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【独自解説】KDDI通信障害 2日以上経過も完全復旧に至らず…原因は設備交換時の不具合とデータ集中によるパンク 法人向けサービス強化で広範囲に影響
2022年7月6日 UP
7月2日未明からKDDIの回線に大規模な通信障害が起き、携帯電話の通話やデータ通信だけでなく、110番などの緊急通報やスマホ決済、天気情報、物流、金融にまで影響がおよびました。KDDIは3日には復旧作業を終え、4日にはデータ通信ついて「おおむね回復した」と発表しましたが、通話機能については60時間以上経過した4日午後になってもつながりにくい状態となっていました。
KDDIの高橋誠社長は「我々の会社の歴史上、一番大きな障害。再発防止については全社一丸となって対応していきたい」と表明しました。また、金子総務相は「電気通信事業法上の重大事故に相当する」との認識を示しています。
なぜこのような大規模な障害が発生してしまったのでしょうか?原因や長時間化の理由を、携帯電話やスマートフォンに詳しい、スマホジャーナリストの石川温さんが解説します。
KDDI大規模通信障害で各所に影響
KDDIの障害は、携帯電話のほかau回線を使っている事業者の通信など最大で3915万回線に影響が出ています。3日のうちに復旧作業自体は終わったということですが、流量制御などの影響でデータ通信は、おおむね回復しているものの、発生から60時間以上たった4日午後になっても音声通信がつながりにくい状態が続きました。
Q.今回これほどの影響が出た理由はなんでしょうか?
(スマートフォンジャーナリスト 石川温さん)
「携帯電話会社としては、スマートフォンのユーザーが増えない、値下げで収入も増えないということもあって、法人向けのサービスを強化しているので、今回のように様々なところに影響が出ることになりました。また、社会において“DX(デジタルトランスフォーメーション・デジタル変革)”という動きが出ていて、いろいろなものを(回線でつないで)“見える化”することがトレンドになっていますので、今回のように一回通信が止まってしまうと、影響が多岐にわたってしまいます」
通信障害の原因・障害が長引いた理由とは
今回の通信障害は、音声をデータに変換する設備を古いものから新しいものに交換する際に起きた不具合が第1の原因とのことです。さらに不具合で通信がストップしてしまったので、正常に動いていた古い設備に戻したところ、ストップしていた15分の間に溜まった通常の2倍以上の未処理データが集中してしまい“輻輳(ふくそう)”というデータがパンクする状態になってしまったということです。
Q.簡単に輻輳・パンク状態になるものなんでしょうか?
(石川さん)
「設備の交換作業は日常的に行っているものです。KDDIは日ごろからいろいろシミュレーションしているのでしょうけれど、今回は想定外のことが起きたのだと思います。2021年にNTTドコモが通信障害を起こした時も似たような状況でして、こうした設備の工事の失敗で輻輳・パンク状態が起きないようにしましょうというのが、業界の教訓として共有するべきでした。KDDIも分かってはいたのでしょうが、今回は対処がうまくいかなかったと思います」
Q.一度輻輳してしまうと長時間元の状態に戻らないものなんですか?
(石川さん)
「高速道路で言うと、工事は終わっているのですが、まだ中で車が渋滞しているので、新たな車を入れないようにしている状態です。7月4日は50%の流量制限をしていたということなので、2回に1回しか入れない状態です。そして入ることができても、まだ中が混んでいるのでまともにつながりません。ユーザーからすると、50%と言われながら100%つながらないように感じてしまいます」
私たちができる対策は?
今回の障害が、「賠償の対象に当たるのか?」という点については、auなどの約款を見ると「通信サービスがまったく利用できない状態が24時間以上連続したときに限り損害を賠償する」とあります。今回の会見では「あくまで利用しにくい状況だった」という説明にとどまり、賠償されるかどうかはわかりません。
Q.こういった通信障害に対して私たちができる対策はどういったものがありますか?
(石川さん)
「『デュアルSIM』といって、例えば1台のスマートフォンでauとソフトバンクの2回線を契約して、auがダメな時はソフトバンクで使うという方法があります。しかしデメリットは料金も2倍かかるということです」
石川さんによると他にも、携帯電話以外の連絡手段を持つ、公衆電話やフリーWi-Fiの場所を把握しておく、電子決済ができないときのために現金を持つ、などがあげられるということです。
(情報ライブミヤネ屋 2022年7月4日放送)


