総合格闘技に49歳で現役復帰 がんを克服 彼女が戦い続けるワケは…

49歳で総合格闘技の世界に現役復帰を果たした三島貞枝さん。
夫は総合格闘技のレジェンド。夫婦で道場を営み、
三島さんは、チャンピオンを目指しましたが、
寸前でその座を得ることができませんでした。
引退した三島さんを、卵巣がんという病魔が襲います。
夫に支えられ、がんを克服した三島さんは、
今再び、「現役復帰」という目標に挑みました。
挫折も苦悩も経験した彼女が「戦い続けるワケ」とは…

【独自取材】ガンを克服し49歳で現役復帰した女性総合格闘家、チャンピオンを諦め母にもなれず…幾度の試練乗り越え見つけた“新たな夢”と“生きる意味”

総合格闘家・三島貞枝さん(49)

 ある格闘技道場で、激しいトレーニングに取り組む一人の女性・三島貞枝さん(49)。彼女が魅せられたのは、総合格闘技の世界。かつてチャンピオンを目指しましたが、その座を得ることはできませんでした。その後貞枝さんは、子どもを授かるために引退。しかし今度は、彼女をガンという病魔が襲います。それから数年後…貞江さんはなんと、総合格闘技の選手として、現役復帰を果たしたのです。数々の試練を乗り越え、再びリングに立つことを決意した彼女が、今思う“幸せ”とは―。

幅広い世代を魅了する総合格闘技

総合格闘技道場コブラ会(大阪市福島区)

 総合格闘技とは、パンチや寝技などすべての要素で戦う、格闘技の一種です。三島貞枝さんは現在、夫と共に大阪市福島区で、総合格闘技の道場である「総合格闘技道場コブラ会」を経営し、100人以上の生徒の指導にあたっています。

女性の生徒も多数在籍(左・読売テレビ 中谷しのぶアナウンサー)

 近年、女性の利用者も増加しているという総合格闘技。「コブラ会」でレッスンを受けた生徒に話を聞いてみると…

「週3回来ています。その日が終わったら、次が楽しみです」(女性利用者A)
「貞枝さんは、笑顔も素敵ですし、優しいです 」(女性利用者B)

三島さん夫妻

 20代後半から格闘技を始め、テコンドーやキックボクシングなどを経て「最終的に総合格闘技に行き着いた」という貞枝さん。それが、彼女の運命を変えることになります。

Q 2人の出会いのきっかけは?
「えー、出会い系…」(夫)
「違う違う!うそうそ!(笑)道場に行ったら、『出稽古に来ている人がいるので、その人と練習してください』と先生に言われたんです。そしたら、タンクトップを着てムキムキの人が来て…練習のペアになったんですけど、あまりしゃべらないから、ずっとブラジルの人だと思っていたんです。その翌日に『三島☆ド根性ノ助が来てたやろ』って言われて、そのときにそのブラジル人が『三島☆ド根性ノ助』だったって知りました(笑)」(貞枝さん)

出会った頃の三島さん夫妻

 実は貞江さんの夫は、同じく総合格闘家の「三島☆ド根性ノ助」こと睦智(よしとみ)さん。現役時代には2階級でチャンピオンに輝いた、総合格闘技界の“レジェンド”なのです。

2人は8年前に結婚

 外国人に間違えるというひょんな出会いから2人は通じ合い、8年前に結婚しました。睦智さんの指導もあり、2013年貞枝さんは初のタイトルマッチに挑戦、夢のチャンピオンまであと一歩に迫ります。しかし、惜しくも敗退…。これを機に、もう一つの夢を叶えるため、リングを降りる決断をしたのです。

タイトルマッチで敗退…(左・貞枝さん)

「子どもが欲しかったので、年齢的なこともあって、結婚してすぐ不妊治療を始めたんです。不妊治療と並
行して競技はできないので、練習はやめました」(貞枝さん)

チャンピオンになる夢を諦めてまで始めた不妊治療でしたが、貞枝さんは医師にあることを宣告されます。

「治療の途中で『卵巣がちょっと』と医師に言われて。卵巣を検査したら『卵巣ガン』と言われて、卵巣も子宮も全部取らないといけないとなって…。チャンピオンにもなれなかった。お母さんにもなれない。この8年間はいったいなんやったんやろって、そのとき思いました。ガンの治療をしたら子供ができなくなるって思った瞬間に、治療しないでおこうかっていう話を…」(貞枝さん)

睦智さんの言葉でガン治療を決意

 どうしても子どもが欲しい…貞枝さんは諦めきれず、一度は手術を拒否しました。そんなとき、夫・睦智さんがある言葉をかけました。

「主人が『生きてるだけでいいから』と言ったんです。私がいてくれたらいいって思ってくれてるのなら、じゃあ手術しようかなと思って…」(貞枝さん)
「僕の中では命が100%なので。命が一番大事なんで。当たり前の選択だと思っています。逆になんでそんなんで悩むねん、と思うんですけどね」(睦智さん)

子どもたちとの触れ合いから見つけた“新たな夢”

編み物を楽しむ貞枝さん

 2人が暮らす自宅は、道場にほど近い場所にあります。

「編み物が趣味です。こういうことをしているのが楽しいんです…」(貞枝さん)

猫とこたつに入りながら、編み物を楽しむ貞枝さん。一方睦智さんは、別の部屋で…

睦智さんの趣味はフィギュア

Q 何をされているんですか?
「フィギュアの飾り付けです。めっちゃカッコよくないですか?(笑)全然見たことのないアニメでも、形がよければ、欲しくなって買ってしまうんです。」(睦智さん)

道場では熱い格闘家の2人ですが、意外とインドアなんです。穏やかな声で、貞枝さんは話します。

「三島さんはフィギュアをして、私は編み物をして、猫と遊んで、そして道場に来て、の繰り返しですね」(貞枝さん)

小学生へのレッスンが貞枝さんの楽しみ

 がんを克服した貞枝さんが、楽しみにしている時間があります。それが、週に2回の小学生へのレッスンです。そこで、子どもたちにいつも伝えていることがあります。

(子どもたちに語りかける貞枝さん)
「勝ち負けはあると思います。でも、勝ち負けよりも、挑戦することが大事だと思います。挑戦することで、どんどん少しずつ“心”も強くなるから、“技術”だけじゃなくて“心”も強くしてください」(貞枝さん)

道場に通う子どもたちは…

Q どんな選手になりたい?
「UFC、アメリカの総合格闘技の本場に行けるように努力していきたい。もっと強くなりたいと思います」(小学生A)
「RIZINで、強くて誰にも負けないようなトップスターになりたいです」(小学生B)

叶わなかった“お母さんになる夢”。しかし、子供たちを通して見つけたのは“新しい夢”でした。

「私が挑戦したら、子供たちにも『挑戦するって大事なんや』っていうことを、身をもって教えられるかなというのもあって。主人も練習に付き合ってくれて、一緒に練習しだしてくれたので、『あれ、もしかしたら復帰できるかも』って思いました」(貞枝さん)

現役復帰に向け練習に励む貞枝さん

 節目の50歳を前に決心したのは、異例の“現役復帰”。復帰に向け、房江さんは睦智さんと一緒に、ヘトヘトになるまで練習に励みます。

「戦いたくても戦えない人もたくさんいると思うんです。でも私は好きなことさせてもらえるし戦えるから、みんな頑張っている人の代表として、私が戦おうと思って」(貞枝さん)

49歳で現役復帰 貞枝さんの“生きる意味”

試合後、晴れやかな表情に

 そして3月、8年ぶりにリングにあがりました。リングアナのコールに、手を上げる貞江さん。笑みがこぼれます。試合が始まると、積極的に距離を詰める貞枝さんのパンチが、相手の選手をとらえます。しかし、徐々に追い込まれ、マウントを取られ劣勢に…。結果は2対1の判定で、相手選手の勝利でした。

試合後、晴れやかな表情に

 結果は敗れましたが、試合後の貞枝さんの表情は晴れやかでした。

「この年齢で現役復帰するのはすごいと思います。自分には無理なので。頑張り屋さんですね」(睦智さん)

「子供がいなくてもこうやって生きていけるとか、夢が叶わなくても普通に暮らしてるとか、そういうことができるんやってちょっとでも思ってもらえたら、少しは私も、人の役に立ってるというか、生きてる意味があるかなと思って…」(貞枝さん)

「いま幸せ」溢れる笑顔

Q いま幸せですか?
「はい。もう即答で、いま幸せです!」(貞枝さん)

(「かんさい情報ネットten.」 2022年4月8日放送)

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