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【独自解説】「今の詐欺は相手に合わせた形でだます」警察官をかたる詐欺が社会問題に…さらに法改正に便乗した詐欺の危険も!?巧妙化する最新手口と防犯対策に迫る
2025年6月20日 UP
近年、増加傾向にある警察官をかたる詐欺は、より複雑で巧妙化しています。そんな中、詐欺の拠点とされる海外では、ある動きも…。特殊詐欺の最新手口と防犯対策を、特殊詐欺に詳しいジャーナリスト・多田文明氏が解説します。
■被害急増で社会問題に…“警察官かたる詐欺”の最新手口とは
社会問題となっている警察官をかたる詐欺ですが、2025年6月2日に発表された特殊詐欺の被害総額は約392億円で、その内の約247億円が警察官をかたる詐欺による被害です。これは特殊詐欺の被害額全体の6割以上を占めるという深刻な状況です。
“警察官をかたる詐欺”最新手口①
警察庁によると、最近増えているのが“自動音声ガイダンス”を使った電話をかける手口です。通信会社などを名乗り「この電話は2時間後に使えなくなります。使用する場合は1番を押してください」などとガイダンスがあるといいます。
自宅の固定電話にかかってきた80代の女性は、自動音声ガイダンスに応じると、警察官を名乗る男につながり、スマートフォンを持っていないことを伝えると、自宅にスマートフォンが届き、ビデオ通話をさせられたということです。
(特殊詐欺に詳しいジャーナリスト・多田文明氏)
「今の詐欺というのは、すごく優しく、そっと背中を押しながら、どんどん誘導していって、電話のボタンを押してオペレーターと名乗る詐欺師と話をするという形になっています」
Q.スマートフォンがわざわざ、送られてくるんですか?
(多田氏)
「今の詐欺は相手に合わせた形でだますんです。実際、スマートフォンは、本体価格含めても数万円ですが、その100倍くらいだまし取れると、詐欺グループが踏んでいるから、送ってきているんだと思います」
■“警察官をかたる詐欺”最新手口②ATMでこまめに…
“警察官をかたる詐欺”最新手口②
80代の女性に、警察官を名乗る男から「あなたの携帯電話と銀行口座が暴力団に使われている。口座を調査するので、銀行口座からATMで毎日現金を引き出してほしい」という電話がありました。女性は2025年3月中旬~5月下旬にかけて、ATMで現金を引き出し、自宅で保管していました。
すると今度は、検事を名乗る男から「部下がお金を取りに行くので、紙袋に入れて玄関先に置いてほしい」という連絡が来ます。そして、言われた通り、女性は玄関に現金入りの紙袋を置き、約1108万円をだまし取られたということです。
Q.1108万円ものお金を、玄関先に置くのは、詐欺だと分かりそうですが…
(多田氏)
「これは、だましていた期間を見ると非常に長いですよね。長い間、警察をかたって電話をしてきているので、相当な信頼関係みたいなものが、築かれてしまっているんだと思います。日本人は特に権威に弱いので、警察などから言われるとその通り従ってしまうということがあります」
さらに現金の被害以外にも「タトゥーが入っているか確認する」と言われ、裸になるよう求められる性的被害も出ているということです。
■海外の詐欺拠点で日本人30人を拘束か
こうした中、警察官をかたる詐欺を巡り、海外ではある動きが―
2025年5月27日、カンボジア北西部のポイペト近郊で、現地警察が特殊詐欺グループの拠点と見られる建物を捜査し、約50人を拘束、そのうち約30人は日本人でした。捜査関係者によると、この拠点では、警察官をかたり、日本国内に向けて電話をする“かけ場”として使われていたとみられています。現地ではパソコン・スマートフォン・警察官の制服のようなものが複数押収されたといいます。
Q.このような詐欺は海外からかけてきている事が多いんですか?
(多田氏)
「日本の警察の手がすぐ及ばないので、詐欺を長く続けられるということと、やはり何十人もいられる場所というのは、日本国内では確保しづらいんだと思います。すぐに目立つし、摘発されやすいので、海外で拠点を持っていたんだと思います」
警察は『警察官によるSNSを使っての連絡』『警察官が逮捕状をSNSで送ること』『警察官によるATMへの誘導』『携帯電話の送付』などは、行っていないと注意喚起しています。
もし警察官を名乗る人物から電話があった場合は、電話を切って、警察相談専用電話『#9110』に相談してください。また、相手の所属・担当部署・氏名・内線番号を確認して、最寄りの警察署に連絡をしてください。大切なことは、相手から教えられた番号には、決して折り返さない事だということです。
■『改正戸籍法』施行で、法改正に便乗した詐欺の危険も…
2025年5月26日に『改正戸籍法』が施行され、漢字表記だけだった戸籍の氏名にフリガナを記載することが義務になりました。本籍地のある市区町村から、戸籍のあるすべての世帯に対して、順次、フリガナを確認する通知書が送られてきます。
間違いがなければ何もしなくても、自動的に登録されますが、間違いがあった場合は、1年以内に届け出をするというものです。マイナポータル・郵送・市区町村の窓口で受け付けているということです。間違いがあるにも関わらず変更の届け出をしていない場合、行政サービスなどで、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。
その届け出を利用した詐欺に、警察庁・法務省・消費者庁が注意喚起しています。
●フリガナの届け出に当たって、金銭を支払うよう要求することはありません。
●届け出に手数料は不要です。
●届け出をしなくても罰則はありません。
Q.区役所などで印鑑証明や住民票をもらうときに、お金を払うこともあるので、これも払わないといけないのかと思ってしまいますよね
(多田氏)
「そうしたところを、うまく突いていると思います。今回のケースは、全国民に送られてくると思うので、誰でもターゲットになる恐れがあります。また、注意してほしいのが、通知書にQRコードが付いていますが、詐欺師が偽物の通知書を送ってきて、そのQRコードを読み取ると偽サイトに誘導され、個人情報を取られてしまうとうことも、私は心配しています」
■詐欺対策にも有効?“代理人カード”とは
そんな中、詐欺対策に有効ではないかと言われている『代理人カード』というものがあります。これは、口座の名義人本人に代わって、ATMで出入金などが可能になるというものです。もちろん、本人も通常通り、自身のカードを使用することが可能です。代理人になれる人は、名義人本人の同居人などで、条件などは銀行によって異なるということです。
『代理人カード』を作るには、まず名義人本人が窓口に行く必要があります。ほかにも銀行印・通帳・本人と代理人それぞれの本人確認書類が必要です。ただ、認知症など、口座名義人の意思疎通が取れなくなると使用不可になる可能性もあります。
キャッシュカードの利用限度額の変更や、通帳・キャッシュカードの再発行、定期預金の解約などは出来ません。
Q.このカードを1つ作っておくと、例えば詐欺の電話などがあった場合「代理人と話します」とワンクッションが置けますね
(多田氏)
「詐欺グループにとってみれば、この家は何かしらの対策を打っているなと感じると思うので、ちょっと警戒してくれるかもしれません」
Q.条件に“同居人など”となっていますが、銀行によっては、一緒に住んでいなくても、『代理人カード』を作れる場合もあるかもしれませんよね?
(多田氏)
「その可能性は十分にあります。全員が同じ場所に住んでないといけないということは、恐らくないかなと思います。高齢者の方が、お金をだまし取られ続けて、高額になってしまうケースもあります。『代理人カード』があると、残高などを確認出来るようになるので、そうなると『この入出金はおかしいぞ』となる。だから『代理人カード』を持っている方は、こまめにチェックしてあげるということが大事になります」
(「情報ライブミヤネ屋」2025年6月5日放送)


