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　11月19日、北朝鮮が公開した新型ICBM（＝大陸間弾道ミサイル）の発射実験の映像には、金正恩総書記と同行する、金総書記の娘の姿がありました。異例の“初公開”の意図は？さらに、11月19日付の「労働新聞」に掲載された、北朝鮮の“今後”を示す写真とは？朝鮮半島情勢に詳しい龍谷大学の李相哲教授が解説します。

　金総書記が愛娘を「火星17」の発射実験に同行させ、初公開した意図について李教授は、「北朝鮮国民に向けて、祖国愛・人民愛・家族愛などを重視している、と見せている。また『核が後世の安全を保証する』ということを、北朝鮮の子どもたちに伝えるためか」と分析しています。

Q.北朝鮮の子ども達には常に「人民軍はすごい」と教育していると思いますが、その象徴のようにも見えますが？
（龍谷大学　李相哲教授）
「娘を引っ張り出したことで、北朝鮮の子どもを代表して“すごい物を見ている”という写真に見えます。そして19日の労働新聞には、『子ども達の笑顔を保証するために核を持つ』という表現がありますので、『次世代も核をずっと持っていきたい』という意思をはっきりと表明したのだと思います」

Q.金総書記の娘が、手にストップウォッチを持っているような写真もありますが、ただ「見学に来た」というより、いかにも「参加しているぞ」というようにも見えますね？
（李教授）
「逆に怖いです。遊園地に行って遊んでいるような感じもしますが、もし金総書記が、この『火星17』と関係して彼女に何か役割を与えたとすれば、とても怖いです」

　金総書記には3人の子どもがいるとされていて、2010年生まれの第1子は息子、2013年生まれの第2子は娘ではないか、そして2017年に生まれた第3子は性別不明とされていますが、出産後に李雪主婦人の地位が向上したことから、息子の可能性があるということです。また、子どもの存在が初めて取り沙汰されたのは2013年で、バスケットボールの元スター選手、デニス・ロッドマン氏が北朝鮮を訪れたときに、金総書記の娘を腕に抱いたと言い「李雪主氏はかわいい娘の話ばかりをした。娘の名前はキム・ジュエ」と英国メディアのインタビューで明かしています。

Q.今回公開されたのは、第2子なのでしょうか？
（李教授）
「ええ、それは間違いないようです。2010年に生まれた子は男の子、下の子は2017年生まれでまだ幼いですから、娘といえば2番目の子・ジュエさんで間違いないです。息子と娘がまだ幼いときに韓国情報当局が『最初の子が男の子で、次が女の子で、その後またお子さんを生んだ』と言っていますから、間違いないように思います」

　李教授は「娘は後継者ではないだろう」としています。これは①金総書記がまだ若いので、後継者のことは考えていない、②北朝鮮では、女性の後継者はまだ厳しい、③後継者をこのような形でお披露目しない、などを要因としてあげています。

Q.北朝鮮の後継者は、帝王学を学ばせて、ある程度大人になってから花々しくデビューさせるということでしょうか？
（李教授）
「そうですね。もし今、後継者を紹介すれば、金総書記の権威が落ち、求心力が低下してしまいます。仮に後継者を決めたとしても、こんなに早く見せたり発表したりしないと思います。第1子が男の子ですから、普通に考えて後継者はその男の子ではないか思われます」

Q.北朝鮮は男性優位だと思っていたのですが、幼い子どもとはいえ女性を出してきたのには、何か意味があるのでしょうか？
（李教授）
「ロイヤルファミリーの中で、この女の子がなんらかの政治的に重要な役割を果たす存在であれば、このような形では出さないと思います。今おっしゃるように、男性中心主義の社会ですので。第1子は隠していて､一部の情報では平壌にはおらず、外国に行っているのではないかとも言われています。ですから娘は、軽いノリというか､北朝鮮の次世代の子どもたちを代表して現場に連れてきている。もっと深読みをすれば、今アメリカや韓国が強い調子で圧力をかけていますけれども、『全く怖がる必要はない』と世界をあざ笑いしている、というふうにも見えます」

　また李教授は、妹の与正氏が写っていると思われる写真について、金正恩総書記から離れたところに居ることから、娘と妹・与正氏をわざと区別しているのではないか、と注目しています。

Q.与正氏は、一時は金総書記の後継者ともいわれた人ですが、その人が大勢の人に紛れ込むようにいるというのはどういう意味があるのでしょうか？
（李教授）
「北朝鮮では、金総書記以外は目立ってならないのです。独裁国家、特に北朝鮮では『太陽は一つ』だと。他にまだ求心力を持つ幹部などがいたりすると、北朝鮮の国是である重大原則に反するんです。今、与正氏に注目が集まっていますが、むしろ娘をもっともっと重要に扱っているということは、『ロイヤルファミリーとは違うんだぞ』、『与正氏にあんまり敬意を持つな』ということであるかもしれません」

Q.11月18日に打ち上げられたのは「火星17」で、成功だろうということですが、核実験や通常軌道での発射実験をやるかもしれないと懸念されますね？
（李教授）
「課題はそれ以外にもあって、多弾頭を飛ばすこともやっていないんです。通常角度で撃つと、大気圏に再突入するときにはねられる可能性があるので、それはかなり高度な技術がいるらしいのですが、それは証明して見せていない。なのでその実験は、北朝鮮にとっては必要なものです」

（「情報ライブミヤネ屋」　2022年11月21日放送）