捨てられるはずのモノに、新たな命を吹き込む 「アップサイクル」
~大阪の挑戦者たちを取材しました~
「アップサイクル」ってなに?
捨てられるモノを加工し、新たな価値を付けて生まれ変わらせる取り組み。
「リサイクル」や「リユース」とは異なり、本来とは異なる使い方や価値を付与するという違いがあります。
↑シーツがシャツに、
タイヤがサンダルに、
ジーンズがバッグに…
昨今「アップサイクル」は食品業界や服飾関係など様々な業界でその動きが加速しています。
「それって本当に捨てて良いの?」と、捨てる前に一度立ち止まってみることで、
いままでゴミに見えていたものが素敵なモノへと生まれ変わります。
そんな「アップサイクル」にチャレンジをはじめた関西の企業を取材しました。
取材後記
2015年の国連サミット以来、持続可能な17の開発目標・SDGsの達成に向けた取り組みが広がっています。今回は「アップサイクル」といわれる、捨てる予定であったものに手を加え、価値をつけて新しい製品へと生まれ変わらせる取り組みを取材しました。捨てられるはずのモノに新たな命が吹き込まれる2つの現場から見えてきたのは、企業が大規模に行うケースだけでなく、個人個人が身近なところから始められるということでした。
中之島美術館で行われた垂れ幕を使ったオーナメント作りのワークショップは、小学生から大人まで老若男女が参加し、はさみなど身近な道具で家を彩る飾りを作っていました。材料こそ垂れ幕ではありますが、使えなくなったものを飾りに変えることは、日常生活でも簡単に取り入れら実践できます。また、使われなくなったビニール傘をカバンに生まれ変わらせる現場では、年間に8000万本以上が消費されている実態を知りました。そういった現状や背景を知り思いを馳せ物を大切に扱う、こうした小さな心がけは誰でもできることです。
私たちの身の周りには便利なものであふれています。その便利さゆえにすぐに捨ててしまうなどつい環境に負担をかけてしまいますが、方法は色々あります。少しの心がけで私たちにもできることはまだたくさんあると感じた取材でした。
報道局 田上 瑛莉香
ytvサステナ目線
こんにちは。ytvサステナビリティグループの河﨑華子です。
ytvサステナ目線では、今回ピックアップした取り組みの裏側をご紹介していきます。
大阪中之島美術館 「地域とのつながりをキーワードに…」
今回、大阪中之島美術館(大阪市北区)の「アップサイクルプロジェクト」で使用されたカット垂れ幕は、大阪の社会福祉法人「いちょうの森」(泉佐野市)が裁断作業、さらにワークショップは大阪の制服メーカーが講師となり、使用された接着剤なども大阪の企業のものが使われています。
大阪中之島美術館は昨年2022年に開館。“PFIコンセッション方式”(※1 ※2)という国内の美術館で初の運営方式を取り入れている美術館でもあり、そんな新たな美術館が目指しているという“ビジョン”の1つを見てみると…
多様な第三者との連携によって機能や事業の発展を図る「協働する美術館」、
市民と共に学び合う「共育する美術館」として、
大阪・中之島をはじめ、さまざまなコミュニティの一員として社会と共に変化し続けます。
大阪中之島美術館HPより引用
行政・経済・文化施設が集まり、水と緑も豊かな中之島という立地に加え、 美術館という人々が集まる文化的施設の役割も活かすことで、 地域の人々や企業と連携する“パートナーシップ”を大切にしていくとのことでした。
※1 PFI:Private Finance Initiativeの略で、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用することにより、効率的で質の高い公共サービスの提供を図るもの
※2 PFI法:民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律
大阪のアップサイクルブランド 「環境に配慮した製品が当たり前に」
全国的にも珍しいアップサイクル特化のブランド「octangle(オクタングル)」(大阪市)を立ち上げ、現在はビニール傘をアップサイクルしている水谷哲朗さん。活動のコンセプトは「UPCYCLE×CREATIVE」。「“廃棄するもの”=“汚い”という概念を覆したい」と語る水谷さん。製造工程における分解・洗浄・消毒から圧着・裁断・縫製・検品に至るすべての作業を手作業で取り組んでいます。
プラスチックゴミの解決に向けた様々な取り組みを推進する環境省の「プラスチック・スマート」へも参加しており、環境に配慮した考え方があたり前の文化として根付いていくことを目指しています。アップサイクルのワークショップも開催しており、大阪から全国へ活動の幅を広げています。
ytvは関西の企業の持続可能な活動を応援し、つながったご縁を大切にしていきます。