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【毎週更新】森川教授の明日話せる恋愛学のススメ 早稲田大学国際教養学部の森川教授がドラマ「恋愛時代」の登場人物の行動や心理などを分析し皆さまにアドバイスします!【毎週更新】森川教授の明日話せる恋愛学のススメ 早稲田大学国際教養学部の森川教授がドラマ「恋愛時代」の登場人物の行動や心理などを分析し皆さまにアドバイスします!
プロフィール
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登場人物6人の恋愛を考える

誰と結婚すべきか?には正解がありません。はるは永冨財閥の跡取り息子である永冨匠平と結婚しても良かったし、喜多嶋竜一でも良かったわけです。理一郎も、かすみでも多実子でも結婚する可能性はありました。

でも、はるも理一郎も一つだけ筋を通したことがありました。それは「好き」という気持ちです。

「好き」という気持ちは、結婚するのに必要条件。この気持ちの存在が、はると理一郎を元の鞘におさめた最も大きな原因です。



この連載の最終回は、この「好き」という観点から、主要登場人物の、永冨、喜多嶋、かすみ、多実子、理一郎、そしてはるの6人を分析してみます。

最終話を観終わって、登場人物のどこに敗因・勝因(?)があったのかを検討することで、みなさんの現実の恋愛の成否にも投影してもらい、今後の参考にしてもらいたいと願っています。


① 永冨匠平(28歳)

永冨のはるとの関係がうまくいかなかったのは、自分の好きな気持ちを優先するばかりで、はるの気持ちを振り向かせる努力が足らなかったためです。片思いとは、熱で表現すると、自分は沸点100度近くで、相手は平熱の36度ということです。恋愛や結婚のプロセスは自分が100度であることを見せることではなく、相手の36度をいかに100度に引き上げるかです。ところが、永冨は自分の気持ちを表現したり、両親に会わせたりするのを優先して、はるの恋愛感情を醸成する努力はいま一つ見えてきませんでした。ですから、いつまでたってもはるの理一郎に対する気持ちを超えることがができなかったようです。


② 喜多嶋竜一(38歳)

別居中の喜多嶋は、はるが結婚を望んでいることが判った時点で、いったん引いて、離婚が成立してからアプローチすべきでした。はるからしてみれば、いつまでたっても「売約済の商品」にしか過ぎません。また、職業が大学准教授で知性があるところを見せたい(?)のは理解しますが、はるの気持ちを分析したり、専門の社会学の用語をちりばめた会話をしたりするようでは、配慮が足らず、好きにさせることはできません。大学教員特有の恋愛の経験不足が致命的だったということでしょう。


③ 小笠原かすみ(28歳)

かすみはシングルマザー、5歳の娘、彩がいます。最初から最後まで、優先したのは母親としての自分でした。子育てには父親が必要という気持ちは理解しますが、それでは男性の恋愛感情を育てることができません。好きだから結婚するのであって、娘を育てたいから結婚するのではありません。かすみにとって娘が一番、次に理一郎というふうに見える以上、理一郎にとっては結婚が難しい状況でした。そもそも自分の遺伝子を共有しない子どもを愛するには、その母親であるかすみに対して強い恋愛感情を持たなければなりません。理一郎の中に母子への情は湧いても、恋愛感情は少なかったということです。


④ 織田多実子(30歳)

多実子とは幼なじみで高校時代に片思いをした存在、さらに現在は料理教室の先生ですから、恋愛感情があるし、結婚後は料理上手な奥さんになれるという魅力的な女性でした。実際、婚姻届をいったんは提出したわけですから、お互い好きという感情はあったわけです。しかし、多実子は大きな間違いをしてしまった。仕事をとるか結婚をとるかの二者択一の発想をしたのです。これは昭和の発想です。「21世紀女子」は、仕事も結婚もとってこその人生です。どちらか一方ではありません。


⑤ 早勢理一郎(30歳)

理一郎は心が優しい人です。内分泌学的に分析すると、男性ホルモンのテストステロンの少ない男性だということ。浮気はしないしマイホームパパになる性格の男性ですが、他方で、優柔不断という性格の持ち主ということにもなります。自分の気持ちを前面に出しませんし、最後の最後になるまで決断をしません。そのために相手の女性は振り回されることになる。女性は、理一郎とうまく行くと思い、時間とエネルギーを投資して恋愛関係を築こうとしますが、最後のところで「やっぱりはるのことが好き」というふうになってしまいます。女性からしたら「だったら、最初から言ってよ。」となります。理一郎という男性、たいへん扱いにくい人です。そこを理解できるのは、一度夫婦になって性格を良く知るはるだけということなのでしょう。


⑥ 衛藤はる(30歳)

はるは理一郎のことが好きでした。ずっと好きでしたね。永冨をフってしまうくらい好きでした。すごいことです。好きになると「恋愛バブル」というものが生じますが、「恋愛バブル」とは相手を実際の価値以上に思う気持ちです。かりに永冨の生涯年収を20億円とすると、結婚とはその年収を半分ずつに分け合う制度ですから、はるには単純計算で生涯に10億円がもらえたはずです。それをフイにしてしまうということは、恋愛バブルによって生じた理一郎への気持ちが10億円以上と算定したということになります。 この気持ちを一生持ち続けることができるのかは、ドラマの枠を越えたテーマですが、現実には真剣に考えてみなければならないものです。私の個人的な見解では、それは無理です。


みなさんはどう思われましたでしょうか?



以上で、連載は終わりです。12週、たいへんありがとうございました。楽しんでいただけたら幸甚です。

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