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どうなる?新たな給付金

【独自解説】給付金・新マイナポイントに給与UP? 岸田内閣で暮らしの“お金”はどう変わる? 元・経産省官僚「賃金アップは、特定の産業に政策資源を投入して他の産業も引っ張っていくしかない」

政治ジャーナリスト田崎氏&元・経産相官僚石川氏のダブル解説

11月10日に発足する「第2次岸田内閣」で、私たちの暮らしのお金はどのように変わっていくのでしょうか? 給付金、GoToトラベル、マイナポイント、給与など様々な疑問について政治ジャーナリストの田崎史郎(たざき・しろう)さんと、元経産省官僚の石川和男(いしかわ・かずお)さんが独自解説します。

どうなる?新たな給付金

 まずは、新たな給付金に関して。11月4日、公明党の北側一雄副代表が「経済的にお金が必要な時に現金で給付することが一番適切」と発言。公明党の公約は、対象を18歳以下の子ども一人当たり10万円相当の「未来応援給付」を所得制限なしでの実施を提案しています。

 それに対して、自民党の公約は、対象を非正規労働者・子育て世帯などコロナで困っている人を対象に、申請不要の「プッシュ型給付」、「金額についての言及なし」としています。これを受け、岸田首相は「重なる部分を中心にできるだけ調整し、現金支給の範囲を確定し、経済対策としてまとめたい」と話しています。

 そして、11月7日、テレビ番組で大阪府の吉村知事は「所得関係なしに18歳以下だから全員に配るというのは、何を目的としているのか分からない。(子どもが3人いる)僕だって30万円もらえる。18歳以下全員に配るより、例えば経済的に厳しいひとり親家庭などに優先的に配るべき」と考えを述べました。また、国民民主党・玉木雄一郎代表は「子育て支援であれば所得制限は設けない方がいいが、今はコロナによる困窮世帯をどう支援するかが重要だ。困窮世帯への支援であるならば、子どものいない困窮世帯や独身者は救われない」と話しました。

2020年4月 特別定額給付金を巡って

特別定額給付金を巡っては、2020年4月、当時政調会長だった岸田首相は「減収世帯への30万円給付」を取りまとめ閣議決定しました。しかし、公明党が一律10万円給付を求め、覆った経緯があります。

政治ジャーナリスト・田崎史郎さん

Q.新たな給付金は公明党の衆院選の目玉政策だったので、公明党としては譲れないでしょうね?

(政治ジャーナリスト・田崎史郎さん)
「もちろん譲れないっていう構えで臨むんですけれども、一方、自民党の姿勢も所得制限のところなどで、固いんですね。だから今、自民党と公明党の幹事長会談をやっていますけれども、おそらく週内に3、4回やって、ようやく落ち着くような感じじゃないでしょうか。お互いに譲り合う以外ないと思いますね。今週中にまとめないと、来週金曜日(11月19日)に経済対策全体を決めるので、とりあえず子どもの問題と子育て世代の問題、マイナポイントの問題は、今週中の決着を目指してやっています。」

自公が協議

Q. 公明党の山口代表は「所得制限を付けると時間かかります、とりあえず配れ」っていうふうにおっしゃってましたが、やはり時間がかかる?

(元経済産業省官僚・石川和男さん)
「所得制限なんて状況つけちゃうと、そもそも所得制限をどこで線引きするかで大騒ぎするし、かつそれを把握する情報ルートをおそらくほとんど政府はまだ持ってないと思うので、決められないです。したがって、そうなるといつまで経っても給付出来ないとなるので、早くやるにはなるべく条件無しっていうのを、私は実務上の観点から提言したいですね。」

Q.所得制限の線引きを考えると時間がかかるので、いま生活に困窮している人にいち早くという考え方はどうですか?
(田崎史郎さん)
「児童手当では既に所得制限を導入してやっているんですね。児童手当一人当たり1万円~1万5000円が支払われているんですけども、年収960万円以上については児童一人当たり5000円にすると、さらに2022年10月からは、年収1200万円以上の人はゼロにするっていうふうになっているんです、既に。この改正案は2021年5月に成立しているんですね。」

元経済産業省官僚・石川和男さん

Q.児童手当の対象は中学校卒業までの児童のため、18歳以下までは網羅していないのでは?
(石川和男さん)
「18歳以下までになっちゃうと、そういう措置は今、私が調べた範囲では見当たらないです。こういうふうにお金を交付するときに一番手早いのは、何の制限もない。その次にできる条件というのは、自治体が持っている情報というとやっぱり年齢区分なんですよ。住民票があるので、情報を集めようと思えばできるんです。田崎さんがおっしゃった児童手当は、前からあるインフラなんですよ。ずっと前からあるインフラなので、今よーいドンとやっても、できないことはないが、ただ、公明党が言っているのは一律18歳以下ですので、このインフラ情報を作るのに、短期間だとしんどいですよね。」

(田崎史郎さん)
「中学生以下についてはすぐに出来るんですよ。高校生については申請してもらってやらなきゃいけないので、ちょっと時間がかかるんです。」

(石川和男さん)
「今、児童手当で情報のある所は、今から水面下で準備すれば、補正予算成立直後にすぐできるんです。つまり最初に給付を受ける人は意外と早く給付受けられるんですけど、問題は18歳まで拡張すると、結局、日本は全員やっぱり平等であげるべきとなるじゃないですか。そうすると後になって、俺は貰えない、あいつは貰えたとかが出て、これはしんどいところですよね。」

新たなマイナポイントも?

新たなマイナポイントも…課題は?

 さらに、公明党が提案しているのが、“新マイナポイント”です。公明党は、マイナンバーカードを保有する全国民への一人3万円相当のポイント付与を公約にしました。

 2020年9月1日開始の「マイナポイント事業」では、マイナンバーカード所有者に最大5000円分のポイントを還元。狙いは、カードの普及とキャッシュレス決算の普及などでした。しかし、カードの交付が遅れ、2021年8月、還元を受けられる期間を9月末から12月に延期。総務省のホームページによると、マイナンバーカードの交付枚数は11月1日現在で約4955万枚、人口の39.1%ということです。

 前回の「マイナポイント」事業では、「マイナンバーカード」を取得し、「マイナポイント」の申し込みをして、好きな決算サービスを選択。チャージもしくは、買い物で利用金額の25%(上限5000円)がポイントとしてもらえます。利用できるキャッシュレス決算サービスは、電子マネー、プリペイドカード、クレジットカード、デビットカードなど100種類以上。決算サービスは一度選択すると変更できないため、各社は上限5000円分のポイントに1000円・2000円などポイントを“上乗せ”し、アピールしました。

Q.前回の時に5000円貰えるというのを知らない人が多かったのでは?
(石川和男さん)
「5000円貰えるというのを知らないっていうのもあると思いますけど、5000円でわざわざ交通費と手間暇かけて、例えば子どもを抱える若い両親が会社休んで、ここまで面倒くさい手続きをやるかと言われると、5000円という数字だとちょっとどうかなってありますが、3万円だと意外と心が動くかも知れない。」

Q.マイナンバーカードは持っていますか?
(石川和男さん)
「はい。マイナンバーカードを持つと分かるんですけど、何かメリットありましたかっていうと、言っちゃ悪いけど、あんまり役に立たないカードが1枚増えただけですよ。」

Q.コンビニで住民票を取ったりできるでしょ?
(石川和男さん)
「そうなんですけど、コンビニで住民票を取るのは一生に何回あるかって話になっちゃうと、そんなに引っ越さないじゃないですか。ですから、本当に普及させるには人間が日本社会で必ず使うもの、例えば健康保険証と連動しないと普及しない。」

(田崎史郎さん)
「健康保険証については、もう10月からやっていますよ。」

Q.ポイント還元の希望者がマイナンバーカードの申請に殺到すると、自治体はたいへんですね?
(田崎史郎さん)
「そうです。カードをひと月に作れるのは200万枚なんですよ、製造能力が。その問題と、もう1つは市町村に殺到するという問題もあるので、はたして3万円が妥当な水準なのかっていうのは当然議論になってくると思います。」
「これを自民党と公明党でこれから協議していくんですけれども、こっちのほうが大きな溝がありまして。公明党はポイント付与を3万円分といっていますよね。これは、カードを持っている人、あるいはこれからカードを取る人に対して3万円分のポイントをポンと渡すっていう。3万円渡すと同じことなんです。一方の自民党は、今やっている制度を延長しようとしていまして、それは5000円っていわれていますけれども、これは2万円分を使うと5000円もらえる。ポイント還元25%に設定しているわけです。3万円もらうためには12万円使わなければ3万円もらえない。消費喚起っていう点では、今の政府・自民党のやり方が優れています。単に現金をポンと渡すんじゃなくて。」

どうなる?「GoTo2.0」 内容は?再開時期は?

どうなる?「GoTo2.0」

 続いて気になるのは「GoToトラベル」。どんな内容で、再開はいつになるんでしょうか?岸田首相は11月1日の会見で「経済再生に向け消費を喚起するため、安全・安心な形に見直した上でGoToトラベルの再開を検討していく」と述べました。

 GoToトラベル事業は、2020年7月22日にスタート。旅行代金が最大50%割引(10月~)、上限1人1泊2万円(日帰りは1人1万円)でしたが、感染拡大に伴い2020年12月28日に全国で一時停止しました。ちなみにGoToトラベルの実績は、2021年2月に観光庁が発表した、推計値を含む速報値によりますと、2020年7月22日~12月28日の宿泊利用者は少なくとも約8781万人、支援額は少なくとも約5399億円ということです。

 「GoTo2.0」として再開した場合、対象者は「ワクチン2回接種又は陰性証明が必要」とし、割引額は「小さな宿利用で割引率アップ」、利用日は「平日利用で割引率アップ」というような案が検討されています。再開時期については、観光庁は10月8日から実証実験を開始し、専門家と協議し決定します。国交省幹部は「年末年始が終わったぐらいじゃないか」と話しています。また、旅行サイトでは、「あとから割引」を開始し、予約を取り直さなくても再開後に割引を適用するとしています。

Q. GoToトラベル事業については、感染状況もかなり落ち着いてますから、早々に岸田首相は打ち出すでしょうか?
(田崎史郎さん)
「そうですね。来週、経済対策を発表するときに触れるんじゃないかと思います。」

Q. GoToトラベル事業は、いますぐ始めたほうがいい?
(石川和男さん)
「ええ、もともと途中で停止したわけですよね。途中で停止したということは、金があるわけですよ。だから財源あるんだからやったほうがいい、っていうのと、ワクチンの接種証明というのは、社会に普及させるという意味で、きっかけに使いたいっていうのは分かるんですけど…。私の例でいうと、北海道に仕事と旅行で行って来たんです、8月の緊急事態宣言中ですよ。行ったホテル4か所、ものすごい感染対策をちゃんとやっています。例えば、レストランでビニール手袋をちゃんと配ったり、すごくやっていて、そこでクラスターが発生したりとか、往復の航空機内でクラスターが発生したりとかがないということからすると、今の日本経済の状況を考えて経済対策を打つんであれば、これは早くやってもらいたいです。」

「成長と分配」給与アップ実現性は?

「成長と分配」給与アップ実現性は?

 次に、岸田首相が掲げる「成長と分配」についてです。10月14日の記者会見で、岸田首相が「成長の果実が国民一人一人に幅広く行き渡る成長と分配の好循環を実現する」と発言し、「看護師・介護士・保育士の賃上げ」や「賃上げを行った企業への税制支援」を提言しました。

 安倍政権下の2013年には、「所得拡大促進税制」を創設。一定以上の賃上げや教育訓練の増額などにより、大企業では最大20%、中小企業では最大25%、税額控除されるというものでした。(現在大企業は「人材確保等促進税制」に変更)

Q.「新しい資本主義」と岸田総理は言っていますが、まだ内容が具体的に見えてこないのですが?
(田崎史郎さん)
「企業が練るのはそれぞれの企業の判断なんですけれども、その企業の判断を促す意味で優遇税制を導入しようとしているわけです。具体的に決まるのは年末の税制改正のときに具体案が出てくると思いますけれども、やっぱり企業が主体なんですけど、その気持ちを駆り立てるようにやっていこうっていうことですね。」

Q.アベノミクスの時にもこういう近い案があった時に、「成長と分配」っておっしゃっているのですけど、「成長」が先なのか「分配」が先なのか、素人には分からないのですが?
(石川和男さん)
「実務的に政策を作るお手伝いをしている立場から申しますと、官僚時代にずいぶん経済対策を作った身からすると、実務的に言うとやることは同じです。言い方はよくないですけど、“お金をまく”ということなんです。あるいは、お金をとらない、つまり減税とか、そういうことなんですね。ですから、言葉としてはその『成長』と『分配』どっちが先かって議論が起きやすいんですけれども、やる対策は、GoToをやるだとか給付金とかって、これ実は前の政権とあまり変わらないので、いいから早くやることだと思います。」

Q.「ばらまき」というと非常に悪く聞こえますが、荒っぽい言い方をすると、まずはばらまかなければならない?
(石川和男さん)
「毎年100兆円の予算編成をしていますが、あれ、ばらまきですからね。ものの印象なんですよね。そういう言い方すると野党が与党を攻めるみたいな感じだけど、早くお金をまくということは、経済にいいことなんだし、あとは大型の負担を減らすということであれば、賃上げ云々もあるけれども、その前に経済をよくするということであるならば、例えば大型消費減税であるとか、あるいは原子力のフル稼働とか、そういうふうに一般の消費者の負担を下げることがたくさんあるので、そういうことをやって欲しいですね。」

G7各国の平均賃金の推移

Q.G7の平均賃金を見ると、日本は韓国にも負けていますが、賃上げが出来るのですか?
(石川和男さん)
「できるところはできますが、日本全体の賃上げというのは事実上、非常に難しくて、やっぱり特定の産業とか特定のサービス業に、ものすごく肩入れして、そこにすごく政策資源を投入して、そこの経済をよくする。それによって他のいろんな付いてくる産業も引っ張っていくっていうモデルしか、私はないと思います。」

Q.アベノミクスは成功か失敗か検証しなければいけないが、トリクルダウンと言われて、地方に行き渡らなかったと言われている中で、岸田首相がどう違いを出すのかは、来年夏の参院選の試金石だと思いますが?

(田崎史郎さん)
「岸田さんは分配を重視するって主張されているのです。成長と分配、これまで分配に力を入れてなかったっていうんで、分配に力を入れる考えなので、それをやっぱり参院選までに具体策を打ち出せないと、今度は参院選でしっぺ返しを受けることになると思います。」

(情報ライブミヤネ屋 2021年11月8日放送)

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