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7日に会見を開いた川崎幼稚園

【独自解説】「子どもの顔と名前の一致は保育の最も大切な基本」3歳児バス置き去り死、「子ども安全計画研究所」代表理事が問題点を指摘

 9月5日、静岡県・牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で、3歳の園児・河本千奈ちゃんが送迎バスに置き去りにされ熱中症で亡くなった事件で、7日、園による「保護者説明会」と「記者会見」が開かれました。幼い園児の命はなぜ失われたのでしょうか?「子ども安全計画研究所」代表理事で幼稚園と保育園の副園長でもある、ジャーナリストの猪熊弘子氏が解説します。

猪熊弘子氏のプロフィール

Q.今回のような死亡事故は、なぜ起こるのでしょう?
(猪熊弘子氏)
「私も幼稚園と保育園の副園長をしていますが、事故があった時間に同じようにバスに添乗していましたので、いろいろ思うことがあります。私は20年以上、こういった保育の事故の取材や研究をしているのですが、誰か一人がミスをしたからといって、このような死亡事故が起こることはほぼありません。いろいろなミスや園の方針の間違いなどが重なって起きるのです。今回もいろいろな確認のミスが重なって、死亡事故に繋がったのだと思います」

千奈ちゃんの乗車時と発見時の様子

Q.6人しか乗っていないのに、見落とすのでしょうか?
(猪熊氏)
「私も6人は少ない人数だと思うのですが、子どもは登園や帰りのバスでも寝てしまうことが多いんです。寝てしまうと椅子の影になるので、誰もいないように見えるんです。なので、バスを降りたときは毎回、席の間や下を確認するのが決まりだと思います」

Q.保育室でも確認さえしていれば、防げたと思うのですが…
(猪熊氏)
「この園でも、登園降園管理のアプリケーションを使っていたようですが、アプリ上『登園』になっているのに来ないとか、欠席になっていないのに来ない、というような状況のときは、必ず保護者に確認するのが、基本中の基本だと思います。なぜそれができていなかったのか…。今、“コロナ禍”でイレギュラーなお休みをすることが多くありますが、なんとなく『あの子はまた休みなのかな』とか『今日は来ないけど、きっとこういうことなんだ』といった“思い込み”で連絡しない、ということは、あってはいけないのですが、もしかするとそのようなことが恒常的になっていた結果なのかなと思います」

Q.今回の会見を聞いて、何を最初に思いましたか?
(猪熊氏)
「“ひどいな”というのが、偽らざる感情です。理事長は『千奈ちゃん』を『チナツちゃん』と、亡くなった子どもの名前を間違っていました。私は、子どもの顔と名前が一致するのが、保育の安全の中で最も大切な基本だと考えていますので、顔と名前が一致しない理事長が、バスに乗るべきではなかったと思います」

ずさんだったアプリでの登園確認

Q.経緯を説明していましたが、何が問題だったと思いますか?
(猪熊氏)
「タブレットにある情報を、まとめてホワイトボードに書き写して、それを最終的な確認に使っているようでした。人数は給食にも関係しますので、朝のうちに把握しないといけません。ただ不思議に思ったのは、保護者が出欠を入力する期限が『9時まで』と言っていましたが、9時にはもうバスが園に到着しています。私の園ですと、7時半の最初のバスが出るまでに入力してもらっています。バスが出発する前に、『バスを使う/使わない』を教えてもらわないと、システムが運用できません。9時に入力する意味が分からないと思いました。また、タブレットに名前があって、一人ずつ『登園/降園』を押すようになっていると思うのですが、それをまとめて押すというようなことを言っていました。私は、子どもが保育室に入ったときに、先生が『○○ちゃん』と確認しながら一つずつ押さないと、いくらアプリを使ってもきちんと確認できないと思いますので、アプリの使い方としてもおかしいと思います。確認をしているようだけれども、実は確認できていない状況が常態化していたのではないかと感じました」

(情報ライブミヤネ屋2022年9月7日放送)

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