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ロシアの現状は?

【独自解説】経済制裁中でも「失業率」低下、その裏で国外脱出者970万人!?中国に近づくプーチン大統領…軍事侵攻から1年、いまロシアで何が―

 ロシアによるウクライナ侵攻開始から、2月24日で1年が経ちました。ウクライナの強い抵抗や反転攻勢、西側諸国による経済制裁やウクライナへの武器供与などにより、ロシアは苦戦を強いられています。そのような中でも、ロシア国内ではiPhoneが手に入り、景気も回復しているといいます。そのカラクリとは?また、急接近するロシアと中国の関係は?筑波大学の中村逸郎名誉教授が解説します。

最新型iPhoneも販売

 ロシア国内では、経済制裁の影響で「マクドナルド」や「スターバックス」など、多くの西側企業が撤退したのですが、その後別の名前で営業をしています。アップル社も撤退したはずですが、最新型のiPhoneがロシア国内で販売されています。これはロシア政府が2022年3月に、経済制裁に加わっていない第三国を経由する“並行輸入”を合法化したからだといいます。

最新型iPhoneも販売

Q.当初は“並行輸入”は禁止されていたと聞きますが?
(筑波大学 中村逸郎名誉教授)
「多くの欧米企業が撤退するので、若者を中心に不満が膨んで行ったため解禁しました」

Q.この制裁に加わっていない第三国というのは、中国ですか?
(中村名誉教授)
「インドとトルコです」

国産車「モスクビッチ」は大失敗

 ほかにも自動車の国産化を進めていますが、プーチン大統領の“肝いり政策”だった国産車「モスクビッチ」に関しては、1か月の販売台数が29台と、大失敗だったといいます。

Q.失敗の原因は?
(中村名誉教授)
「まず一台約400万円と、価格が高すぎます。その上、塗装がはがれるなど品質も低い。そして、ロシアは道が良くないのですが、四輪駆動ではないという点で、人気がないんです」

ロシアに経済制裁の効果なし?

 また、西側の経済制裁がロシアに効いていないことを示す数字もあります。例えばルーブルの価値ですが、2月23日時点で1ドル=75ルーブルとなっています。これは、侵攻前の1ドル=77ルーブルとほぼ同じ数字です。ルーブルの価値が下がらない理由は、ロシアの輸出額が、侵攻前の2022年2月と侵攻後の同年11月を比較して大幅に増えているからです。これは、中国やインドなどへの原油の輸出が、ロシア経済を支えているためだといいます。一見制裁の効果がないように見えますが、中村名誉教授によると「制裁の影響で価格が下がったロシアの原油を、中国とインドに買いたたかれている」ということです。

Q.経済制裁は今後効いてきますか?
(中村名誉教授)
「今、ロシアが中国やインドに原油や天然ガスを売っている価格は、世界の標準価格の半分になっています。今後、制裁の影響は出てくると思います」

失業率低下の裏には“隠れ失業者”が

 またロシアの失業率は、2022年12月現在3.7%と侵攻前の4.3%より下がっています。これは、G7よりも低い数字です。しかし、専門家によると「2022年はパートタイマーが増え、400万人以上が無給休暇や一時的な就労停止、就業日数の減少など、フルタイム以外の雇用になった。実質的な失業者が多いが、公式発表の失業率に反映されていない」といいます。

Q.失業はしていないけれど、報酬がもらえない休暇状態の人がたくさんいるということですか?
(中村名誉教授)
「そういうことです。そして、この休暇を使ってロシア国外に出ていく人が、どんどん増えています。その数は970万人近くに上るということです」

ロシアが中国に接近?

 2月22日、中国の外交トップ・王毅政治局員とプーチン大統領が会談し、プーチン大統領は「習近平国家主席の訪問を待っている」とコメントしました。

ゼレンスキー大統領も中国に期待

 そして2月23日、ウクライナのゼレンスキー大統領も、習近平国家主席との会談の可能性を聞かれ、「中国との会合を希望する。終結に向けた方法を検討すれば、より早く実現する」と話しています。

Q.プーチン大統領は中国しか頼れないところに、ゼレンスキー大統領が切り込んできましたね。中国は困っていませんか?
(中村名誉教授)
「中国は逆に、自分のチャンスだと思っています。対立しているアメリカのバイデン大統領が止められないウクライナ紛争を止める出番が来た、と考えているでしょう。習近平国家主席は、4月末から5月初めにかけて、プーチン大統領のロシアに訪問するのではないか、という話が出てきています。習近平国家主席は、G7までに自分の存在感を世界に見せつけたい、という狙いがあります」

Q.どういう形で終結させるのでしょうか?
(中村名誉教授)
「これは非常に難しいのですが、おそらく“今ロシアが占領している地域”をもって『ひとまず停戦』という形をとるのではないかと思います」

(情報ライブミヤネ屋2023年2月24日放送)

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