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冷え込む日中関係

【激論】高市首相の発言を中国が“利用”?国会議員でも誤解する『存立危機事態』の法令 安全保障に対する日本の現状と課題

■国会議員も誤解?『存立危機事態』の本当の意味

一体、何があった?

 2025年11月7日、衆院・予算委員会で立憲・岡田元外相の質問に対し、高市早苗首相は「(中国が)戦艦を使って、そして武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても『存立危機事態』になり得るケースであると考える」と回答。「武力攻撃が誰に発生することか?」との問いには、「武力攻撃が発生して、それにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命・自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」としました。

高市首相は「米軍が来援する」と明言も…

 また、台湾有事について、高市首相は「台湾に対しての武力攻撃、戦艦で行う『海上封鎖』などに対応した場合には、武力行使が生じ得る話。例えば、その海上封鎖を解くために米軍が来援をする。それを防ぐために、何らかの他の武力行使が行われる事態も想定される」と話しました。

 その後、同月10日の衆院・予算委員会では、高市首相は「最悪のケースというものを想定した答弁をしました。特に撤回・取り消しをするつもりはない。今後、反省点としては、特定のケースを想定したことについて、この場で明言することは慎む」と話しました。

存立危機事態とは?

 『存立危機事態』とは、日本が直接武力攻撃を受けていなくても、「密接な関係にある他国が武力攻撃を受け、日本の存立が脅かされ、国民の生命などに明白な危険がある」などの要件を満たした場合のことをいいます。

想定される台湾有事の構図

 想定される台湾有事の構図としては、密接な他国であるアメリカに対し中国が攻撃をした場合、日本は国会承認の上、集団的自衛権の行使が容認され、自衛隊の武力行使が可能になります。一方で、元大阪府知事・橋下徹氏は「国会議員も間違えている人が多い」と指摘します。

元大阪府知事・橋下徹氏

(元大阪府知事・橋下徹氏)
「高市首相が失敗したのは、『武力攻撃が誰に発生することか?』という質問が一番重要だったのに、はっきり言わなかったことです。一応『米軍が来援する』という言葉を入れていますが、テレビメディア等ではこの発言があまり出てきません。僕は中国問題に詳しいとされる国会議員らとも話したんですが、誰に対してなのかを質問したら、彼らは『台湾です』と言うんです。何となく、中国が台湾に攻撃することによって、台湾を守るために日本が武力行使をするようなイメージでしょう。各新聞社の世論調査でもそこがはっきりと書かれていないし、高市首相の発言に賛成する人も半分ぐらい出ているんですが、中国が台湾を攻撃=存立危機事態ではないです」

誤解される存立危機事態の構図

(橋下氏)
「中国が台湾を攻撃する➡同盟国である米軍が出てくる➡米軍が攻撃される➡日本が米軍と一緒にやる=存立危機事態です。最終的には日本のためです。だから、『台湾を助けるために存立危機事態』なんて言ってしまうと、外交的に大変な問題です。日本は台湾を国家承認していませんから、台湾=地域なので、もし日本の一部の地域に問題が起きた時、他国がその地域と一緒になって日本政府と戦うなんて言ったら、日本政府は大反発しますよね?だから、台湾を守る話なのか、アメリカと一緒にやる話なのかをはっきりさせなければいけないと思います。国会議員すら間違っている人も多かったです」

弁護士・野村修也氏

Q.誤解が生じているということですか?
(弁護士・野村修也氏)
「『米軍が来援する』という部分が抜けて、独り歩きしていると思います。存立危機事態の法令を知っている人からすれば、当然『米軍が何らかの形で武力攻撃を受けたとき』と想定しています。さらに、武力行使の条件もあって、『必要最小限度の武力行使であること』『他に手段がないこと』がくっついた厳格な解釈がありますから、それを知っている人には普通に聞こえましたし、そのことを前提にすれば1ミリも間違っていません。でも、中国がはっきりしていない所を利用している部分もあって、うまく突いて日本を動揺させる作戦を取っているという見方もあると思います」

(橋下氏)
「存立危機事態を設けた時に一番問題だったのは、“密接な関係にある他国”がどこなのか、はっきりさせなかったことです。僕は安倍元首相と議論して、『アメリカなのかイギリスなのかオーストラリアなのか、条約関係にある国にしないと、その部分は違憲です』と議論はしました。ただ、台湾は国ではなく地域ですから、絶対に条約は作れません」

Q.日本と台湾は友好的な関係を築いているので、「台湾を放っておくの?」という思いはありますよね?
(橋下氏)
「でも、日本は台湾防衛のために何もできないんだから、『台湾のために何かやります』という誤ったメッセージは、台湾にとっても申し訳ないことです」

■中国に行った=負け?他国の状況は

日中の動き(11月18日現在)

(野村氏)
「日本と中国の話ばかり見ていますが、ここ数年、実はヨーロッパと中国も同じことをやっています。リトアニアに台湾の代表事務所を造ったことで、台湾を認めた形になったので、中国はヨーロッパに対して『リトアニアを排除せよ』というふうに言いました。今、EUはリトアニアを守るために結束していて、筆頭のドイツはずっと毅然とした態度で向き合ってきたので、中国はドイツの人を受け入れなかったんです」

(橋下氏)
「ただ、EUは集団安全保障体制で結束して守り合うし、実際に核を持っている国もありますが、日本にはありません。僕は、法律的には存立危機事態に当たるんだから、力があるなら、勝つためのケンカなら、意図的にやったらいいと思います。でも、結果どうなったかというと、日本のほうから局長が中国に馳せ参じているわけです。この時点で大負けではないですか?」

(野村氏)
「いや、それはないでしょう。中国との交渉は、中国が来ないので、どこの国もみんな行きます。ドイツは政権交代して、半年間ずっと行かなかったけど、呼んでも来なかったから行って、ケンカしています。でも、世界中の誰も『負けた』なんて言っていません」

(橋下氏)
「いや、そんなことはないです。日本は、中国軍や総領事が罵詈雑言を言ってきているわけなので、ケンカをするんだったら、まずは『ペルソナ・ノン・グラータ』や追放なり何なりすべきなのに、今の日本はできないんです。できないんだったら、今のタイミングではなく、ちゃんとできる状態になってからケンカを吹っかければ良かったんです」

■日本の防衛力に疑問「力のないときには吠えるべきではない」

橋下氏の言う“力”とは?

Q.橋下氏はご自身のXで「力がないときにはキャンキャン吠えるべきでない。吠えずに着実に力を蓄えることに集中すべき」と投稿していましたが、“力”とは一体何でしょうか?
(橋下氏)
「防衛力です。だから、経済力・軍事力・外交力です。1990年代、台湾海峡危機で中国はアメリカから威圧を受け、中国国内で『行ってしまえ』という声と『まだ力がないから我慢して力をつけよう』という声が分かれた時に、中国の鄧小平(とうしょうへい)氏は力をつけることにして、約30年間も我慢して力をつけて、習近平氏になってから奮発有為で牙を剥いているわけです。だから、力をつけるまではキャンキャン騒がないほうが良いと言っているんです」

Q.防衛費は上げたほうが良いと思いますか?
(橋下氏)
「しっかり上げたほうが良いです。でも、それを抑止力だ、ケンカだ、と今やっても負けるんだから、今は着実に力をつけていくのが政治の力だと僕は思います」

激論バトルを交わす二人

Q.仮に台湾有事が起こった時、邦人保護はどうするんでしょうか?
(橋下氏)
「それを本当に考えなければいけません。まだ日本は台湾にいる邦人を救出する方策を持っていませんし、もし米軍と一緒に日本が武力行使をやって、沖縄方面・南西諸島が攻撃を受けた場合に、沖縄の人たちをどう避難させるかの避難計画すらはっきり持ってないんです。日本は攻撃のほうだけ威勢よく言って、逃げたり保護したりが物凄く欠けています」

Q.もし海上封鎖されて、日本には食料もエネルギーも入ってこなくなった場合、どうなりますか?
(橋下氏)
「日本の存立を脅かされるような状況になれば、武力行使もあり得ます。ただ、中国に対して『毅然たる対応』と言うのは良いんですけど、今回も最終的に日本政府は『これまでの政府見解と同じ』という収め方をしたので、同じなら今までの通り『総合判断でやります』と言っておけば良かったんです。高市首相は発言を撤回しないとは言っていますが、一国の総理が岡田氏の質問ぐらいの挑発に乗ってしまうなら、いざ本当にギリギリの判断をする時に抑えてくれないのではないかという心配があります。安倍元首相でも総理の時は総合判断で、台湾の話は誤魔化していましたから」

(野村氏)
「私は、この発言をこのタイミングでした背景には、トランプ大統領と習近平国家主席が『G2』と言ったことにあると思います。結局アメリカが、経済的に有利な形を引き出せるなら場合によっては台湾問題には目をつぶるという声が聞こえてきているからこそ、アジアの安全保障を考えている人たちにとって、安倍政権と同じではダメだと思ったんだと思います」

(橋下氏)
「そんな大戦略があるんだったら、こんなに政府としてあたふたしないでしょう。台湾有事の時に米軍が出るかどうかもわからないのに、日本だけが前のめりに行くのは政治的にはダメです。『米軍と一緒にやります』と言えば、日米同盟の関係で中国だって文句は言えないのに、それを台湾有事に絡めてしまった。岡田氏に何を言われても、『どの国であろうが、どこから攻撃を受けようが、我々は米軍と一緒にやります』というメッセージで止めておけば良かったんです」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年11月18日放送)

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