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東大前刺傷事件の概要

【独自解説】犯罪心理学者 出口教授が解説「東大前刺傷事件は青年期特有の“幼稚な模倣犯”『東大前』を選んだのは、“歪んだ自己顕示欲”」

少年による“幼稚な模倣”が悲劇を生んだ

1月15日午前8時半ころ、東京都文京区の東京大学農学部正門前で、男女3人が刃物で切り付けられ重軽傷を負い、高校2年生で17歳の少年が、殺人未遂の疑いで現行犯逮捕されました。逮捕された少年は「医者になるために東大を目指して勉強していたが成績が1年前からふるわなくなり自信を無くした。自殺する前に人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと思った。去年から事件を計画していた。」などと供述しています。

この事件に関して、犯罪心理学に詳しい東京未来大学 出口 保行(でぐち・やすゆき)教授に解説していただきます。

東京未来大学 出口 保行教授

Q.出口教授、最近のいわゆる、人を殺して自分が死ぬというような事件の模倣をしているような幼稚性も感じるんですが、いかがでしょうか?

(出口教授)
「完全に模倣犯だろうというふうに思います。今回の事件を見ていると、今まで先行している事件の部分部分をまねている。電車を使ってみたり、そこに火をつけてみたり、それから無差別な攻撃を行うというようなこと、先行する事件のごく一部を、自分のやりやすいように組み立てているといえます。」

容疑者17歳の少年とは

Q.今回のように、凶器を準備して計画していくうちにエスカレートしていく彼の心理は、どんな状態だったのでしょう?

(出口教授)
「青年期特有の視野狭さくという状況に陥っていたと考えられます。心理的な視野が狭まり、周囲の状況が見えなくなると物事の判断が一義的になりやすく、こうと決めたらそれに向かって猛進してしまいやすい。通常であれば動機を形成しても、実行前に人は、リスクとコストを考えます。1つは検挙されるリスクです。コストはそれをやることによって失うものの大きさ、当然それを考えれば実行しないのが普通なんですけれども、青年期特有の視野が狭まって、突っ込んでしまう、というような現象があって、これは“非行歴のない子ども”が大きな事件を起こすときによく見られる現象なんです。そして“センセーションシーキング”、センセーションは刺激です、シーキングは求める、次々に新しい強い刺激を求める、本人にとって“計画の下見をする・準備をする”そういうことが強い快感に変わっていくというという現象も起きます。」

犯行場所は歪んだ自己顕示欲から

犯行場所に東大を選んだワケ

Q.犯行場所の“東京大学前”があらわしていることは何でしょうか?
 
(出口教授)
「『自分がこんなに社会に対して影響力を持っているのだということを見せつけて、最後を迎えたい』という歪んだ自己顕示欲が背景にあるのではと思います。より大々的に取り上げられることを狙って、犯行場所を設定したのではなでしょうか。さらに、自分の夢の実現がうまくいかない中、自分の目標とする象徴的な場所“東京大学”で、夢に向かって進んでいる人たちを、あえて狙った可能性もあります。そして青年期っていうのは“疾風怒濤の時代”とよく言われています。いろんな課題が次々に自分に降りかかってくる。それまでは自分が結構トップにいたと思っても、周囲に同じようなタイプがいれば、自分というのは、そんなに大した者じゃないという立ち位置を知っていく、それを学習しながら、答えを少しずつ見つけていく時期です。そこで結論を急いでしまう、まず結論ありきにしてしまうと、大きな歪みが発生します。」

今 “性善説”だけでは考えられない時代に入っている

最近の主な無差別襲撃事件

Qさまざまな無差別襲撃事件が起きていて、いつ、どこで、誰が、何をするんだろうと、おびえる社会になっていっているようですが、どう対処すればいいのでしょうか?

(出口教授)
 「かつては“安心安全な国日本”といい切れていたのですが、今はそうではない。京王線の事件しかり、大阪の事件しかり、今どこいつどこで何が起こるか分からない時代に入ってきている。悲しいかな“性善説”だけでは考えられない時代に入っている。今後は自己防犯ということで、自分がいつ何に巻き込まれるか分からない、という緊張感というのを持つことが重要になってくると考えています。」


(情報ライブ ミヤネ屋 2022年1月17日放送)

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