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【独自解説】「日本の裁判史において大きな汚点」“統一教会”解散命令に猛反論も提示したデータに見えた“違和感” 本拠地・韓国では活発な動き、資金再流出の懸念も…被害者救済への道のりは?
2025年3月30日 UP
東京地裁の解散命令を受け、『世界平和統一家庭連合』いわゆる“統一教会”が徹底反論の会見を行いました。一方、教団の主張には疑問の声も…。そんな中、本拠地・韓国では活発な動きも見られます。浮かび上がる今後への“懸念”と“問題”とは?ジャーナリスト・鈴木エイト氏の解説です。
■“統一教会”側の反論にエイト氏“異議あり”!「教団側の主張は筋が通らない」
“統一教会”を巡っては、2022年に安倍元首相銃撃事件があり、2023年10月に政府は解散命令を請求しました。森山文科相(当時)によると、「170人を超える被害者から聞き取りなどを行った」ということです。そして2025年3月25日、東京地裁が解散命令を出しました。
解散命令請求の理由としては、『悪質性』『継続性』『組織性』を挙げています。これまで法令違反を理由に解散命令となったのは、『オウム真理教』と『明覚寺』の2件。ただ、この2件は刑事罰を受けたケースで、民法上の不法行為としては“統一教会”が初だということです。
解散命令は、宗教法人第81条で「法令に違反して著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為があった場合、所轄庁などの請求により裁判所解散を命じることができる」と定められています。
解散命令の理由として、東京地裁は「献金勧誘等は、コンプライアンス宣言前後の約40年の長期間にわたり全国的な範囲で行われ、類例のない膨大な規模の被害を生じさせた。宣言後もなお看過できない程度の規模の被害が生じている。献金勧誘等の態様は総じて悪質。事前の改善を図ることを期待するのは困難。解散命令は必要かつ、やむを得ない」としています。
“統一教会”田中富広会長は2025年3月25日の会見で、「解散命令請求の理由とされた不法行為の組織性・悪質性・継続性のうち、目に見えて明らかに継続性はありません」と主張しました。しかし、コンプライアンス宣言前と宣言後の被害状況を見ると、和解・示談・民事訴訟を合わせて『被害』179人・『損害』約9億8500万円が、コンプライアンス宣言後に確認されたということです。
(ジャーナリスト・鈴木エイト氏)
「コンプライアンス宣言後、街頭で偽装勧誘、“正体隠し勧誘”がないと教団は言っていますが、実際、僕は目の当たりにしています。また、田中会長が『目に見えて継続性はありません』と言っていますが、逆に言うと、“組織性・悪質性については目に見えてない”ということを教団側が実質的に認めているのではないかということも、このコメントから読み取れます」
80分にわたる会見で田中会長は、「正しい民主国家・法治国家として、正しい判断を下していただくために闘ってまいります。教団・法人にとってみたら、(解散命令は)死刑です。本当に解散命令を出せるほどの実態なのか、見極めていただきたい」と話しました。
そして、会見の中で教団が多くの時間を割いたのが、文科省が東京地裁へ提出した陳述書が「ねつ造である」という主張です。
(“統一教会”・田中富広会長/会見で)
「政府が準備した陳述書には、複数の虚偽・ねつ造の事実があることが判明。しかし、今回の(地裁の)決定では、このねつ造においても、証人尋問の場で明らかになったねつ造の事実関係に関しても、全く触れられておりません」
教団側は、一つひとつの事例を挙げながら『ねつ造であるとする根拠』を示しました。
(“統一教会”・福本修也顧問弁護士/会見で)
「非常に高齢の女性が、34ページもの非常に長い陳述書を出しておりました。とても91歳のおばあちゃんが書いたとは思えなかった。(信者である)娘さんが行って、『お母さん、陳述書を書いたの?』と聞いたら、『いや、知らない』と。反対している息子がいるが、息子と文化庁のほうで書いたんだと」
(田中会長/会見で)
「政府がねつ造した被害事実を理由に解散を命じるなど、国家による明らかな信教の自由への侵害です」
(福本弁護士/会見で)
「日本の裁判史において、非常に大きな汚点を残したのではないかと」
ねつ造であるとの主張は以前からされていて、2025年2月には教団のホームページで、同様の報告書が公開されていました。
ねつ造の事実関係について問われた阿部俊子文科相は、「旧統一教会に関する解散命令請求は、適正に行ったものです。裁判に提出した証拠の内容を明らかにするかのような書面を公表したことは、いわゆる審理を非公開とする趣旨に反しており、適切ではない」と述べました。
Q.教団側は、文科省の陳述書がねつ造だと言っていますが…。
(鈴木氏)
「被害者が高齢なので、多少の記憶違いや時期がずれることもあり得ますが、果たしてそれが“ねつ造”と言えるレベルなのかと疑問に思います。陳述者は聞き取る形で書いたということで、要は信者側の人間が家族にいるということなので、そういう人からの働きかけ等で色々変わっているのも想定はできます。教団側は“ねつ造”と言っていますが、裁判所はそういった主張も見て審理した上で解散命令を出しているので、教団側の主張は筋が通らないと思います」
■教団側「継続性はない」 一方、“違和感だらけのデータ”指摘に言葉詰まらせる場面も
会見では、教団が提示するデータに対する違和感が指摘される場面もありました。『2009年のコンプライアンス宣言を境に裁判件数が激減した』というデータを提示した福本弁護士は、「コンプライアンス宣言以前の案件は165件、コンプライアンス宣言以降のものは4件しかございません。2016年3月以降は、現在まで0件です」と、教団の不法行為に継続性はないと主張しました。
しかし、このデータ内の4や0という数字は、コンプライアンス宣言以降に“初めて献金した人”が起こした裁判件数を示していて、“コンプライアンス宣言前に献金をスタートさせ、その後被害を訴えた人”はカウントしていないということです。記者からの「限定的な条件で出された数字ではないか」という指摘に、福本弁護士は言葉を詰まらせていました。
さらに、『第三者により強制的に脱退させられたとされる信者の数と裁判件数の関係性』を説明する場面では、福本弁護士は「強制的に脱会させられた信者たちが、その後、裁判を起こすよう仕向けられている」と主張。
その裏付けとして、「2本のグラフが時間差を置いて曲線を描いている」と説明しましたが、両側の数字をよく見ると、縦軸の数字の最大値が、赤いグラフは400なのに対し、青いグラフは80となっていて、5倍も縮尺に差があるグラフでした。
会見の生配信を視聴した人からは、「数字が違うのに同じサイズの山?」「このグラフ、ちょっとどうなの?」と疑問の声が上がっていました。
Q.今後、“統一教会”は即時抗告へということで、高等裁判所にいけば『清算手続き』や『宗教法人格を失う』ということですが、ひっくり返る可能性はありますか?
(元検事・亀井正貴弁護士)
「難しいと思います。前提として『継続性の問題』は大事なところではありますが、コンプライアンス宣言後に数が少なくなっても、それではダメです。ゼロにする措置をしないと、再発する可能性がある。その継続性の部分を、教団側は恐らく甘く見ていたのではないかと思います」
Q.オウム真理教で確定まで7か月、明覚寺では3年かかっています。今回の場合、どれぐらいかかりそうですか?
(亀井弁護士)
「早くしないと、また被害が出る可能性があるので、恐らく1年はかけないと思います。半年~10か月ぐらいで頑張ると思います」
■本拠地・韓国では活発な動き 韓鶴子総裁が『天苑宮』グランドオープンを宣言
一方、“本拠地”韓国にある本部では、慌ただしい動きが。2025年4月13日にグランドオープンする加平(カピョン)の『天苑宮』では、祝いの式典を開催予定です。
韓国のテレビでは天苑宮のCMが流れ、韓鶴子総裁が登場し、天苑宮のグランドオープンを宣言。「天苑宮を探せ」という広告を使ったプロモーションも行われ、CMや広告を撮影してSNSに投稿すると、動物園の入場券などが当たるといいます。
Q.グランドオープンとなると、信者の献金がまた韓国に流出するのでは?
(鈴木氏)
「実際、霊感弁連の報告によると、2024年11月に400人規模の日本人幹部が韓国へ幹部研修に行ったとき、外為法ギリギリのお金、一人100万円とか運んだのではないかと言われています。韓国の宗教法人・統一教会系の宗教法人に直接献金を納める“専属勧誘”も継続的にやっているので、数としては何百億円ということはないにしても、資金が流出している可能性はあります」
全国霊感商法対策弁護士連絡会も、「特例に基づく手続きでは、教団が信者を動員し韓国本部に現金を持ち出してしまう場合、それを防ぐことは不可能。教団の財産を包括的に保全することが必要だ」としています。
その“特例法”とは、「解散命令が請求された宗教法人のうち、被害者が相当多数と見込まれる場合、財産の監視強化の対象となる『指定宗教法人』に指定される」というものです。“統一教会”も2024年3月に指定されているといいます。
『指定宗教法人』に指定されると、「不動産を処分する際、1か月前までに国に通知すること」「財産目録を3か月ごとに提出すること」が義務付けられます。ただ、この特例法の財産保全については、「この法律施行後3年(=来年)をメドに、『財産保全の在り方について検討すること』と付則で盛り込まれるに留まる」と書かれています。つまり、“検討段階”ということです。
■教団の総資産は約1180億円、被害者救済への道のりは?
宗教法人が解散となった場合の『財産の処分』については、法人名義の不動産・財産を清算し、被害者の救済に充てるとしています。ただ、東京地裁の決定文書(2015年~2022年度)によると、献金などの年間収入約409億円の99%が信者からの献金で、年間支出は約341億円、総資産は約1180億円だということです(2022年度末現在)。
(鈴木氏)
「3年前の時点で、この金額が現金を含めプールされていました。安倍元首相銃撃事件以降は韓国に送金できなくなり、年間200億~300億円送ってきた金額が積み上がったことにより、この金額になっている。ということは、『700億~800億円ぐらいの現金を持っていた』と言われていた金額と合致しているのではないかということです」
Q.被害者の救済はもちろんですが、現役信者たちの拠り所がなくなったところのフォローも考えないといけないですよね?
(鈴木氏)
「信教の自由が侵害されるわけではなく、そこの内心までは踏み込めないので、礼拝や、集まって祈ることはできますよね。あとは、相当な金額が余るとなったところで、それが最終的に“潜在的な被害者”に賠償することができるかということです。元々は被害者のお金なので、それをちゃんと返して、整えた上で現役信者へのケアをしていくべきです」
(「情報ライブミヤネ屋」2025年3月26日放送)


