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【独自解説】すすきの頭部切断殺人、父親は「“ヘリコプターペアレント”の典型」⁉殺人容疑で親子3人再逮捕も黙秘続けるのは、「母親守るため」か…犯罪心理学者が分析
2023年8月14日 UP
「札幌・すすきの」のホテルで首を切断された男性の遺体が見つかった事件。警察は14日、殺人の疑いで親子3人を再逮捕しました。親子3人は事件について黙秘していること、そして瑠奈容疑者と被害男性が親密そうな様子だったダンスクラブに修容疑者もいたことが、新たに分かりました。元検事の弁護士・亀井正貴氏、犯罪心理学者・出口保行氏のダブル解説です。
親子3人、殺人容疑で再逮捕も黙秘続ける…母親を守るための可能性も
8月14日、警察は田村瑠奈容疑者、父・修容疑者、母・浩子容疑者の親子3人を殺人容疑で再逮捕しましたが、死体損壊などの容疑について、親子3人ともに黙秘していることが分かりました。
亀井正貴弁護士は、「3人とも黙秘となると、母親が事件にどう関わっていたのか、証拠がつかみにくい。娘と父親が、母親を守るために黙秘している可能性もある」と分析しています。
Q.今のところ、母親の具体的な動き・役割などは分かっていませんよね?
(弁護士・亀井正貴氏)
「父親と娘については、ビデオ映像などで関わりが分かっていますが、母親は全然わかっていません。例えば、この事件のことを知っていただけでは『共謀』といえるかどうかは微妙なところですから、黙秘しているとなると、母親の処分がどうなるかが非常に大きなポイントだと思います」
父・修容疑者も瑠奈容疑者と同じダンスクラブに…「“ヘリコプターペアレント”の典型」
瑠奈容疑者と被害男性が“初めて会った”とされる映像を入手しました。映像が撮影されたのは2023年5月下旬、北海道札幌市・すすきのの「ダンスクラブ」です。捜査関係者によると、今回の動画が撮影されるよりも前に田村瑠奈容疑者と被害男性の接触は確認されておらず、初めて会ったとみられています。2人は非常に親密そうに抱き合う様子なども映っていましたが、一緒にダンスクラブを出た後、トラブルになったとみられています。しかし、瑠奈容疑者と被害男性は6月にも、少なくとも1回は会っていたとみられています。
さらに捜査関係者への取材で、父・修容疑者も同じ時間、同じダンスクラブにいたことが分かりました。修容疑者は瑠奈容疑者をダンスクラブまで送ったとみられており、修容疑者と被害男性も事件前に面識があったとみられています。
Q.この映像を見て、率直にどう感じましたか?
(犯罪心理学者・出口保行氏)
「正に“ヘリコプターペアレント”の典型だと思いました。1mといった“すぐ傍”にいるわけではないのですが、いざとなればすぐに娘を救助できる位置にいます。娘を監督・監視するというようなことを、常に続けていたのだろうなと感じました」
“ヘリコプターペアレント”とは、「ヘリコプターのように上空から常に子どもを監視し、何か起きるたびに、すぐに飛んでくる保護者」のことで、出口氏は、「基本、娘がしたいということはさせていたが、心配なので自分もついていった。何かあれば自分が守る、というスタンスだったのでは」と分析しています。
Q.“ヘリコプターペアレント”という言葉を初めて聞きましたが、よくあることなのですか?
(出口氏)
「養育態度の中でも『過保護』といわれているタイプには、こういった“ヘリコプターペアレント”が付き物になることが多いです。『子どもが何をしているのか』ということに常に親が寄り添うことは悪いことではないのですが、行き過ぎてしまうと、その年齢相応の付き合い方とは変わってしまいます。今回の場合、親が娘に寄り添うことが過度であった、過保護型という養育態度があったのではないかと考えられます」
Q.映像には、瑠奈容疑者と被害男性の非常に親密そうな様子が映っていますが、このときの様子と猟奇的な犯行にはギャップがありますよね?
(出口氏)
「映像を見ると、瑠奈容疑者と被害男性は物理的な距離が近いだけでなく、アイコンタクトも取っていますから、心理的な距離も随分近づいているのだろうと思います。このときは恐らくポジティブな感情を持っていたのでしょうが、それが一転して、なぜ否定的な感情を持ち、憤まん・怨恨に繋がって事件になってしまったのかということが、最大の謎です」
被害男性は突然背後から首を刺されたか?今後の捜査のポイントは「責任能力」と「母親の関与」
被害男性の死因は「出血性ショック」だということは分かっていましたが、突然背後から刃物で首を刺され、首の刺し傷が致命傷になったのではないかということが、新たに判明しました。
Q.ここから何か読み取れる心理状況はありますか?
(出口氏)
「相手を確実に殺害しようとするような、“確実性”に重きを置いていたといえると思います」
Q.以前から「計画的な部分がありつつも、ずさんな点も多い」と言っていましたよね?
(亀井氏)
「そうですね。親子で話し合いはしていたと思いますが、瑠奈容疑者の行動を読み切れません。証拠隠滅をしようと思えばできるのに、痕跡を残しています。遺体の一部である頭部を家に置いたままで、撮影までしていました。行動に合理性を欠いているので、心理を読みにくいです。計画はしているものの完璧ではないという、非常に分かりにくい事例です」
(出口氏)
「普通、犯罪をする人間は、わざわざ自分で証拠・記録を残すことは、あり得ないわけですから、それをわざわざやっているということに、この事件の非常に不可解な部分を感じられます」
Q.今後のポイントは?
(亀井氏)
「瑠奈容疑者本人の責任能力の有無と、母親の関与の2点です。母親が事件のことを知っていたとしても、知っているだけではダメなので、共同正犯として問えるような証拠があるのかどうかです」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年8月14日放送)


