1月27日(火)
家族を支えながら働く“ワーキングケアラー”が増加 毎年10万人が介護離職 仕事と介護の両立を阻む壁とは 【かんさい情報ネット ten.ゲキ追】
高齢化の影響で親の介護をしながら働く”ワーキングケアラー”が増加する中、年間約10万人が介護のため仕事をやめています。母親の退院を機に仕事を失った男性や、認知症の母を支えながら複数の仕事を掛け持ちする女性。そして両立を支援する企業の取り組みも広がっています。家族を介護する人が直面する葛藤や制度の課題、支え合うための新しい試みとは―。仕事と介護の両立を阻む壁、その背景にある実態を「ゲキ追」しました。
【課題】会社が国の制度を認識せず…働きながら家族を介護する“ワーキングケアラー”の離職が相次ぐ 仕事と介護の両立を阻む壁と孤独な現実

介護離職の現実とは―
高齢化の影響で増えているのが、親の介護をしながら働く『ワーキングケアラー』です。現在、家族を介護している人は全国で約795万人にのぼります。そんな中、介護と仕事の両立に行き詰まり、年間約10万人が仕事を辞めています。家族を介護する人が直面する課題を取材しました。(取材・報告=読売テレビ・蔦遥香記者)
両立を阻む『時間』の問題 再就職も難しく…

内田文博さんと母・照子さん
大阪市東成区に住む内田文博さん(64)は、母・照子さん(89)と4年前から2人で暮らしています。4年前、照子さんが新型コロナにかかり入院したとき、不整脈もあり、病院から「常に見守る人がついていないと退院させられない」と伝えられました。

可能な限り働こうとしたが…
工場に勤めていた文博さんは、仕事を辞めました。
(内田文博さん)
「(照子さんのデイサービスは)午前9時ぐらいから。午後3時~4時に帰ってくるので、工場長には『3時までだったら仕事ができる』という話をさせてもらったんですけど、回答は結局返ってこなくて。もう迷惑かけるのもあれやから、とりあえず退職しないとしょうがないかなと思って」
会社側が国の介護休暇などの制度を認識しておらず、文博さんも知る機会がなかったため、仕事と介護の両立は不可能だと考えました。

文博さんが身の回りの世話をする
照子さんは、介護の必要量を表す『要介護度』が5段階中3で、歩くことや身の回りのことを一人で行うことは困難です。施設への入所もできますが、照子さんは住み慣れた自宅で過ごすことを希望しました。
(文博さん)
「話をしてあげないと黙ってじっとしているので、なるべく声をかけて、話して。会話していると結構頭も使うので、良いことだと思います」

時間の問題もあり再就職は難しかった
再就職先を探しに行ったこともありますが…。
(文博さん)
「ハローワークにも行って仕事探しはしたけど、(働きたい時間に)合う時間がなくて。悔しい思い、いら立たしいというのはあります」
文博さんは、これからも母の介護を続けることを決意しました。

おしゃれだった母に今もネイルを…
「いつまでも母らしくあってほしい」という思いから、2週間に一回、母にネイルをしてあげています。
(文博さん)
「もともとオシャレな人だったから、いつまでも女性であってほしいと思うので、昔のようにネイルを塗っているんです」
寝ても覚めても介護・仕事・家事…ワーキングケアラーの孤独

仕事を掛け持ち・九野文子さん
兵庫・川西市に住む九野文子さん(55)は3年前、介護タクシーや入浴の介助をする、自費での介護サービスを提供する会社を立ち上げました。さらに、以前働いていた介護施設でのサポートや、流通業務のアルバイトなどを掛け持ちしています。
(九野文子さん)
「最近、介護タクシーの売り上げが減ってきているので、掛け持ちをしないと経済的にしんどくて」

お互いキツい言い方に…
九野さんは、軽度の認知症と診断された母(78)と同居していて、介護をしながら働くワーキングケアラーです。
(九野さん)
「服は、こんなんで行くの?寒いで?」
(九野さんの母)
「着ている」
(九野さん)
「いやいや、この上に何か着ないと寒いよって」
(九野さんの母)
「嫌。重たい」
(九野さん)
「知らんで、寒いって言っても。靴下は?」
(九野さんの母)
「もうええ、めんどくさい」
(九野さん)
「いや靴下はいていかんと寒いって言ってんねん、だから!」

気が休まる時がない
家にいるときは常に母を見守り、気が休まるときはありません。母は一人で歩くことが難しくなってきていて、外出の際にはサポートが必要です。家の中での手助けだけでなく、月に一回、母の病院にも付き添っています。

介護して仕事して…
介護の後は一息つく間もなく、勤務先へ向かいます。自営業のため仕事が急に入ることもあり、最大で16時間、仕事のために家を空けることもあります。

人に相談する時間もなく…
家に帰ると、すぐに夕食の準備に取りかかります。自分の分のご飯は簡単に済ませる日も多く、この日は夕食の後に数時間仮眠を取り、夜勤に向かうといいます。
忙しい日々を送る中で、相談相手が生成AIになることも…。
(九野さん)
「これが(勤務先の)利用者さんだったら、こんな言い方しないよねと、後になってすごく後悔したり。どうして自分の親に対しては、そういうふうに接することができないんだろう」

国の『育児・介護休業法』
国の『育児・介護休業法』は、仕事と介護の両立を支援するため、対象となる家族1人につき通算93日間休むことができる介護休業などを定めています。
ただ、法律が労働者対象のため、個人事業主の九野さんには適用されません。「仕事の量を自ら調整できるから」とされていますが、介護を理由に休めば経済的に損失につながり、休みは取りにくいといいます。

理想は“駆け込み寺”のような施設
Q.仕事と介護を両立する上で、社会にあればいいと思うものは?
(九野さん)
「これは本当に理想なんですけど、DVとかの駆け込み寺は結構あるじゃないですか。一時的に保護をしてくれるような、家族に対しての(駆け込み寺のような)施設があればいいなって…」
当事者同士が本音で語り合える交流会 参加者らは涙…

ワーキングケアラーや専門職が集う交流会
2025年12月、兵庫・神戸市のカフェで開かれていたのは、ワーキングケアラーや看護師などの専門職が集う交流会です。介護の情報を共有する一方、参加者が本音で語ることで、互いにつながり合う場になっています。

働きながら夫を介護・南部沙恵さん
南部沙恵さんは、週4日働きながら、脳出血と診断された夫を在宅で介護しています。
(脳出血と診断された夫を介護・南部沙恵さん)
「こんなふうに『頼っていいんだよ』と言ってくれる人がいるだけで、幸せなことだと思います」

一人で抱えてきた思いを共有できる場所
Q.参加して、何か考えが変わられたことなどありますか?
(会に参加したソーシャルワーカー)
「…………」
思いが込み上げ、涙が溢れてしまいました。
両立支える企業も…今後、求められる知識と居場所

両立支える取り組みを始める企業も
企業の中には、仕事と介護の両立を支える取り組みを始める動きもあります。株式会社『西川』では、社員が定期的に社会福祉士と個別面談を行うことができます。取り組みを始めてから、介護離職者はゼロになりました。

株式会社『西川』西川滋夫社長
(株式会社『西川』西川滋夫社長)
「一度誰かが退職すると、それをカバーするのにかかるコストは非常に大きいんです。特に最近では人材不足で、募集をかけても、このような中小企業であれば、なかなか人が集まらない」

はる社会福祉士事務所・佐々木さやか代表
『育児・介護休業法』は2025年4月に法改正され、介護を行っている社員に対し、企業内で介護制度を周知することが義務化されました。
しかし、専門家は課題を指摘します。
(はる社会福祉士事務所・佐々木さやか代表)
「特に中小企業には、なかなか周知が進んでいません。義務化といえども、厳しい罰則があるわけではないので。介護は誰にでも起こることだから、『直面したとしても両立していこう』というメッセージを出し続けるということが大事だと思います」

これからの社会に求められること
ワーキングケアラーは、2030年には介護者の約4割にのぼる見込みです。「親を介護することは当たり前」という責任を感じ、悩みや葛藤を抱えている人は多くいます。正しく知識を得る機会と、頼れる居場所を広げていくことが求められています。
(「かんさい情報ネットten.」2026年1月27日放送)
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