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【独自解説】この冬“電力がひっ迫”!? 「電気料金」値上がりで家計直撃!国がやるべき対策は?さらに家庭でできる“節電術”も伝授
2021年12月23日 UP
家計を直撃!値上がり続く「電気料金」
気が付けば、年々高くなっている電気料金。東京電力の標準的な家庭の電気料金を見てみると、2022年1月の電気料金は、1年前と比べ「1314円」の値上がりとなっています。さらに全国の電力会社10社でも、2022年1月に“値上げする”と発表しています。
こうした中、この冬心配されているのが“電力のひっ迫”です。資源エネルギー庁によると、この冬の電力需給は、「過去10年で最も厳しい見通し」だといいます。この”電力ひっ迫“の背景にある原因を、経済評論家の加谷珪一(かや・けいいち)さんが解説、さらに、光熱費が“ほぼゼロ”だという「ゼロエネルギー住宅」の驚きの仕組みや、経済評論家・荻原博子(おぎわら・ひろこ)さんが薦める“家庭でできる節電術”を併せてご紹介します。
この冬の電力需給「過去10年で最も厳しい」
東京電力管内では12月6日、電力使用率が96%まで上昇し、需給ひっ迫度を示す指標が2番目に悪い「厳しい」になりました。原因は、「急激な寒さで暖房の使用が増えた」、「悪天候による太陽光発電の不足」、「設備トラブルの発生」が挙げられています。
電力不足はエリアによって違いがあり、“電力供給の余力を示す指標”である「予備率」は、2022年2月で、北海道は7.0%、東北4.4%、東京3.1%、中部・北陸・関西・中国・四国・九州では3.9%、沖縄33.8%となっています。電力の安定供給に必要な「予備率」は3%とされており、資源エネルギー庁によると、7つのエリアが3%台になるのは過去10年で最も厳しい状況だということです。
Q.北海道は暖房の使用率は高いと思いますが、「予備率」7%と少し余裕があるのはなぜですか?
(経済評論家 加谷珪一さん)
「北海道の場合、本当に寒いので、灯油で暖房している所も多いんですよね。東日本は電力が中心で、エアコンを使う方が多いですから、そういった事情も関係していると思います。」
電気代が過去にないスピードで値上がり
この電力のひっ迫を受け、大手電力会社は4カ月連続で値上げしており、東京電力によると、平均的な家庭の1か月あたりの電気料金は、2021年1月と12月を比べると「1168円」も値上がりしています。
Q.電気代もこれだけ上がって、いろんなものが値上がりしていて、家計は大変な状況ですよね?
(加谷さん)
「非常に厳しい状況だと思います。電気代の絶対値もそうなんですが、この値上がりのスピードが過去にない水準ですので、家計へのインパクトはかなり大きいんじゃないでしょうか。原油が上がると、すべての値段が上がりますので、家計直撃ということになると思います。」
“電力不足”の3つの原因
なぜ、ここまで電力不足となっているのか…理由は大きく分けて3つあります。一つ目の原因は、「厳冬の可能性が高く、電力需要が増」ということです。さらに、火力発電に使う液化天然ガス(LNG)の価格が高騰していることも原因とされています。2020年の9月では1トン当たり3万円ほどだった価格が、2021年10月には6万8570円と約2.3倍になっていて、世界銀行によると日本では史上2番目に液化天然ガスの価格が高騰しているということです。
Q. 液化天然ガスの価格が、ほぼ右肩上がりになっている原因は?
(加谷さん)
「コロナ禍で減産の態勢を取っているということもありますし、それから脱炭素シフトも非常に進んでいますので、石炭をもう使えなくなっているんです。ですので、とりあえず公害の少ないLNGを最初に使おうということで、需要が殺到している面があると思います。石炭や石油はいずれ使わなくなるということになりますから、産油国は積極的に増産はしないという状況になっています。」
二つ目の原因は、「火力発電所の電力供給量低下」です。加谷さんによると、再生可能エネルギーの導入拡大で、旧式の火力発電の休止・廃止が進み、電力供給能力が低下しているということです。
(加谷さん)
「旧式の発電所は非常に効率が悪いですし、CO2をたくさん出しますので、電力会社としてはなるべく休廃止したいという意向が働いています。」
そして三つ目の原因は、「原発の多くが停止中」の為です。原子力安全推進協会ホームページによると、国内の原発のうち9基は運転中ですが、24基は停止中だということです。
Q.政府、国会議員の方は逃げないで、この話をしないといけないですよね?
(加谷さん)
「今、まさに過渡期の混乱ですので、電力の供給不足は十分ありえるわけですよね。再生可能へのシフトは進めつつ、こういう緊急事態にどう対応するかとか、両にらみでいかなければいけませんから、十分な体制が必要なんじゃないかと思います。今はエネルギー政策の重要な転換点ですから、そこをちゃんとコントロールできた国とできない国とでは、そのあとに大きな違いが出てくるんじゃないかと思います。」
Q.近い将来、太陽光や風力などで日本の電力は賄えるのでしょうか?
「これはいろんな議論があるんですが、太陽光とか風力のコストが今劇的に下がっていて、火力の数分の1になると言われているんです。そうなると数をたくさん作れますので、ある程度天候が悪くても十分賄えるというのが、今おおよそのコンセンサスになりつつあります。」
Q.安定供給というところでは、自然任せですが・・・
「風力や太陽光は、天気がいいときに電気を作り過ぎてしまうところがあります。そのときに余った電力で水素をたくさん作っておいて、足りなくなったときにその水素を回す、ということができると、安定供給もできるという見通しです。」
加谷さんによると、実は2020年も液化天然ガスの調達に苦労し、綱渡りのような状態だったということです。電力不足を解決するためには、コストをかけてでも液化天然ガスを確保すること、さらに、休止中の火力発電所を柔軟に運用することが必要だと言います。しかし、今後資源価格が大きく下がる可能性は低いので、電気代は今後も下がりにくいといえるといいます。
Q. 休止中の火力発電所は「すぐ動かそう」っていったら、動かせるものなんでしょうか。
(加谷さん)
「廃止してなければ動かせるんですが、ただ電力会社にとってはコストアップ要因になりますから、この分のコストというのは社会的にどう負担するかというのは考えないと、電力会社だけに負担を押しつけることになってしまいますので。運用すること自体は可能です。」
経済評論家・荻原博子さん推奨の“節電術”
電気代が下がらないのであれば、重要なのは“節電”です。経済評論家・荻原博子(おぎわら・ひろこ)さんに“家庭でできる節約術”を聞きました。
一つ目は「照明を“LEDタイプ”に変える」こと。白熱電球(54ワット)を同じぐらいの明るさのLED(9ワット)に替えると、年間で約2430円の節約になるということです。LEDランプの価格は白熱電球より割高ですが、省電力で寿命も長いため、約9か月(1500時間程度)の使用でコストが逆転するのだそうです。
“家庭でできる節約術”二つ目は「エアコンの使い方を効果的に」すること。カーテンを厚手にして部屋の暖かい空気を窓から逃がさないようにする、エアコンのフィルターをこまめに掃除する、扇風機などで上にたまる暖かい空気を循環させる、室外機の前に物を置かないようにするなど、エアコンを効率よく使い、設定温度を1度下げることでも節約になるということです。
“家庭でできる節約術”三つ目は、「省エネ型の家電に買い替える」ことです。初期投資は必要ですが、昔の家電と比べると、今は格段に電力の消費効率が良いためです。
究極の省エネ!?“ゼロエネルギー住宅”
そして、究極の省エネと言われているのが“ゼロエネルギー住宅”です。高断熱で家を省エネ化した上で、太陽光発電など再生可能エネルギーを導入、1年間で使うエネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指す住宅の事です。
そのメリットは、とにかく電気代(暖冷房代)が安く、省エネに貢献できること。温度差が小さく、結露・カビの発生が減少し、体への負担が少なく快適に生活できると言われています。
反対にデメリットとして、初期投資費用やメンテナンスが大変なことが挙げられ、施工が簡単ではないことから、ノウハウを持つ業者に依頼しないと問題が発生する可能性もあるということです。
Q. 家を建てるのは大変なんですけど、断熱材を壁に入れたりすることで、部屋の室温はやっぱり違ってくるんですか?
(加谷さん)
「これは劇的に変化がありまして、私の家も窓を二重サッシにしたんですが、電気代も2割ぐらい安くなりましたし、気温差がなくなり快適になりましたね。うちの奥さんは冷え性なんですけど、これを入れてからもう足腰が寒いって言わなくなりましたから、劇的でしたね。」
Q.ちょっとお金かかるんでしょ?
「20~30万ぐらい、初期投資はかかりましたね。」
加谷さんは“ゼロエネルギー住宅”について、「政府が本格的に補助すれば、国内に大きなリフォーム需要が生れる可能性があり、従来の公共事業をはるかに超える経済効果があるのではないか」と言います。
Q. これはもっともっと進めていった方がいいということですか?
(加谷さん)
「住宅市場は非常に大きいですから、大きな経済効果が見込めると思います。これは戸建てだけじゃなくて、いろんな住宅に適応できますから。集合住宅もぜひ、適用して欲しいと思いますね。」
(情報ライブ ミヤネ屋 2021年12月22日放送)


