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“脱マスク”開始は“夏”がベスト!?

【独自解説】“脱マスク”のための3条件 「暑いから」だけじゃない!「マスクをはずすなら夏がベスト」のワケを専門家が解説

 6月17日、大阪府の吉村知事は「無症状の新型コロナウイルスの濃厚接触者の待機期間を廃止」するよう国に要望しました。現状に見合った“感染対策”とはどのようなものなのでしょうか?そして“脱マスク”は一体いつになるのでしょうか?静岡県の専門家会議メンバーで浜松医療センターの感染症管理特別顧問を務める、矢野邦夫(やの・くにお)医師が解説します。

濃厚接触者“待機措置”は廃止できるか?

大阪「濃厚接触者の待機廃止」を要望(6月17日)

 6月17日午後、大阪府の吉村知事は「無症状の“新型コロナ”濃厚接触者に対する待機期間の原則廃止」を国に要望しました。6月14日に開かれた大阪府の専門家会議において、感染症の専門家から「マスクなどで対策すれば、濃厚接触者が日常活動をしても感染症のリスクは低い」という意見が出されたことなどから、症状がある人や高齢者施設の入居者、職員などを除く濃厚接触者について、現在国が濃厚接触者に対して求めている「原則7日間の待機期間」を“廃止”するよう国に求めたのです。

浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師

Q.吉村知事は「無症状の濃厚接触者に対する待機期間の廃止」を要望しましたが、これについてはどう思いますか?
(浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師)
「私は賛成です。ただ、無症状の濃厚接触者は待機する必要はないと思いますが、濃厚接触者の一部は感染しますし、症状が出る1日前・当日・次の日に大量のウイルスを出すため、マスクは着用して頂いて、症状が出たらお休みして頂くという条件付きで、無症状の方の自宅待機については、もう廃止でいいかと思います」

「#自分だけノーマスク岸田」がTwitterでトレンド入り

 そして“脱マスク”については、まだ慎重な意見も多くあります。後藤厚労相は、6月14日に「マスクの着用も含めて、基本的感染対策を緩和することは現時点では現実的ではない」とし、岸田首相も、5月31日の段階で「マスクを外すのは現実的ではない」と発言していました。しかし、岸田首相が5月にイギリスやシンガポールを訪れた際に、“マスク無し”で相手国の要人に接触したことについて「海外出張先の相手国のルールに沿って対応した」としたにもかかわらず、その後、日本国内でも海外の要人とマスク無しで接触し、会話もあったということを受け、Twitterでは「国民にマスクをさせておいて自分はしないのか」という批判が殺到。「#自分だけノーマスク岸田」がトレンド入りました。

Q.外国からの観光客もこれから多く日本に招くことになり、現在はその方々にもマスクの着用をお願いしていますが、これはどうでしょうか?
(矢野医師)
「私は7月になればマスクの着用はやめた方がいいのではないかと思っています。7月になると熱中症のリスクもありますし、今はウィズコロナもありますよね。重症化しなければいいわけですから、ワクチンのブースター接種とプロテアーゼ阻害薬という2つのテクノロジーを手に入れたのですから、もうそろそろマスクをやめていいのではないかと思っています」

“脱マスク”はいつできる? クリアすべき3つの条件

ワクチンの接種状況(首相官邸HPより/6月16日公表)

 矢野医師は“脱マスク”には、クリアすべき条件が3つあるといいます。まず1つ目は「コロナワクチンの3回目接種の普及」です。特に高齢者の接種率は「90%以上」にするということです。6月16日時点の資料では、65歳以上の高齢者の3回目の接種率は89.5%です。

Q.高齢者についての3回目接種率はほぼ9割です。もうクリアしていると考えても良いですか?
(矢野医師)
「そうですね。90%以上あればかなり感染者を減らせると思いますので。希望としては接種率100%なのですが、接種できない方もいらっしゃるので、これでいいと思います」

国産飲み薬 6月22日に承認審議される

 2つ目の条件は、「飲み薬の普及」です。“コロナ”対応病院で容易に使用できる環境を整える必要があるということです。期待されている、塩野義製薬の主に無症状・軽症者向けの「新型コロナ医療薬」は6月22日、厚労省の専門部会で承認の可否が審議されるということです。

Q.国産の飲み薬ですが、期待していいのでしょうか?
(矢野医師)
「私は大変期待しております。これは有効性がかなり期待できるのと、無症状の方にも使用できるのでリスクのある方にメリットがあると思います」

 3つ目の条件は、「ウイルスの弱毒化」です。一般的に感染症ウイルスは、年月をかけて弱毒化していくということです。

Q.年月をかければ、ウイルスは弱毒化していくのですか?
(矢野医師)
「そうですね。今まで変異株がたくさん出て、感染力が強いウイルスが感染力の弱いウイルスを抑えつけてきました。例えば、重症化するウイルスと重症化しないウイルスがあるときに、重症化しないウイルスの場合は、感染者は無症状もしくは軽い症状で出歩くので、いろんな方々に感染させてしまいます。しかし、重症化させるウイルスの場合、感染者は家に閉じこもるか入院をして誰とも会わないため、感染力が全然違うわけです。確かに重症化する可能性のあるウイルスは出るかもしれないんですが、それは必ず重症化しないウイルスによって抑え込まれるはずなので、重症化するウイルスが流行するとはとても思えないです」

Q.本当にそんな理想の形になっていくのか不安もありますが?
(矢野医師)
「今までの、この2年間で変異株の闘いをずっと見ていると、重症化させる傾向のあるウイルスより、やはり軽い症状のあるウイルスのほうがはびこるので、弱毒化していくと思います」

Q.無症状でも後遺症が残るという話があるのですが、これはどう考えますか?
(矢野医師)
「ワクチンを打つと後遺症のレベルが少し減ることも分かっていますので、ワクチンの接種率を上げておくことによって、後遺症を減らすというのが一つの手段かなと思います。あともう少し、病院側も後遺症の方々に対する医療を拡充する必要もあるのかなと思っております」

暑いからだけじゃない!“脱マスク”を始めるなら「夏」のワケ

“脱マスク”始めるなら「夏」のワケ

 矢野医師は「“脱マスク”を始めるなら夏」としていますが、これは単に暑いからというわけではないと言います。「脱マスクを始めたら、コロナを含むさまざまな感染症患者は増加するが、夏は病院の閑散期なので対応できる。また、子どもたちがマスク生活で失っている、“かかるべき病気”の感染機会を早く取り戻すことも重要」だとしています。

Q.マスクを取ると様々な感染症患者というのは増えるのですか?
(矢野医師)
「恐らく増えると思いますね。マスクを外した1~2か月後に、この2年間、流行できなかったウイルスが一気に飛び出してくると、その中の一部で重症の方が出るわけで、それを冬の多忙な時期に合わせたくないんです。昔から12月、1月、2月は脳梗塞、心筋梗塞や肺炎で病院はいっぱいです。そういうときにマスクを外したことによる感染者の増加を合わせたくないんです。だから今がチャンスかなと思います」

Q子どもたちがマスク生活で失っている“かかるべき病気”というのは?
(矢野医師)
「この2年間、ヘルパンギーナとか手足口病の流行が出ていません。恐らくサイトメガロウイルスという病原体も流行できていない。これは子どものころに感染すべき病原体なので、この機会を失っているのは非常にまずいと思います。子どものころに感染すれば症状が軽く済むのに、年齢が上がってから感染すると重症化する可能性があるので、やはりその機会を与えないといけないと思っております」

厚労省の「マスク着用基準」

 厚労省はマスク着用基準を公表しています。屋外で距離を保てている場合や、会話がほとんどない場合、屋内でも2メートル以上の距離が確保できている、または会話がほとんどなければマスク着用の必要はないとしています。そして、2歳以上の未就学児に関しては保育所内などを含めて一律の着用は求めておらず、小学生から高校生の就学児は体育の授業や登下校では着用を求めていません。

Q.エレベーターの中で知らない人と乗り合わせた場合は話をすることはないと思いますが、これはマスクをしなくても良いですか?
(矢野医師)
「話をしないのであればマスクはしなくていいです。やはりマスクが必要ないときはやめておいたほうがよろしいと思います」

「旅行支援」全国に拡大で支援額“引き上げ”

「旅行支援」全国に拡大へ

 そんな中、政府の「旅行支援」が、感染状況の改善が確認できれば、7月前半に地域ブロックごとから全国に拡大される方針だということです。期間は8月末まで、お盆期間は対象外ということですが、補助金も公共交通機関を利用する場合は上限8000円になります。クーポンについても、平日3000円、休日1000円になるということです。

Q.「旅行支援」などの利用で気をつけるべきことは?
(矢野医師)
「私はこういった県民割やGoToキャンペーンに賛成です。ただ、人の動きが増えれば必ず感染者が増えるので、重症化する方にターゲットを絞ってガードを固めればいいと思います。ある程度、感染者が増える覚悟でこういった旅行をされるのがいいと思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年6月17日放送)

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