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中国はロシアとどう向き合うのか?

【独自解説】「プーチン大帝が出てきたら地球上の男性が色あせた」熱烈“プーチンファン”にロシア製品の“爆買い”…露を支持する中国のホンネとは?

 国営メディアも含めて、これまで“ロシア擁護”の姿勢を貫いている中国ですが、侵攻後、国民の間でもロシアを応援しようという気運が高まり、ロシア製品が爆発的に売れているようです。ウクライナ侵攻の行方のカギ握るとも言われている中国は、なぜロシア擁護を続けるのか?そして、今後どう動いていくのか?中国が使い分ける「ホンネ」と「建前」を、中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織さんが徹底分析します。

ロシアとパートナーを組む中国の狙い

互いを「後ろ盾」とする中露の安全保障

 今のロシアと中国は、政治的には“NATO”との対峙に集中したいロシアと、“アメリカ”との対峙に集中したい中国の双方が、互いに後ろを守ってくれる『後ろ盾』として必要な関係と言えます。また、貿易面で見ても重要パートナーで、ロシアは「穀物」「エネルギー資源」を輸出して、中国は大量に購入している相互依存の関係です。ロシアにとって中国は「お得意様」であり、中国にとってロシアは「重要な資源供給源」となります。

中国事情に詳しいジャーナリスト 福島香織さん

Q.中国はやっぱりアメリカを見据えているのでしょうか?
(ジャーナリスト 福島香織さん)
「将来的には『アメリカとの覇権争いの時が来る』と習近平国家主席は思っていますので、その時には、ロシアと組んで対応したいと考えていると思います。アメリカは、バイデン政権では中国との衝突はないと言っていますが、流れ的には米中対立は“先鋭化する一方”という流れは変わらないと思います」

中露は貿易でも相互依存

 中露の深い関係を示すように、2022年の貿易額の1~2月期は前年同期比38.5%増になっています。また、天然ガス供給の30年契約という大型契約も締結しています。

Q.中国は、ロシアの天然ガスをかなり買い叩いたのでしょうか?
(福島香織さん)
「天然ガスの値段は公表されていないので分かりませんが、中国内部で反発もあったと聞いていますので、価格は高いのかもしれません。中国がロシアの資源を“買い支えている”立場にあるということです」

ロシアで中国製品の需要拡大、一方で否定的意見も

ロシアでの中国製品の売り上げ激増

 一方、欧米の企業がロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁の一環として、一斉にロシア国内での営業を休止した結果、中国製品の売り上げが激増したということです。

賛否が分かれているロシアでの需要拡大

Q.中国の国内の方は、この現象に喜んでいるわけではないと聞きましたが…
(福島香織さん)
「中国のロシアへの輸出品と言えばスマートフォンや携帯電話なんですが、本来、欧米の市場の方が大きい市場なんです。しかしロシアに肩入れしすぎて、その市場から追い出されるということになると、企業としては喜んでもいられないのです。また中国のスマートフォンなどは、いまだにアメリカの半導体に依存しているということもあって、そんな単純な話ではないということです」

Q.中国政府の内部でも、ロシアに対する思いは一枚岩ではないと聞きますが…
(福島香織さん)
「習近平国家主席は、プーチン大統領を個人的には尊敬していると思います。人柄も好きなんだと思います。そして習近平国家主席は、経済の“脱アメリカ依存”を考えていて『一帯一路構想』などの経済政策を行っているのですが、その点でもプーチン大統領というかロシアとの絆を深めたいと考えていると思います。ただ、それに抵抗する外交官僚や経済官僚、その他起業家たちもいると思われます」

なぜ?ロシア側の主張をそのまま報じる中国メディア

中国国営メディアの報道

 今回のロシアによるウクライナ侵攻を、中国の国営メディアはどのように報じているのでしょうか。まず、「軍事侵攻や侵略」という言葉を使わずに「衝突」と表現しています。また「ブチャ事件のウソを暴く、虐殺報道はフェイクニュースだ」「マリウポリの小児病院への攻撃もロシアは関与を否定している」というロシア側の主張をそのまま報じています。そして「ウクライナの生物実験の研究にアメリカが関与している」というロシア側の主張も連日報道して、まるで「新型コロナの起源は中国の武漢だ」と言ったアメリカに、仕返ししているようにも見えます。建前としては一応“中立”ですが、メディアの本音は、「ロシアが悪く見えると習近平国家主席が怒るので言えない」ということのようです。

Q.中国のメディアは政府を怖がっているんですか?
(福島香織さん)
「多分ロシアのメディアの方が、自由度が高いと思います。ロシアで、生放送中のテレビ番組に『戦争をやめて』というプラカードを持って出た女性がいましたが、中国だとそういうことをすると、次の日には“いなくなってしまうんじゃないか”と思うくらいの、メディアコントロールというか、言論の自由への弾圧があると思います」

ロシア支援の熱が高まる中国

 中国政府は、ロシア産の小麦の輸入拡大を発表しています。さらにロシア大使館公認のネットショップ「ロシア国家館」では、ロシア寄りの報道もあってか、ロシア産のお酒やお菓子が飛ぶように売れ、売り切れ状態になっています。経済制裁を受けているロシアを応援しようと、ロシア製品の購入を呼びかる動きもあったといいます。また、このネットショップのSNSに「ロシア頑張れ」や「プーチンを支持する」「中露の友情が永遠に続きますように」などと言った書き込みが見られ、フォロワーが7千人から230万人に激増したということです。

熱烈なファンもいるプーチン大統領

 さらに、中国最大のSNS「ウェイボー」では「プーチン“大帝”を好きになるのに理由はいらない」「彼はストロングマン、タフガイ」「彼は義理人情に厚い!」「プーチン大帝が出てきたら地球上の男性が色あせたわ」などという書き込みが見られます。中国では以前からプーチン大統領の人気は高く、侵攻が続く今でも熱烈な“プーチンファン”は健在だといいます。

Q.プーチン大統領も大人気で、プーチン“大帝”と言われていますが、どういう意味なんでしょう?
(福島香織さん)
「この“大帝”というのは愛称のようなものです。中国の国民は強い人物が好きなんです。プーチン大統領のパフォーマンスは、かつての毛沢東主席のものとよく似ています」

ロシアを全面支持できない中国の「誤算」と「警戒」

EUの「警告」に反対を表明

 2022年4月1日、中国とEUの首脳会談が行われましたが、この中でEUは習近平国家主席に対して、ロシアを経済面・軍事面で支援しないよう“警告”を出しています。しかしその翌日、中国のヨーロッパ局長は「ロシアへの金融制裁は、世界に波及し貿易や金融の混乱を招く」として、これに反対を表明しています。

中国が全面支持できないポイント

Q. とは言いながら、中国もロシアに対しても支持できないことがあると言いますが…
(福島香織さん)
「ウクライナ東部の独立をロシアが承認したことで、同じようにアメリカが台湾を独立として承認してしまうと困る、ということがあるんです。これは中国は絶対に受け入れられません。中国はウクライナを主権国家としていち早く認めた国の一つです。『主権国家の領土は不可分だ』というのが中国の一貫した原則です。台湾についてはずっと『中国の領土だ、不可分なんだ』と言っていますが、現実的には台湾で住民投票をしたら、独立を選ぶ人が多いかもしれないので、今のロシアがウクライナ東部でしていることを認めるのは難しいと思います」

世界の対応に中国が警戒

Q.中国は西側の団結も脅威なんでしょうか?
(福島香織さん)
「私も含めて、NATO(北大西洋条約機構)はフランスやドイツがアメリカに嫌気がさしていると思っていたんですが、気が付いたらNATOの団結は非常に強まっていて、当初この戦争は、アメリカの影響力がなくなったことを象徴する戦争になると言われていたのが、実はアメリカが失われていたヨーロッパへの存在感を取り戻すことになっていました。このことを中国としては注意深く分析していると思います」

Q.アメリカは直接武力攻撃をしませんが、経済制裁などを次々と打ち出してNATOがまとまったことは、中国としては目算が違ったということですか?
(福島香織さん)
「アジアで中国がロシアと同じようなことをしたときに、東南アジアなどは自由主義国が多いので、一気にアメリカ寄りになってしまう可能性もあると警戒したのだと思います」

Q.中国はウクライナ侵攻そのものについては、どう思っているのですか?
(福島香織さん)
「習近平国家主席は、このウクライナ侵攻を前もって知っていたという話もあるんですが、おそらくその段階では、ウクライナはすぐ降伏して“親ロシア政権”ができると思っていたようです。しかし実際は戦争が長引いてしまい、『一帯一路』も棚上げですし、もしウクライナに今より強い“親米政権”ができると中国の影響がなくなりますので、これは目算が違ったと思います」

今後のロシアとの向き合いは?

Q.中国はロシアと軍事的に手を組むことはないのでしょうか?
(福島香織さん)
「中露が軍事同盟を組むことは、今まではないと言われてきましたが、この戦争でロシアが大きく国力を失って軍事力も下がると、中国としてはロシアの脅威もなくなるので、軍事同盟化の道もあり得ると思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年4月8日放送)

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