【現役大学生vs読売テレビ社員vol.1】
報道局編~ニュースに興味のない大学生だった私が、
海外特派員として激動の中国で目撃した現実とは~

3回シリーズでお伝えする「現役大学生vs読売テレビ社員」。第1回目は、報道局の長谷川敬典・前上海支局長です。長谷川氏は、2019年から3年7か月、中国・上海市にある読売テレビの上海支局に駐在しました。この間、新型コロナウイルスの世界的感染拡大に見舞われた中国では、「ゼロコロナ政策」という世界に例を見ない‘感染者の封じ込め大作戦’が行われました。町から人の姿が消え、長谷川氏自身も自宅から一歩も外に出られない缶詰状態になりました。想像を絶する中国で繰り広げられた悲喜こもごもの「知られざるヒューマンストーリー」。

6月10日午前、大和大学(大阪府吹田市)。およそ300名の現役大学生たちと対峙した、白熱の90分授業を長谷川氏がリポートします。

サステナビリティ部長 山川友基


「中国の光と影 ~“情報統制”も“都市封鎖”も可能な国で取材した3年7か月」

「テレビはあまり見ません。」

 

 残念ながら最近、大学生など若い世代からよく聞くようになってしまった言葉です。

 今回、大和大学で講義する機会をいただいた時、楽しみな一方で300名近い学生たちが、はたしてテレビの話題にどれだけ興味を持ってくれるのか不安もありました。

 

 講義当日“マスコミ批判”の厳しい視線を覚悟し、少し身構えて大学に向かいました。私が準備していった講義内容は主に以下の2つのポイントです。

 

① 「かんさい情報ネットten.」はどうやって作られているか

② 上海特派員の中国取材の裏側 ~上海ロックダウンと中国のSNS~

 まず①の「ten.をどうやって作っているか」について、質疑応答では多くの学生が手を挙げてくれました。質問の一例を挙げると「多くの出来事がある中で、ニュースで取り上げる基準は何か?」、「他局もニュース番組を放送している時間帯に、どのチャンネルも同じニュースになるのでは?」、「ten.は毎日どうやってニュースを決めているのか?」など、想像以上に番組の制作手法に踏み込んだ質問が多く、どんな人たちが、どんな手法でニュースを世に送りだしているのかを知りたいという印象でした。今はネットに真偽不明の情報が氾濫する時代ですので、テレビ局のつくるニュースの情報の選び方、正確性の確保について関心があるようでした。

 私からの回答として毎朝、ten.のニュース項目を決める会議で「視聴者の明日の生活が変わる役立つ放送を」を大テーマに掲げ、視聴者から「ten.を見ていてよかった」、「ten.のおかげで助かった」と言われる番組を目指していることを紹介しました。短いニュースでも、記者・カメラマン → デスク →ディレクター → エディター(編集) → 番組プロデューサーのチェックなど多くの人が膨大な労力をかけて放送していることを、学生は新鮮な驚きをもって受け止めてくれたようです。

上海特派員の中国取材の裏側 ~上海ロックダウンと中国のSNS~

 続いて、私は2019年から中国での駐在時代の話をしました。特に当時の体験の中から上海ロックダウンや中国ゼロコロナ政策の体験を通じて、中国の情報統制の手法・SNS監視・習近平政権の統治の仕方などを紹介しました。

 中国当局は特に外国メディアの行動を監視し、中国の一般市民にも取材を受けないよう圧力をかけることが日常茶飯事です。そのため特派員は、いかに取材対象者の安全を確保した上で本人に接触し、真相に迫る映像を収めるか、という点に腐心している“取材の裏側”を紹介しました。学生からは取材の苦労などについて質問が相次ぎました。

 

 今回の講義を経験して、テレビ局が当たり前に積み重ねてきた「情報の裏どり(真実性の確認)」や「双方の主張を聞かなければ放送できない」という取材の基本姿勢が、今の時代には非常に“貴重”なものになっていると感じました。

 

 ネットにはフェイクニュースが拡散し、インパクトの強い映像や目を引く見出しの情報があふれています。その中でテレビ局が自信をもって送り出しているニュースが、どのような取材で、どのように正確性を判断しているのか、テレビ局が日々行っている「裏付け」の努力を、もっと世の中に発信することも必要なのかもしれません。知ってもらえれば「テレビはあまり見ません」を変えるきっかけになるのでは、と考えています。


 


 

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