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難航している知床観光船「KAZU1」の捜索

【独自解説】知床観光船事故、直前検査で外されていた「GPSプロッター」とは?消息絶ったのは日本有数の危険海路…航海に最も必要なこととは?専門家に直撃

 4月23日、北海道・知床沖に出航した観光船が消息を絶った事故。依然として15人の行方がわからない中、懸命の捜索活動が続いています。消息不明となっている「KAZU1(カズワン)」からの通報があった「カシュニの滝」を中心に海底調査を行なっていて、4月26日の午前中にはカシュニの滝の沖合・水深30mほどの地点で、漁船の魚群探知機が船体らしき影を発見。潜水士が調査を進めていますが、船体の可能性は低いということです。なぜ、ここまで捜索が難航しているのでしょうか?一級海技士で神戸大学海洋政策科学部の若林伸和(わかばやし・のぶかず)教授が解説します。

検査では異常無しも、外されていた「GPSプロッター」

事故直前に行った検査内容

 事故を起こした「KAZU1」は、事故の3日前の4月20日、海上保安庁が船体・エンジン・救命設備の確認などを行っていました。海上保安庁は「ルールに基づいて適正に検査を実施した結果、異常はなかった」とし、船体にあったとされる15センチの傷については、「運航に影響のある傷なら必ず気付く」としています。そして網走海上保安署によると、翌21日の午前中には講習会を、午後には任意の検査を行っていました。担当者は「講習会には豊田船長も出席し、午後の検査にも立ち会った。設備の問題はなかったが、『GPSプロッター』が外されていた」と話しています。

「GPSプロッター」とは?

 事故の直前の検査で外されていたという「GPSプロッター」は、車でいうとカーナビのようなもので、船の現在位置や浅瀬などを把握し、海の中の見えない暗礁なども分かる装置だということです。ただし設置義務はなく、21日の検査時に船長は「整備のために業者に預けている」と話したそうです。網走海上保安署は「4月27日にもう1度確認させてください」と話したということで、23日の事故当時「GPSプロッター」が付いていたかは分からないということです。

 神戸大学海洋政策科学部・若林伸和教授によると、「同じ航路しか走らない船なので、付けていなくても問題はないが、船長がその海を熟知している必要がある。一般的には付けていると大変便利なもの」だということです。

神戸大学海洋政策科学部 若林伸和教授

Q.実際にGPSプロッターを持ってきていただきましたが、随分小さいですね?
(神戸大学海洋政策科学部 若林伸和教授)
「これは一番簡単なGPSプロッター、GPS受信機で、自分の位置を示す物です。先ほどここで測位したので、読売テレビの位置が示されています。地図を入れ替えられるので、海の地図を入れれば、海上でGPSプロッターとしてかなり便利に使うことができます」

緯度・経度が表示される「GPSプロッター」

Q.例えば、何か緊急事態が起こったときにこれを付けていれば、どこで事故が起こったのか分かるということですよね?
(若林教授)
「そうですね、重要なのは緯度・経度が出ることです。これは携帯では出ませんし、カーナビでも出ないのですが、この位置を伝えれば、かなりピンポイントで救助に来てもらえます。海の上ですから道路はないので、緯度・経度で示すしかないんです。救助の際にかなり役立ちます」

Q.個人のレジャー船でも付ける人が多いそうですが、義務にはなっていないのですか?
(若林教授)
「釣り船は、よく魚が獲れる漁場に再び行くために、緯度・経度で記録をしておいたりするので、必要に迫られて付けていると思うのですが、今のところ義務にはなっていないので、今後、救命設備を含めて検討していかなければならないと思います」

「知床遊覧船」のコース

Q.この海路は暗礁も多く潮の流れも速いため、日本有数の「危ない海路」と言われているんですよね?
(若林教授)
「そうですね。例えば私に『行け』と言われたら、かなり色々調べた上で、最初のうちはとにかく慎重に行って、段々と感じをつかんでいかないとダメだと思います。伝承は非常に必要で、先輩からの情報というのはとても重要です。その海域のことを知る必要がありますから、その海域に詳しい人に色々教えてもらう必要があると思います」

Q.船長は海に精通していなかったのではないかと言われていますが、やはり全く経験がないのは恐ろしいことですよね?
(若林教授)
「色んな海域で言えることなのですが、漁師さんはその海にものすごく詳しいので、その人が行かない方が良いと言っているときに行くのはどうかと思います」

Q.船長は経験がなくて、引き返すという判断すらできなかったことも考えられますか?
(若林教授)
「可能性はありますね。海ではよくあるのですが、『引き返す勇気』と言って、“帰る”という判断は“出る”よりも難しいです。でも、それはするべきです」

 4月25日、記者会見を開く意向を示した運航会社「知床遊覧船」の社長は、一度説明会に出席したきり姿を見せていません。被害者の家族への状況の説明や謝罪など、会社の代表者としての責任は果たされるのでしょうか?

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年4月26日放送)

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