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大阪・関西万博で未払い相次ぐ

【訴え】「“民民”の問題として救済もしない」“国家プロジェクト”万博で相次ぐ工事費の未払い 150人近くが生活に追い込まれる中、外資系の元請け業者が主張する驚きの言い分

 一般来場者数が680万人(2025年6月17日現在)を突破し、連日にぎわいをみせている大阪・関西万博。一方、相次ぐ工事費未払い問題で、いまだ開館していないパビリオンも…。2025年6月13日、海外パビリオンの建設工事を担当する業者たちが会見を行いました。なぜ未払いが起きるのか?解決の糸口は?弁護士・野村修也氏の解説です。

■パビリオン建設費の未払い相次ぐ…一体、何が?

“建設費未払い”トラブルの構図

 万博のパビリオン建設には、参加国(クライアント)→外資系業者など(元請け)→建設業者・下請け(1次→2次→3次→4次)と、いろんな業者が携わっています。

未払い問題が起きている4館

 『マルタ館』の建設に携わった下請け業者は2025年6月5日、元請けである外資系イベント会社に対し、未払い分の建設費など計約1億2000万円の支払いを求め、東京地裁に提訴しました。

 『中国館』では、元請け業者が1次下請けに1億1000万円の未払いがあり、追加工事費の3700万円が電気工事に携わった業者(2次下請け)に未入金となっています。

 『アンゴラ館』(現在開館できず)では、3次下請け業者による工事代金の未払いのため、工事が中断。4次下請け業者は、訴訟も検討しているということです。

 『ネパール館』(現在開館できず)では、工事費用の一部をネパール国側が“未払い”のため、建築業者は2025年1月に工事を停止。しかし、必要な費用が支払われ、2025年6月16日から工事が再開しています。

■『万博保険』に落とし穴…外国業者が使う常套手段とは?

『万博保険』とは?

 実は、外国政府などから発注された日本の工事業者が入れる保険(万博保険)があります。未払いが起きたとき、保険で工事費の全額もしくは大部分が補償されるというものです。しかし、弁護士・野村修也氏は、万博協会の説明が十分だったのかを指摘します。

弁護士・野村修也氏

(弁護士・野村修也氏)
「下請け業者は大きな会社ではないので、ちゃんと説明を受けて万博保険に入っていたのかどうかは、1つ大きな問題です。また、貿易保険のスキームを使っているので、日本企業同士(1次下請け・2次下請け間など)には適用できません。結局、連鎖倒産が起こる危険性があります」

“未払い”側の言い分は?

 未払いが起きた原因について、『マルタ館』の下請け業者は会見で、「弊社では、わからない状態。ただ、元請けの言い分では、『指定された期日までに間に合わなかった』『工事の不具合』『クオリティーが悪かった』など様々な理由で、弊社の不履行という形で主張している」と語りました。元請け業者側は、“クオリティーを満たしていない”として支払いを拒んでいるといいます。

(野村弁護士)
「『工事が遅れた、または不良だったから、他に費用がかかったので、その費用と相殺する』などは、外国の元請け業者がよく使う言い分で、それで未払いに持ち込むのが常套手段です。しかし、そんなことは絶対にあり得ないので、その言い分を塞いで相殺させないようにしなければいけません。やり方としては、国や万博協会が肩代わりして払うことを考えた上で、国や万博協会が外国のクライアント・元請けに対して請求していかないと、連鎖倒産は免れないと思います」

■「国家プロジェクトと信じてやってきた」下請け守る仕組みは十分だったのか?

万博協会は介入せず

 そんな中、万博協会は「契約当事者ではない協会が介入するには、相応の根拠が必要であることから、限界がある」と、基本的には契約の当事者間の問題であるとの認識を示しました。

被害者の会代表が心境吐露

 2025年5月30日には『万博工事未払い問題被害者の会』が設立され、アンゴラ館の下請け業者である被害者の会・代表は、「国家プロジェクトと信じてやってきた。万博工事が遅れ、下請け業者は昼夜問わず働いてきたのを、万博協会は把握しているはず。それを“民民”の問題として救済もしないのは、正直、歯がゆい気持ちで情けない」と胸中を語りました。

 また、「連鎖倒産しかねない事態。生活に追い込まれている人数が150人近くいる。何の支援策もなく、ずっと放置された状態で、金策も間に合わない状況。いち早く救済措置を受けたい」とも話しています。

(野村弁護士)
「過去の万博では、こういう問題が起きたとき、国が支払いを補償する場合がありました。日本も、こういう問題に巻き込まれたときには、まず国が代わりに払う制度を用意しておかなければいけなかったはずですが、それを保険で賄おうとしたところ、非常にテクニカルな問題になりました。また、その保険に加入するのは業者ですから、そういう仕組みがあることを事前に聞いておらず、保険に入っていない人たちがいる可能性もあります。下請けを守る仕組みが不十分だったことについて、国や万博協会は“自分たちは関係ありません”と及び腰になっていますが、そこは第三者弁済として代わりに払って、自分たちが相手側に取り立てることを考えなければいけないタイミングだと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年6月17日放送)

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