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“統一教会”と接点があった自民党議員は179名

【独自解説】自民党の“統一教会”アンケート、公表された結果から浮かび上がる疑問点「“抜け”が多く雑」「やればやるだけ叩かれる状態」専門家2人が解説

 9月8日、自民党は“統一教会”について党内で行ったアンケートの結果を発表しました。しかし、氏名の公表基準や内容の抜けなど、内容を詳しく見ていくと多くの疑問点が浮かび上がってきました。なぜこのような発表に至ったのか?ジャーナリストの田﨑史郎氏・鈴木エイト氏の2人が解説します。

アンケート結果、氏名公表の“線引き”は2通りの案があった

田﨑史郎氏・鈴木エイト氏の2人が調査結果について解説

 自民党は、調査対象となった党所属の国会議員379人のうち179人が「“統一教会”と何らかの接点があった」と公表しました。この数について茂木幹事長は「決して少ない数とは思っておらず、重く受け止め、率直に反省する」と述べました。
また、179人のうち121人に関しては「教団の会合に出席していた」「選挙応援を受けていた」など“関係が深い”として氏名が公表されました。

自民党議員379人中、約半数が“接点あり”

Q.この179人という数字で自民党が組織的に関わっていないと言えるのでしょうか?
(田﨑氏)
「自民党としては“統一教会”と関係していないのは本当のことのようです。別の有名な宗教団体からのアプローチを断ったということもあります。ただこういう数字が出てきていますので、関係ないと言い切れるかというと、疑問符が付きます」

氏名公表 “線引き”の裏側

 氏名公表の“線引き”は2通りの案が考えられていました。一つは関係のあった全議員を公表して、個人に紐づく関係は公表しないというもの。もう一つは関係の濃い議員20~30人公表するというものです。最終的には二つの折衷案になりました。田﨑氏は「全員公表しなかったのは、今後接点を持っていた議員が新たに出てくる可能性を、懸念しているのでは」と指摘しています。

Q.氏名公表の基準は、自民党の中でも割れていたんですか?
(田﨑氏)
「一つ目は岸田首相の考えで、二つ目は茂木幹事長の考えだったんです。そこに参議院幹事長の世耕弘成議員が『議員本人が関わったものについては、氏名を公表して、秘書が代理出席したり事務所が勝手に電報を打ったような場合は、公表しなくていいんじゃないか』ということで『教団の会合であいさつをした』『献金などのお金のやり取りがあった』『選挙ボランティア』の3つを公表することになって、数えてみたら121人になったということです。折衷案は世耕議員の提案です」

“会合に出席”の議員氏名公表 今後増える可能性も?!

関連団体の会合に本人が出席した議員

 アンケート結果によると、関連団体の会合に秘書が出席したのは76人、本人が出席したもののあいさつ等はなかった議員は48人でした。一方、本人が出席したうえであいさつを行った議員は96人、本人が出席し講演を行ったのは20人で、これらについては氏名を公表されました。

Q.関連団体の会合で講演をした議員が結構いますが、政治家の人が講演するのにその団体を調べないということはあるんでしょうか?
(田﨑氏)
「本来は調べないといけません」
(鈴木氏)
「調べればすぐわかります。知らなかったというのは“自民党の言い分”で政治家側が“騙された被害者”という形態をとりたいんじゃないかなと勘繰ってしまいます」
(田﨑氏)
「その可能性は十二分にあります。ただ、『知らなかった』と言っている議員に『本当に知らなかったんですか?本当は知っていたんじゃないんですか?』という取材をしてみないと本当のところは分からないです」

“統一教会”主催の会合に出席した議員

 “統一教会”主催の会合に出席したのは、逢沢一郎衆院議員・磯﨑仁彦内閣官房副長官・井上義行参院議員・萩生田光一政調会長・森まさこ首相補佐官など10人でした。茂木幹事長は「多くは、当時旧統一教会主催の会合であるとの認識はなかった」と説明しています。この公表内容について、鈴木氏は「なぜ山本朋広衆院議員の名前がないのか?」と異議を唱えています。

Q.韓鶴子総裁も来ているイベントなのになぜ名前がないのかということですね。
(鈴木氏)
「マザームーン発言を認めたくないんでしょうかね?」
Q.明らかな点検漏れに思えてしまいます。
(田﨑氏)
「多分そうなんでしょう。聞いた話では、この山本議員が最初に回答した内容があまりに甘かったので、党の方から『書き直せ』と言われて出てきたのがこの内容だったということです。山本議員に一度記者会見をして説明してもらいたいです」

Q.この179人という数字も、今後増える可能性があるんじゃないでしょうか?
(田﨑氏)
「その可能性があるので、氏名を公表していない58人がいるんです。もし今後報道される人がいた場合、『その人はこの58人の中にいるんです』という言い訳が通じます」
(鈴木氏)
「表に名前が出た人がこれだけいますが、これを手配していた人がいるんです。例えば山本朋広議員の場合、ネパールに行く前に『今度はどこへ行かされるやら…』というツイートをしています。実際に議員を“統一教会”のイベントに割り振りしている議員がいますが、その人の名前は出ていません」

金銭のやり取り、選挙支援…初めて名前が出た議員も

会費類を支出した議員

 金銭に関する項目で、教団に対する会費類の支出があった議員は49人で、そのうち政治資金規正法上、公開が必要とされた議員は、加藤勝信厚労相・武田良太元総務相・寺田稔総務相・萩生田光一政調会長・平井卓也元デジタル相など24人です。

寄付・パーティ収入があった議員

 次に寄付やパーティ収入があったのは29人で、このうち政治資金規正法上、公開が必要とされた議員は、石破茂元幹事長・下村博文元文科相・高木宏壽衆院議員・山本朋広衆院議員の4人です。

Q.この顔ぶれからわかることはなんですか?
(田﨑氏)
「自民党の中で安倍派が教団と関係が深いと思われていますが、実は安倍派以外の議員にも教団は接近していたということです」

選挙でボランティア支援があった議員

 選挙でボランティア支援があったのは、萩生田光一政調会長・岸信夫前防衛相・田畑裕明衆院議員・北村経夫参院議員・小鑓隆史参院議員など17人です。これについて、茂木幹事長によると「『ボランティアの方の思想信条は確認していないのでわからない』という回答が一定数あった」ということです。ただ、工藤彰三衆院議員は本人への取材で選挙応援を認めていますが、今回のアンケートでは関連団体の会合への出席の項目でしか名前が入っていません。

Q.不完全な点検だなという感がぬぐえませんが…
(鈴木氏)
「工藤議員は教団のイベントに5~6回出席しているはずなんですが、そこにも名前がないんです。しかも工藤議員は教団の『名称変更式典』で文鮮明教祖の呼び方を間違えてしまったのを次の大規模イベントで謝罪して言い直したというエピソードもある方で、教団の主催イベントに繰り返し出ている人です」
Q.自民党はどう思ってこれを出したんでしょう?
(田﨑氏)
「自主点検して、公表しないわけにはいけないとうことで、今回のような形になったんですが、これで鎮静化が図れると思っている自民党幹部はいないと思います」

選挙で組織的支援を受けた議員

 組織的選挙支援が公表されたのは2人です。まずはミヤネ屋でも何度も報道した井上義行参院議員です。今年7月に関連団体の会合で選挙の支持を訴えた事が明るみになり、批判を買った井上議員ですが、自民党の教団との決別指示を受け、統一教会の賛同議員を8月30日に退会しました。そして、今回新たなに明るみになったのは、斎藤洋明衆院議員です。この斎藤議員は、新潟3区で当選した衆院議員ですが、この新潟3区での選挙は熾烈を極めていて2017年の選挙では、斎藤議員は50票差で惜敗して比例復活しています。その後、統一教会と付き合いをはじめ、2021年の選挙では組織的支援を受け小選挙区で当選しています。

Q.井上議員は有名ですが、斎藤議員は初めて出てきた名前ですね。
(鈴木氏)
「日本世界平和議員連合が会合をしたんですが、そこに斎藤議員がいました。今回ちゃんと選挙の支援を受けたと公表したのは評価できます。ただ、こういう人は、もっといっぱいいるはずですので、正直者がバカを見る調査になっているような気がします」

「何かしないと批判が高まる」中のアンケート、しかし満足な結果は得られず

議員へのペナルティは?

 茂木幹事長は、議員へのペナルティとして、申告漏れがあった場合は「報告の提出後に当該教団との関係が新たに判明した場合には追加で報告してもらう」としています。また関係を改めない議員には「党の方針に従えない議員はいないと確信しているが、もしそういう考えの方がいらっしゃる場合には同じ党で行動できない」とコメントしています。

Q.自民党が“統一教会”と関係を持たないと言っていますが、その理由はなんなのでしょう?
(田﨑氏)
「岸田総理は、“社会的に問題とされている団体”という言い方しかしていません。何が問題だからというと、いろいろメディアなどで取り上げられているからだというのが本音です。説得力のある理由は示されていません。」

専門家2人が見たアンケート結果

 今回の公表内容について、田﨑氏は「自民党は早期に幕引きをしたいが、半ば諦めてしまっている」、鈴木氏は「“抜け”がとても多く、点検が非常に“雑”むしろこの結果を公表することで、国民を怒らせてしまうのでは」と見ています。

田﨑氏「自民党は半ば諦めてしまっている」

Q.今回の発表は評価できますか?
(田﨑氏)
「自民党は何かしないと批判が高まりますので、今回の点検を行ったんですが、信教の自由があるので及び腰になってしまって、満足な結果が得られないので、まずい対応です。やればやるだけ叩かれる状態です。このままではリスクが大きいので、どこかで“ケジメ”をつけられればいいのですが、その方策が見つかっていません」

鈴木氏「むしろこの結果を公表することで、国民を怒らせてしまうのでは」

Q.教団との関係を断ちますと言って簡単に断てるものなのでしょうか?
(鈴木氏)
「無理だと思います。表向きは断って、裏でつながる人が大勢いると思います。一部の議員が“統一教会”に『解散命令』が出ないようにコントロールしている節もあるので、今後解散命令に進んでいくときに誰がストップをかけるのかがポイントになるのかな?と思います。また、教団側ばかり悪者になっていますが、政治家も同じように“ズブズブの関係”だった人は、ギブアンドテイクだったはずなのに、政治家だけ『知らなかった、被害者だ』と逃げるのはおかしいと思います」

(情報ライブミヤネ屋2022年9月9日放送)

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