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ジャーナリスト 鈴木エイト氏

【独自解説】“統一教会”友好団体が「手芸サークル」と偽り宗教勧誘か 団体規約から消された「文鮮明」の名前、『WFWP』の活動実態を鈴木エイト氏が解説

 いわゆる“統一教会”の友好団体である「WFWP(世界平和女性連合)」が、“手芸サークル”と偽り宗教勧誘を行っていたという疑惑が浮上しています。その勧誘の手法を、“統一教会”を20年にわたり取材してきたジャーナリストの鈴木エイト氏が解説します。

“ダミーサークル”を使い勧誘か?友好団体「WFWP」とは?

“偽装勧誘”発覚の経緯

 奈良市内の公民館を管理する団体によると、「WFWP」は「リボンサークル」という手芸のサークルとして公民館の利用登録を行い、2012年~2017年に少なくとも91回、公民館を利用していました。2017年、「リボンサークル」は普段と違う講演会での利用のため、事前に公民館へ「リボンサークル」を問い合わせ先としたチラシを提出していました。ところが講演会当日、参加者が倒れ救急搬送される事態が発生。連絡先を確認するため、参加者が持っていたチラシを確認したところ、問い合わせ先には「WFWP奈良第1連合会」と記載されていたということです。不審に思った公民館側が事実関係を問いただすと、「リボンサークル」の代表者は公民館での宗教勧誘活動を認めたということです。今回の件を受け、「リボンサークル」は、公民館の利用登録を抹消されています。

実態を隠し宗教に勧誘か

 鈴木エイト氏は、「これは実態を隠して行った宗教勧誘だ」とし、「“統一教会”の友好団体である『WFWP』が、“統一教会”との関係を幾重にも隠し、公的な場を利用して一般人を誘い込んだうえ、最終的に宗教勧誘を行っていた可能性もある」と問題を指摘しています。

「WFWP」とは

 「WFWP(世界平和女性連合)」は、1992年に韓国で創設、1997年に「国連NGO」に認定され、日本・韓国含む世界130カ国に支部がある団体です。「地球は一つの家族」をモットーとし、女性の自立支援・地位向上、子どもの教育、医療・保健支援などの活動を行っているとしています。鈴木氏によると「他の“友好団体”と違い、創始者2人の存在が見えにくい活動が特徴になっている。対外的に『良いことをしている』というアピールと、信者に『我々の活動は素晴らしい』と植え付けるための活動をしている」ということです。

 「WFWP」の公式ビデオでは、「世界人類を一つの家族として育むべく、韓鶴子博士と夫の故文鮮明師は1992年に世界平和女性連合(WFWP)を設立しました」としていて、創始者は韓鶴子氏だと紹介しています。

Q.「WFWP」が友好団体であることは、“統一協会”は認めているのですよね?
(ジャーナリスト 鈴木エイト氏)
「はい。実態としては同一と見ていいと思います」

Q.「WFWP」の創始者は韓鶴子氏だと言ってますが、団体名だけでは分かりにくいですね?
(鈴木氏)
「そうですね。『WFWP』と提示されれば、ネットなどで調べればすぐわかるのですが、今回の『リボンサークル』であるとか、ダミーサークル的な物だけだと分からないところがあります」

“統一教会”の「2009年コンプライアンス宣言」

Q.“統一教会”本体のコンプライアンス宣言では、「ビデオ受講施設」などでの勧誘の際は“統一教会”だと明示するとしていますが、今回の「手芸サークル」というのは抜け穴になってしまっているのでしょうか?
(鈴木氏)
「はい。“統一教会”ではなく『WFWP』という別の団体の立て付けになる上、このコンプライアンス宣言は『協会員が自主的に運営するビデオ受講施設』とありますが、自主運営ではなく実態は教団が信者にやらせているものなので、人事異動なども当然あります。そもそもコンプライアンス宣言自体が虚偽的なものだという前提は押えておいて欲しいと思います」

奈良の「WFWP」の活動

 今回、疑惑がもたれている「WFWP奈良第1連合会」は、国内では留学生支援・青少年健全育成やチャリティーイベントなどを行っていて、ケニアやルワンダを支援しているということです。同じ奈良には「奈良第2連合会」があり、国内では留学生支援・お母さん塾・読書推進・青少年健全育成などを行っていて、ギニアビサウやスリランカを支援しているとしています。2022年7月には、女子留学生向けの日本語弁論大会を開催するなどの活動も行っています。

Q.手芸もそうですが、活動内容などを見ると良いことのように見えます。それが勧誘の入り口になっているのでしょうか?
(鈴木氏)
「はい。これらは一見良いように見えますが実態は布教のためで、これまでも大勢の女性信者が、アフリカ等にWFWPの活動のために派遣されています。向こうで学校の建設などもしていますが、それは貧困層ではなく富裕層に向けた学校で、ちゃんと費用を請求しています。物の支援もしていますが、普通の医療支援などではなく、文房具や靴など現地の業者の仕事を圧迫するようなものを送ったりしているということで、現地では非常に評判が悪いと聞いています」

Q.支援を受ける国は、必ずしも歓迎しているわけではないのですか?
(鈴木氏)
「その国の中枢の人物と関係を作るので、関係はいいです」

消去された「規約」

 鈴木氏によると、「WFWP」の本部の規約と地方支部の規約を比較すると内容が異なり、地方の規約には文鮮明氏に関する記載がないと言います。鈴木氏は「自治体と直接向き合うのは地方支部になる。『見せる用の規約』からは、文鮮明氏との関係を消しているのではないか」としています。

Q.地方の支部が何か活動をするときに、“統一教会”につながる文鮮明氏や韓鶴子氏という名前は隠したいということですか?
(鈴木氏)
「そうです。色々な地方のボランティアセンターに登録している場合がありますが、そこでの提出書類にそういう文言はないということで、教団との関係が推し量れないようにという目的があるのではないかと見ています」

「WFWP」と政治家の関係は?

2022年8月の萩生田政調会長の発言

 2022年6月、参議院選挙の直前に、自民党の萩生田政調会長と生稲参院議員が、“統一教会”の施設である「八王子家庭教会」を訪問しました。これを受け、“統一教会”との関係を聞かれた際に萩生田政調会長は「地元の支援者の中に、ボランティア活動を熱心にやっている皆さんがいらっしゃって、その方たちが、『(世界)平和女性連合』の会員の皆さんでした。その団体と“統一教会”の関係というのは、名称は非常に似ていますのでそういう思いはあったが、“あえて触れなかった”。生稲さんは存じあげなかったと思います」と回答しました。

Q.政治家は岸田首相をはじめとして、毅然とした対応を取らないと、実態は変わらないですよね?
(鈴木氏)
「そうですね。そこをきっぱり線引きして、岸田首相がちゃんと判断すべきです」

「WFWP」の見解と回答

 「WFWP」は公式ホームページで、「旧統一教会のダミー団体でありフロント団体として教団のために勧誘しているとの報道に関して、これは事実に反しています。会員になってくださった方々を、当団体が世界平和統一家庭連合という宗教法人に勧誘するということはありません」と見解を公開しています。また、今回の奈良市の公民館の件に関しては、「当団体が奈良市の公民館で宗教の勧誘活動を行ったという事実はございません」としています。

(鈴木氏)
「全国霊感商法対策弁護士連絡会は、『WFWP』を“隠れ蓑”だと指摘しています。『女性信者獲得と“統一教会”の資金獲得のための団体だ』という申し入れを、各自治体にしています」

Q.奈良市の公民館の件も「団体では勧誘していない、個人の信者の方が本人の意思で勧誘している」ということなのでしょうか
(鈴木氏)
「そうですね、『個人的に紹介したのではないか』とか、いくらでも言い逃れはできますが、明らかに組織性は感じます」

「WFWP」の勧誘方法

 鈴木氏によると、「WFWP」勧誘の入り口は多岐にわたり、例えば高齢者向けには「家系図」の後援会や手芸などの趣味サークルを、子育て世代向けにはママカフェや子育て相談を、若者向けには「SDGs」の勉強会などを、入り口にしていると言います。

Q.こういう集まりみたいなことを実際にやるのですか?
(鈴木氏)
「そうですね、色々と戦略は立てていると思います。今回の公民館の件は非常にレアなケースで、これまでこういうケースを僕も把握して自治体を取材していますが、そのとき自治体は『規約に反してないので、使用禁止にできません』という回答が普通だったんです。施設側からの追及に対して、思わず本当のことをしゃべってしまったのではないかと思います」

Q.質問権の行使などを行っていますが、政府や文化庁は結論を出していませんね?
(鈴木氏)
「文化庁側は、かなり慎重に動いている印象で、解散命令請求を出して、裁判所でひっくり返されないように、証拠を集めている段階だと思います。当然、教団側も抵抗してくるでしょうし、どうなっていくか、かなり微妙ではありますが期待したいです」

Q.“統一教会”側の焦りも感じますか?
(鈴木氏)
「色々なところで訴訟などを乱発しているという話も聞きますし、今の動きをなんとか止めたいんだなというのは感じます」

Q.「入り口」がたくさんあることは我々も知らなくてはいけませんが、地方議員の方の総括がどこまでできるかというところですね?
(鈴木氏)
「そうですね、統一地方選もありますから。ただ、国会議員の方より、関係は根深いと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」 2023年2月15日放送)

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