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【独自解説】“首相襲撃”爆発まで約50秒、容疑者の思惑通りでなく遅すぎた?従来の警備はもう限界“見せる警護”の徹底を
2023年4月19日 UP
岸田総理の演説会場に爆発物が投げ込まれた事件で、威力業務妨害の容疑で木村隆二容疑者が現行犯逮捕されました。また、現場検証の結果、爆発物の本体の一部とみられる “筒状のもの”が、投げ込まれた場所から約40m離れた場所で見つかったことがわかりました。この爆発物の正体は?当時の警備態勢は十分だったのか?銃器評論家の津田哲也氏と警視庁特殊部隊・SATの元隊員の伊藤鋼一氏が解説します。
使われた爆発物はどんなものか?
逮捕された木村隆二容疑者は、警察の調べに対し「弁護士が来てからお話しします」と黙秘しているということです。警察庁によると、これまでに思想的な背景や動機を示すものは見つかっていないということです。また、持っていた手提げカバンの中から、刃渡り13センチほどの刃物とライター1つが押収されています。
爆発物の特徴ですが、投げられた後に発煙し、約50秒後に爆発したということです。目撃者によると「発煙筒みたいな物、銀色のジュースの缶のような筒状でダンベルっぽい形の物」「20~30cmの銀色の筒、赤と青の光が点灯や点滅をしていて煙が出ていた」「硝煙のような臭いもした」ということです。そして、木村容疑者は、左手に銀色の筒のような物、右手に黒い小さい物を持っていたということです。
Q.ライターを所持していたということで、それで導火線に火をつけたと考えられますが、“コントローラーのようなもの”もあったという話もあり、それを使って遠隔操作していたとも思われます。どちらでしょうか?
(銃器評論家 津田哲也氏)
「“コントローラーのようなもの”が、遠隔操作の起爆装置であった可能性も否定できないと思います。煙が出ていたようですが、50秒だと導火線にしては時間が長いです。また赤や青のランプが点滅したという点を見ると、電気をつかって発火させた可能性もあると思います。電気着火で内部の導火線に火をつけたのかもしれません」
Q.この50秒は意図したものだと思いますか?
(津田氏)
「50秒が容疑者の思惑通りでなく遅すぎると思ったので、不発だと思って2つ目に何か操作するような行動をとっていたのだと思います」
Q.爆発物が40mも飛んでいますがどんな状況だったのでしょう?
(銃器評論家 津田哲也氏)
「爆発物がぶつかった壁のへこみが、円形になっていました。これは爆発物が破裂して粉々になったのではなく、筒状の爆発物の両側を塞いでいる蓋の片方が外れてロケット花火のように飛んで行ったのだと思います」
元SAT隊員が語る警護の問題点
岸田首相と聴衆の間は約5m、木村容疑者と岸田首相との距離は約10mあり、聴衆は約200人でした。現場にいた人によると、「手荷物検査などはなかった」ということです。
Q.この状態での警備はやりやすいのでしょうか?やりにくいのでしょうか?
(警視庁特殊部隊・SAT元隊員 伊藤鋼一氏)
「私の第一印象は地元の漁港の狭い場所ということで、警備はやりやすい場所だ、と感じました」
Q.爆発物を投げ入れられるという想定はあったのでしょうか?
(伊藤氏)
「地方の警察と、常に警備の体制を取っている警視庁や大阪府警とは、温度差が出てくると思います。シビアな言い方をすると、警備に対するきちんとした感覚を持っていて、検問などをしていれば、何とか防げたのではないかと思います」
Q.漁師町に容疑者のような人間が来たとき、ある種の違和感があると思うのですが、違和感を持つ力を高めるような訓練はしていないのですか?
(伊藤氏)
「和歌山県警は大きな警護もあまりないのが実情です。警護員は警視庁のSPのところで1年間研修を受けるのですが、そのほかの周りの警察官は寄せ集めで警備にあたっているので、そこの警備センスをどうやって高めるかは課題だと思います」
Q.200人の聴衆の動きに合わせて容疑者が紛れると、見つけにくいのでは?
(伊藤氏)
「こういう警備の場合、現場には公安の刑事も入ります。公安の刑事は、聴衆の中で不自然な動きや風体を察知して、事前に“声掛け”をしたりしています。今回の場合も“声掛け”などをすべきだったと思います」
Q.容疑者は2つ目の爆発物を手に持っていて、それが爆発したら大変なことになっていたわけですが、爆発物から首相と聴衆の両方を守るのは難しい問題ですね?
(伊藤氏)
「単独犯なのか複数犯なのかだとか爆発物の威力も分からないので、あらかじめ爆発物に対する装備をきちんとしておくことが大切だと思います。SPや警護員は身を挺しても首相を守る。そのほかの警察官は聴衆を守るという意識の問題だと思います」
Q.今までの警護の仕方はもう限界なのでしょうか?
(伊藤氏)
「もう限界だと思います。安倍元首相のときも思いましたが、“見せる警護”をもっと徹底すべきだと思います。制服警察官が、検問や持ち物検査をしている様子を見せるのも抑止力になると思います。それに加えて、不審者を事前に見つけるスキルも必要だと思います」
(情報ライブミヤネ屋2023年4月17日放送)


