5人のytvアナウンサーが
視覚障害者を支援するNPO法人とともに
「音訳」の作業に挑戦!
ytvのアナウンサーが、スキルを活かして視覚障害者をサポート。
「プロ野球選手名鑑」の音訳ボランティアとは?作業の現場から、サステナビリティグループの松尾がリポートします。
今年1月、サステナビリティグループの新メンバーとして加入した松尾です。そんな私が最初のミッションとして命じられたのが、視覚障害者を支援するNPO法人と一緒に取り組む「音訳」という作業のお手伝いでした。音を訳すと書く「音訳」。それは一体、どんな作業なのか。私にとっても初めての体験でした。
「音訳」との初めての出会い
パートナーとなるのは、京都市にあるNPO法人「ロバの会」。1975年から視覚障害者の支援活動を続けている民間の団体です。読者登録している全国の目の不自由な方々【読者】に、新聞・雑誌・単行本などを「音訳」したCDを無料で貸し出す活動をしています。「音訳」は、さまざまな分野の出版物の文字情報を、ひとつひとつ読み上げて録音し、「録音図書」を製作する作業です。
私たちytvは去年から「ロバの会」のお手伝いを始めました。担当しているのは、「プロ野球選手名鑑」の音訳作業です。毎年、新しいシーズンには球団のチーム編成が変わるため、選手の情報を更新し、視覚障害のあるプロ野球ファンの皆さんにお届けする作業です。正確な情報を、聞き取りやすく読み上げるのは、アナウンサーのスキルを活かす絶好の機会です。
命を受けた私は、さっそく準備に取り掛かったのですが、このミッションの難しさは、スピードが求められるという点です。選手だけはなく、監督やコーチまで、新しいチーム編成が固まり、シーズンが開幕する春までのわずか2か月ほどの間に、すべての作業を終えて、ファンの皆さんに発送しなければなりません。「音訳」初体験の私・松尾も、特殊な録音機材を準備し、限られた時間のスケジュール管理に悪戦苦闘しました。
ytvアナウンサーとパートナーが総力を傾けたプロジェクト
今年、「音訳」に取り組んだアナウンサーは、平松翔馬アナ、諸國沙代子アナ、大野晃佳アナ、そして新人の西尾桃アナと渡邊幹也アナが参戦しました。ytvアナウンサーは去年に続き、セ・リーグ6球団の「音訳」を担当し、パ・リーグ6球団を読み上げる団体のボランティアの方々と一緒に、完成品に仕上げるのが役割です。「プロ野球選手名鑑」の最新情報の提供は、同じグループ会社の報知新聞さんが全面協力してくださいました。また、「音訳」の技術に詳しい、西村技術サービス(京都府宇治市)の西村義孝さんに、去年に続き監修とサポートをお願いしました。
ニュースを読むことでは、卓越した技術を持っているアナウンサーですが、目の不自由な方々にとって聞き取りやすい音声にするには、さらに、きめ細かい配慮が必要です。抑揚やテンポの調整に加え、5人のアナウンサーが同じトーンにそろえなければなりません。普段、個性の発揮が求められる彼らにとっては、少々戸惑う場面も多かったようです。
それでも、すべての登録選手の詳細な情報が掲載されている「プロ野球選手名鑑」を声に出して、一人ひとり読み上げる作業は、野球中継の実況やスタジアムでの取材活動などに大いに役立つ貴重な機会になったと手ごたえも感じていました。
去年の経験から得た、“業務の合間を見て少しずつ進める”よりも“しっかりと時間を取って一気に録音したほうが、スムーズに進められる”というノウハウを活かし、忙しい仕事のスケジュールを上手にやり繰りしながら、5人のアナウンサー全員が、締め切りまでにすべてのミッションを完了しました。
今年初めて参加した 西尾アナ、渡邊アナのコメント
▶ 西尾 桃アナウンサーのコメント
「プロ野球選手名鑑の音訳作業を担当させていただきました。初めての作業ということで、苦戦した時間もありましたが、データを読み上げる中で私自身勉強になる部分が多く、大変貴重な機会となりました。ひとつひとつ情報が届くようにと読み上げましたので、私の声が、プロ野球を楽しむ一助となりましたら幸いです。」
▶ 渡邊 幹也アナウンサーのコメント
「今回の録音はアナウンサーになって1番誰のために仕事をやっているのか明確な業務でした。普段、ニュースを読んだり、中継をしたりするときにはいろんな方のことを考えて言葉にします。今回は「視覚障害の方にむけて」というはっきりとした対象者がいたので、分かりにくそうな文字を言い換えて読んだり、音に繊細な方々を驚かさないようになるべく一定の音量で読んだりと明確な意識をもって読みました。いつも以上に社会のために貢献できている気がして録音中も嬉しかったです!」
▶ プロジェクトリーダー・平松 翔馬アナウンサーのコメント
「去年に続いて今年もプロ野球選手名鑑の音訳作業を担当させていただきました。我々TVのアナウンサーはよく”画面の向こうにいる視聴者の方々の顔を想像して伝えなさい”と教わります。この音訳作業でも聞かれる方々の顔を想像しながら丁寧に読み上げました。プロ野球のシーズンも始まり盛り上がる中、1人でも多くの方に届けば幸いです。」
「音訳」した録音図書をお届けしました
プロ野球の開幕が目前に迫った今年3月27日(水)、ついに完成した録音図書(音訳CD)を「ロバの会」にお渡ししました。私、松尾が京都市内の本部にお伺いし、端野順子(はしの・じゅんこ)代表に直接、手渡しました。5人のアナウンサーだけでなく、協力してくださった多くのパートナーの皆さんの努力が報われたと思うと、胸が熱くなりました。「ロバの会」によりますと、第一弾として112名の登録者の方々に録音図書を提供したほか、国立国会図書館にも収蔵し、全国の視覚障害者が利用できるようにしているということです。
▶ NPO法人「ロバの会」端野 順子代表のメッセージ
NPO法人ロバの会では20年ほど前から「プロ野球メンバー表」として、セ・パ全選手を男性会員が一人で音訳をしていました。オープン戦が始まると待ちきれない利用者から「CDはまだですか?」の電話が次々と入り焦ったものです。数年前からは一人での音訳が負担になり、野球が苦手な女性会員もセ・リーグメンバーの音訳を担当していました。そんな時に読売テレビさんから救いの手が差し伸べられたのです!!お陰様で、去年も、今年も開幕前に「選手名鑑」をお送りすることが出来、催促の電話を受けることもなくなりました。皆様キャンプ地への取材などでお忙しい中、時間をやりくりし、慣れない機器を使い、音訳などという訳の分からない作業をしていただき、本当に有難うございました。なお、国立国会図書館へもデータを提供し、4月9日現在319名の利用がありました。
●「ロバの会」によせて
「たとえ‘駿馬’ではないにしても、‘ロバ’のように愛らしく‘地道にコツコツ’とこの会が続いてほしいと思います。」
この文章はアンパンマンの作者 やなせたかしさんが、「ロバの会」へ贈ったものです。我々も引き続き‘地道にコツコツ’とこの音訳作業のお手伝いができればと考えています。
NPO法人「ロバの会」https://npo-roba.org/
〒604-8821 京都市中京区壬生梛ノ宮町2-13 エフズフラッツ1F
代表:端野 順子