【DE&I】番組から生まれた絵本
『もし僕の髪が青色だったら』原画展
開催レポート
読売テレビ本社で3月に開催されたイベント「みっけ展 by supported anna」(3月20日~24日)の会場内で、報道番組「ウェークアップ」(土曜あさ8時~)の放送をきっかけに生まれた絵本「もし僕の髪が青色だったら」(もし ぼくのかみが あおいろ だったら)の原画展を開催しました。
ytvサステナビリティ・プロジェクトと「ウェークアップ」共同での開催で、2階の回廊を活用した展示は、今回が2回目となります。
なぜ今回の企画が実現したのか。「ウェークアップ」担当ディレクターの武藤 将大(むとう・しょうた)がお伝えします。
ウェークアップでは、去年9月、「もし僕の髪が青色だったら」という特集を放送しました。ダウン症の女の子・まりいちゃん(6)と暮らす家族の温かな日々を描いた特集です。
ウェークアップで放送された、まりいちゃんの特集はコチラ
私は、これまでも継続してダウン症について取材してきました。ダウン症を巡っては、生まれる前にその可能性を採血で調べられる「新型出生前検査」が普及しつつあります。こうした中、ダウン症のわが子と家族が、どのように共に歩んでいくのかについて発信することは、いつかこの検査を受ける方々とそのご家族、そして、ダウン症についての情報を必要とされる方々などのために大切な報道だと考え、取材を続けています。そんな中、出会ったのが、まりいちゃんとご家族のみなさまでした。
この取材の中で、母・ガードナー瑞穂さんが、自宅の本棚から1冊のファイルを取り出しました。「何年も本棚にしまっていたものなのですが…」こう言いながら、見せてくれたのが、手作りの絵本「もし僕の髪が青色だったら」です。この時はまだ、コピー用紙に絵と文を切り貼りしただけのものでした。
母・瑞穂さんがこの絵本を描いたのは、まりいちゃんとどう歩んでいけばよいのか、まだ模索していた頃のこと。ある日、当時小学1年生だった兄・エイデンくんが学校に通えなくなりました。門まで連れて行っては、中に入れず、連れ帰る日々。この時期に兄・エイデンくんと母・瑞穂さんが実際に交わした会話を元に作られたものです。
「もし僕の髪が青色だったら、ママ僕のこと好き?」「もしはんぶん猫だったら、ママ僕のこと好き?」と、わが子から数々の問いが投げかけられます。最後に、わが子からどのような質問が投げかけられ、母はどう答えたのか…
「これは…」この手作り絵本をご自宅で読ませていただいた私は、強く心を打たれました。最後の問いに対する母の答えが、様々な困難を乗り越え自問自答を繰り返したからこその言葉だと分かるからであり、全てを包み込むような深い愛に満ち溢れた言葉だと感じたからです。
特集ではこの手作り絵本ができるまでのストーリーも含めて絵本の一部を紹介。さらに、多くの方にオリジナルの作品の世界にも触れていただこうと、放送とは別で動画絵本を制作し、去年9月の放送時に、WEB限定で公開しました。
ウェークアップ作成の動画絵本はコチラ
話はこれだけでは終わりませんでした。この放送と動画絵本を見た出版社から、「手作り絵本を書籍化できないか」と連絡があったのです。こうして3月に、紙の絵本「もし ぼくのかみが あおいろ だったら」が出版・発売されました。
そして、3月に出版を記念した原画展が読売テレビ本社内で実現しました。
原画展には、絵本に掲載されている15点の原画のほかにも、親子の絆をテーマに描かれた絵画の数々が展示されました。こちらの巨大な絵画は「祈り」というタイトルで、原画展のために描き下ろされたものです。「子どもは神様からの預かりもの」という考えのもと、夜明けの空をコウノトリが赤ちゃんを飛び運ぶ情景が描かれ、子どもたちへの様々な祈りが込められています。
ダウン症のわが子、そして学校に通えなくなった兄・エイデンくんとはどう歩んで行くのか。そして、姉・りりいちゃんとはどう向き合うのか…。ご家族は、全てを受け入れることを決めました。多様性がいわれる社会において、「共に歩む」ということはどういうことなのか、大切な価値観を学ばせていただきました。
そして、まりいちゃんとご家族から伝わるメッセージは、「障害」に限ったものではありません。「どんなあなたも全部愛してる」という親からわが子への「無条件の愛」が、特集・絵本の大きなテーマとなっています。3月に行われた原画展では、幅広い方々に原画の世界観や絵本に触れていただき、ディレクターとしても大変ありがたく感じています。
著者・ガードナー瑞穂さんのコメント
原画展のお話をいただいたとき、飛び上がるほど嬉しかったのを覚えています。
絵本のすべての原画と放送で紹介された子供達の似顔絵、原画展のために一つ大きなパネルで日の出の空にコウノトリが赤ちゃんを運んでいる水彩画を描きました。
原画展が始まる初日の朝一番に家族全員で見に行きました。
丁寧に展示されているのを見て、私の描いた絵が、嬉しそうに自信に満ちて笑っているように感じました。
長男エイデンが絵本の表紙である彼の顔のイラストの横に立ち、満面の笑顔で写真を撮りました。
この絵本を手作りで書いた頃は、まさかこんなことが起きるなんて夢にも思わなかった。前向きに愛を持って諦めず前進し続ければ、こんなふうにご褒美のような体験があるんだなと、私にとって魔法にかかったかのような原画展でした。こんな素敵な魔法をかけてくださったみなさま、ありがとうございました。
「ウェークアップ」では、原画展開催期間中の3月23日に、この絵本が出版されるまでの日々に密着した続編を放送しました。
「どんなあなたも全部愛してる」― みなさまにもぜひ、まりいちゃんとご家族の世界をご覧いただき、何かを感じ、考えるきっかけとなれば幸いです。
ウェークアップで放送された、絵本出版までの特集はコチラ