽物の方が本物よりも縫い付ける間隔が若干広くなっていることが分かります。さらに、より精巧な偽物を私たちに見せてくれました。

より精巧な偽物(左)と本物(右)
「ロエベのショルダーバッグですが、刻印の部分が、偽物の方は少し押しが強いものになっていて、指に当たると痛いまではいかないけど違和感というか、ざらっとしたような感じがあって、本物だと滑らかな刻印になっているので、指に気持ちいいものになっています」(株式会社RECLO 小坂哲矢鑑定士)

刻印部分にわずかな違いが
偽物の方が、ほんの少しだけ刻印部分の凹凸がはっきりしているように見えます。これらの精巧な偽物をフリマアプリなどで購入した客が売りに来ることも多いといいます。
「本人は『本物だ』と思ってお持ち込み頂くんですけど、結果として『これは偽物でした』ということでやっぱりすごくショックを受けられるお客様もいらっしゃいます」(株式会社RECLO 古志野史嗣社長)
知的財産の保護に取り組む団体によると、正規のブランド側がフリマサイトや通販サイトに対して、偽物が出品されているとして削除を依頼した件数は、2021年1年間で58万件以上に上り、偽ブランド品による損失は推計で年間6000億円を超えるといいます。
「他の業者さんで、よくできた偽物や人気のある商品の偽物の買い取りをしてしまった、という話もよく耳にしています」(株式会社RECLO 小坂哲矢鑑定士)
偽物と見抜けなければその損害は計り知れません。
本当に「安くてよく出来ているならいい」のか? 偽ブランド品が与える影響

偽物を買う人について街の人は…
偽ブランド品の販売サイトの多くは、「コピー」などと明記され、価格が非常に安いことから、偽物であることは明らかです。偽物だとわかっていて、偽物を買う人について街の人に聞くと…。
「わかっていて買うなら、いいんじゃないんですか。その人の価値観によるので、本人がそれでいいと思っているならいいと思います」(男性)
「別に好きにしたらって感じ」(女性)
中には実際に偽物を購入した経験があるという人もいました。
「ヴィトンの財布を買いました。わからんし、安いし、いいやんって。(Q.ちなみにこのバッグは?)これも多分偽物」(女性)

大阪税関「知的財産侵害物品の流通は経済に悪影響」
「安くてよく出来ているならそれでいい」と考える人たちは一定数いますが、今回の法改正で個人使用の目的であっても、海外の業者から偽ブランド品を輸入することは禁止されました。
「知的財産侵害物品の流通は、経済に悪影響を与えたり、安全性が確保されていないものも多く、そういった知的財産侵害物品がまん延しないように、税関としてはしっかりと取り締まりをやっていきたい」(大阪税関業務部 鈴木寛太知的財産調査官)
偽ブランド品を取り巻く現状の改善に向けては、法整備と税関の取り締まりだけではなく、私たち一人一人のモラルが試されているのではないでしょうか。
(「かんさい情報ネットten.」 2022年10月4日放送)
ホームページ上に掲載された番組に関わる全ての情報は放送日現在のものです。あらかじめご了承ください。