“身を切らない”保護猫活動 家族に迎え入れる以外にできること

近年、自治体に引き取られた猫の殺処分数が大幅に減少し、7割以上の猫が新しい家族などの居場所を見つけています。こうした活動の多くはボランティアに支えられていますが、自己犠牲にならない新たな取り組みが広がっています。家族として迎え入れる以外に私たちにできることを取材しました。

【特集】人も、猫も、幸せに…保護猫活動に広がる新たな形「飼えないけど助けたい」を叶える“飼わずに支援”の選択肢

『保護猫活動』に新たな形

 最近よく耳にするようになった『保護猫活動』。動物愛護法の改正をきっかけに猫の殺処分数は大幅に減少した一方、譲渡が必要な猫が増えたことで、人手や資金が不足し、満足に活動できない施設も少なくありません。そんな現状を変えようと、新たな形で保護猫活動に取り組む人たちがいます。家族として迎え入れる以外に、できることとは―。

レスキュー活動・保護猫シェルター・譲渡活動 全てを行う『CATS WELCARE』

『CATS WELCARE』代表・川越里佳さん

 訪れたのは、大阪市西区にあるNPO法人『CATS WELCARE(キャッツ ウェルケア)』です。

Q.ここは、どういった施設ですか?
(『CATS WELCARE』代表・川越里佳さん)
「いろんな経緯で保護された子を、お客様が来られて猫ちゃんと触れ合って、『この子かわいいな』となったら、もらっていただく施設です」

保護猫活動=大きく分けて3種類

 保護猫活動は、大きく分けて3種類。

①多頭飼育崩壊や、事情があり、引き取り依頼のあった猫を保護する『レスキュー活動』
②レスキュー活動で保護された猫を一時的に預かり、病気の治療や世話をする『保護猫シェルター』
③猫との共同生活や人に慣れさせ、譲渡会などを開き、新しい家族を見つける『譲渡活動』

施設の活動をytv山本アナが体験

 この団体では、3つ全ての活動を行っています。普段どのような活動をしているのか、読売テレビ・山本隆弥アナウンサーが体験。床掃除では専用の消毒液を使用し、一日1回、掃除をします。

(川越さん)
「1階と2階も全部、道具も分けてやっています」

Q.なぜ道具を分けるんですか?
(川越さん)
「上で消毒に使った道具を持って下りると、下に感染持ち込む可能性があるので、全て場所ごとに道具は替えています」

一番重要な『猫の体調管理』

 一番重要なのが、猫の体調管理です。保護されている猫は25匹ほど。個別に管理が必要な猫は、薬や排せつの回数・ご飯を食べた量まで、スタッフ間で細かく共有します。

週に1回は全頭に整腸剤を

(川越さん)
「今、準備しているのは、週に1回は全員にやっていることです。おなかの調子を崩したりすると体調を崩す子が多いので、全頭に整腸剤を飲ませています」

Q.体調も含めて、全部管理しているんですか?
(川越さん)
「もちろんです。命を預かっていますので」

9人のスタッフと約60人のボランティアで運営

 この施設で雇用されているスタッフは9人。そのほかに、ボランティアスタッフ60人ほどの力を借りて、運営しています。

(川越さん)
「大きくは、(ここの)施設ボランティアと預かりボランティアに分かれます」

自宅で世話する預かりボランティア

 保護したばかりの猫は病気を持っている可能性があるため、検査期間として最低2週間、預かりボランティアが自宅でお世話をします。

Q.預かるためには、いろんな物を揃えないといけないんですか?
(川越さん)
「それは、こちらから支給させていただきます。エサやトイレなどは必要なので、この辺は全部貸し出しで」

 短期間でも、保護猫活動に参加することができるのです。

こどもクリニック院長でもある代表

 設立から6年。代表の川越さんは、施設を運営しながらこどもクリニックの院長も務めています。

Q.設立した当初は、どう賄っていたんですか?
(川越さん)
「今もですけど、私が個人で」

寄付に加え、自身の収入からも補填

 医療費やエサなどの活動費は主に寄付で賄っていますが、それだけでは足りないため、自身の収入から補填している状況です。

(川越さん)
「少しずつ譲渡の数は増えてきているので、赤字から脱却しようとしているところです」

保護猫施設『CAT&VEGAN neu。』 カフェやグッズで間接的に支援

保護猫施設『CAT&VEGAN neu。』

 持続可能な活動が求められる中、誰でも気軽に参加できる取り組みが広がっています。大阪市中央区谷町6丁目の路地裏にある、古民家を改装してオープンした保護猫施設『CAT&VEGAN neu。』。遊びに来たお客さんが猫を引き取ることができる、譲渡型の保護猫カフェです。

2階はオシャレなカフェスペース

Q.ここでは新たな支援ができると聞いたんですが、それは何ですか?
(『CAT&VEGAN neu。』代表・岩下裕加里さん)
「お店の2階にカフェスペースがあって、ビーガンのランチやデザートを提供しています」

本格的なビーガンランチを提供

 猫との触れ合いを重視し、飲食にあまり力を入れないところも多い中、2階のカフェスペースでは本格的なビーガンランチを楽しむことができる、ちょっと珍しい保護猫カフェです。

“譲渡費”とはいえ必要最低限の金額

 猫の譲渡が決まれば、譲渡費として一定の金額が飼い主になる方から支払われますが、必要最低限の金額に設定されていることが多く、黒字にはなりません。

『CAT&VEGAN neu。』代表・岩下裕加里さん

(岩下さん)
「猫ルームが分かれているので、お食事のみでご来店のお客様もいらっしゃいます」

Q.食事のみでもいいんですか?
(岩下さん)
「猫ルームを利用しなくても、ご飯を食べに来る・ドリンクを飲みに来るだけでも、お店の運営の費用になっていくので、それで活動が続けられます」

海外からのお客さんも増加

 ビーガンメニューが目的で来店する海外客も増えています。

(アメリカから)
「私はベジタリアンだから、このカフェの経営は動物愛好家に焦点を当てているように思えて、嬉しいです」

間接的に保護猫支援を続けたい

 カフェスペースでは、オリジナルの猫グッズを販売。その収益も、経営の大きな支えになっています。

(岩下さん)
「ボランティアさんが一番素晴らしい活動をされています。朝も晩も猫ちゃんのお世話をして、医療費を作らないといけない。そういう人たちがずっと活動を続けていくために、イベントに出たり、メニュー開発をしたり、新しい事業をしたり、間接的に保護猫支援になることを、ずっとやり続けようと思っています」

就労継続支援B型の利用者が猫を助ける『ウリエルグループ』

猫を助ける+福祉サービス?

 大阪市北区の中崎町にある『ウリエルグループ』は、4つの保護猫施設を運営し、そのうちの1つでは、猫を助ける以外にも“ある福祉サービス”に取り組んでいます。

(就労継続支援B型の利用者)
「訪問看護の方から、猫がいるB型作業所があると聞いて、『何それ!』と、すごく興味を持って」

就労継続支援B型とは?

 保護猫の世話を手伝っているのは、就労継続支援B型の利用者です。障害や病気などを理由に、一般企業への就職が難しい利用者が、雇用契約を結ばず“就労訓練”を行っています。

(就労継続支援B型の利用者)
「仕事をする・掃除をするというより、猫ちゃんに会いに来ている」

人も猫も受け入れてくれた

(就労継続支援B型の利用者)
「僕は訪問看護を利用していて、そのときは何もしてなかったんですけど、行ってみたら働いている方も良い人が多いし、猫ちゃんもかわいい子たちだらけだから」

代表・神谷萌花さんの想い

 『ウリエルグループ』の代表を務める神谷萌花さん。保護猫活動で就労支援を始めた、あるきっかけがありました。

(一般社団法人ウリエル 代表・神谷萌花さん)
「始めたきっかけは、ウリエルに障害のある方がいらっしゃって、他の方に迷惑がかからないように遠慮して遊んでいて。この方たちに、どうしたらもっと自然に遊んでもらえるかなと勉強しに行こうと思って。保護猫業界は人手が不足している業界ですし、そこでマッチングできないかなと」

障害者雇用枠で一般就労も

 障害者雇用枠も設けており、一般就労を目指すこともできます。

(障害者雇用枠で働きはじめた女性)
「猫ちゃんのためにと思って、結構疲れているなと思ったときも、猫ちゃんが励ましてくれているじゃないですけど、『この子たちのおうちを見つけてあげよう』と思えるので、そういうところは本当に助けられています。上手にできているというか、助け合いでできているなと思っていて、同じようなところが広まれば、病気の人も積極的に社会に関わっていけるのかな」

猫と触れ合うことで変化も

(神谷さん)
「最初ここに来たときは、しゃべることすら難しい、人と目を合わせることすら難しい方もいらっしゃったんですけど、徐々に、ここに通われて猫ちゃんと触れ合って、今はこちらが何も言わなくても自ら動いてくださる。お互いにウィンウィンで、成長し続けているのが良かったと思います」

できることから気軽に支援を

 引き取ることは出来なくても、猫を助けたい―。できることから気軽に始められる方法が、広がりつつあります。

(「かんさい情報ネットten.」2025年6月13日放送)

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