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独自解説】4630万円誤送金、被告への判決は妥当なのか?争点は「代行業者口座への振替が“虚偽”となるか」専門家が解説
2023年3月2日 UP
2月28日、山口県阿武町が4630万円を一人の住民に誤って振り込んだ問題で、「電子計算機使用詐欺」などの罪に問われていた田口被告に、山口地方裁判所は懲役3年・執行猶予5年の判決を言い渡しました。検察側の懲役4年6か月の求刑に対し、弁護側は無罪を主張していました。
2022年5月1日、田口被告は「電子計算機使用詐欺」の疑いで逮捕されました。その当時、田口被告は「振り込まれた金はネットカジノに使った」と話しています。5月20日、田口容疑者が町からの不当利益返還請求の4630万円について認諾し、誤送金の金を振り替えた決済代行業者3社が、阿武町に約4300万円を振り込みました。7月7日、阿武町は残りの約340万円を「法的に回収した」と発表。9月22日、民事裁判で解決金約350万円を支払うことで、阿武町と田口被告は和解が成立しています。その後10月22日の初公判で、田口被告は無罪を主張していました。
検察が求刑していた「電子計算機使用詐欺罪」は、ATMや電子決済などで電子計算機(コンピューターなど)に、虚偽情報や不正な指令を与えて不法な利益を得る罪で、10年以下の懲役となります。亀井弁護士によると今回の争点は、「『虚偽の情報を与えること』の解釈。4360万円を誤送金されたものであることを知りながら、決済代行業者の口座に振り替えたことが“虚偽”と判断されるかどうか」だったといいます。
田口被告の弁護側は、「電子計算機使用詐欺の罪が成立するためには、ウソの情報を入力する必要があるが、被告はウソの情報は入力していない」と無罪を主張していました。対して検察側は、「自分の金銭であれば決して行わないような金額・回数の送金などを、あたかも自分の預金であるかのように繰り返した」「犯行様態は大胆で悪質」などとして懲役4年6か月を求刑していました。
事件として難解になっているのが、被害者が阿武町ではなく、田口被告が口座を持つ金融機関であることです。検察側は論告で、誤って振り込まれたと知りながらその事実を金融機関に告知せず払い戻すことを「欺罔(ぎもう)行為」(相手をだまして錯誤に陥れることや、相手を欺く行為)と認定した、2003年の刑事事件における最高裁判例などを引用し、電子計算機使用詐欺罪の成立を主張していました。
懲役3年・執行猶予5年の判決に対して、田口被告の弁護側は控訴するということです。
(情報ライブミヤネ屋2023年2月28日放送)


