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陳情の動きが日本各地に広がっている

【独自解説】“統一教会”が議会に『関係遮断しないで』陳情書 「統一地方選挙に向け議員への圧力の面も」教団の思惑を鈴木エイト氏が解説

 文化庁が2度目となる「質問権」を行使し、調査を進めている“統一教会”の信徒などが、「特定の宗教法人との関係を断たないよう」求める陳情書を、複数の地方議会に提出していることがわかりました。各地の議会は、どう対応するのでしょうか?ミヤネ屋は栃木県議会に陳情書を出した人物を直撃取材。地方で今何が起きているのか、“統一教会”を20年にわたり取材してきた、ジャーナリストの鈴木エイト氏が解説します。

「統一地方選に向け、議員へ圧力」 全国で“陳情”の動き広がる

“統一教会”久留米家庭教会の信徒が「陳情書」提出

 世界平和統一家庭連合・久留米家庭教会・信徒代表から、福岡・久留米市議会宛てに届いたのは「民主主義・立憲主義の基盤である思想・良心の自由、請願権等を守るため」の陳情書で、その要旨は、「特定の宗教法人及び関連団体との関係遮断を宣言・決議しないこと」、「特定の宗教に対する信仰の有無を問うたり、関係を調査等しないこと」とありました。

ジャーナリスト 鈴木エイト氏

Q.この陳情書を見たとき、どのように感じましたか?
(鈴木氏)
「来年4月の統一地方選に向けて、これまで関係性を持って、支援してきた議員に対しての圧力という面もあるのではないか、とまず思いました。この手の意見書、もしくは陳情が意見書として議会で採択された場合は中央に送られるので、地方議員に対してだけではなく、国会議員に対しての圧力にもなるのではないかと思います。こういう形で地方議会に陳情を出して中央に送る手法というのは今回に限らずこれまでもあって、例えば、『家庭教育支援法』の制定を求める陳情書を全国の地方議会に、“統一教会”の関連政治団体を使って出してきているんです。こういうやり方というのは、“統一教会”の特徴的なものだと思います」

Q.“統一教会”問題に触れると、よく耳にする「久留米家庭教会」とはどのような所なのでしょうか?
(鈴木氏)
「去年の衆院選の時にも特定の候補者を支援するような集会を行っていましたし、2013年の参院選では安倍元首相が推していた自民党の特定の候補者を、当時の菅官房長官がこの久留米教会に極秘に派遣したといわれている所なんです。政治と“統一教会”の関連を見るところで非常に重要な拠点になっている所だと思います」

陳情書提出について久留米家庭教会は…

 陳情書を提出したことについて、久留米家庭教会は「当教会の信徒が陳情書を提出したことは承知していますが、あくまで信徒個人が自らの思いから提出したものと聞いております。当教会としては今回の件に関知しておらず、よってご質問を含め、お答えする立場にありません」と回答しています。

Q.この回答はどう思われますか?
(鈴木氏)
「“統一教会”は、これまでの霊感商法もそうですが、『教団が組織ぐるみでしてきた』と指摘はされているのですが、教団側の回答や説明は全て『信徒個人が行ってきた』と信徒に投げてしまうんです。今回も、陳情書の内容がほぼ同じということからやはり教団やその関連政治団体を含めて組織的に行っている疑いが強いと思います」

福岡・久留米市議会の対応

 久留米市議会の対応について、久留米市議会の森崎市議は「議会として扱う予定はない」、「『請願』は議員を通して出され審議するが、『陳情』は受理するだけ」としています。関係遮断も、調査もしないのかと問うと、公共施設を利用した勧誘の有無や清掃ボランティア登録の有無を把握するために調査中だということです。

Q.今回、教団は「陳情」を選んでいますが、「請願」を選ばなかった理由はあるのでしょうか?
(鈴木氏)
「やはり現在の社会状況からして、なかなかここを仲介するような議員が見つからなかったのではないかと思います。それで請願という形がとれずに、陳情という手段を取ったのだと思います」

Q.今までは、仲介できる議員が居たということでしょうか?
(鈴木氏)
「これまでも陳情書のケースも多かったのですが、紹介議員がいて請願を形で出してきた事例も数多くあります」

Q.自民党としては地方議員に対して、なぜ「教団との関係を断絶しろ」とは言えないのでしょうか?
(鈴木氏)
「国会議員に比べて地方議員は関係がかなり密接で、個別の人間関係なども構築しているケースもかなり多いです。また、特に選挙では数百票、数十票の差で通るかが決まるケースも多く、教団側も政治家を頼りにしているし、候補者も教団を頼ってきたというこれまでの経緯があるので、そこはなかなか切りづらいのが実情だと思います」

各地で確認されている陳情書(「ミヤネ屋」調べ)

 ミヤネ屋の取材では、少なくとも67の地方議会で同様の陳情書が確認されています。神奈川・川崎市、愛知・知立市、栃木・佐野市の陳情書を比較すると、川崎市議会議長宛ての文書のタイトルは「民主主義と立憲主義の基盤である宗教の自由・請願権等を守る為の陳情」とありますが、知立市議会議長宛てものは「民主主義・立憲主義の基盤である思想・良心の自由、請願権等を守る為の陳情」とあり、さらに佐野市議会議長宛てのものは、「民主主義・立憲主義の基盤である思想・良心の自由、請願権等を守るための陳情」とあり、ほぼ同じ内容になっています。

「陳情書」の提出者を独自取材 「ひな形」を認める発言も

栃木県議会含む26議会に「陳情書」を提出した増渕代表

 栃木県でこのような陳情書を作成し、県内全26議会に提出したという、元栃木県議・基本的人権を守る栃木県の会・増渕賢一代表は、陳情を出した理由について「全く人権を無視した報道と、世論に迎合する国会議員を見て、腹立たしさが募り、陳情を出すに至った」としています。

 また、増渕代表は「栃木県の政治家は、直接教団の関連団体と接触はないが、全て間に私が入っている。栃木県では“統一教会”は私のテリトリーだとみんな知っている」としていますが、本人は信者ではなく、「今回の陳情と、“統一教会”とは全く関係がない」と、主張しています。

「陳情書」がなぜ同じ文面なのか問うと…

 それでは「なぜ、陳情書の文面が他県と同じ内容なのか」と訊ねると、増渕代表はこの陳情書は「作成は秘書、校正は自分がした」と言い、増渕代表が秘書に対し「ほら、お前の責任だぞ。私の思いに沿って書いてもらったはずが・・・ひな形があったんだな?」と聞くと、増渕代表の秘書は「はい…」と、ひな形があったことを認める発言があったということです。

Q.「ひな形」があると、組織的なものではと疑ってしまいますが?
(鈴木氏)
「『家庭教育支援法』の制定を求める意見書も、ほぼ同じ内容のものが各地方議会で、ここ数年出回っています。それと全く同じように、今回も同じテンプレート・ひな形を使ったということで、文面をあえて細かく変えて出すっていう意識自体がなかったと思います。やはり“統一教会”の特徴的なやり方だなと、改めて感じました」


 今回の陳情書に関して各議会の対応は、「採決せず」、「議長預かり」、「委員会で不採択」と、多くの議会は採決に至っていません。

Q.議会で扱わないということが、議論をうやむやにしてしまうこともありますよね?
(鈴木氏)
「こういう教団と関係を断つということは当然必要なことですが、一方で中にいる信者たち、特に2世の方たちが社会から偏見を受けたりしないように、そういう方たちの人権を守ることも必要です。しかし、こういう形で教団が組織的に、組織防衛のために行っているであろうという形に乗っかってしまうと、問題だなと思います」

Q.改めて、地方議員に求めたいことはありますか?
(鈴木氏)
「教団とこれまでの関係性を公表して、関係を断つのであればしっかりと断つ。そして実際に教団の中に行って、例えば偏見をもたれたり、社会から差別を受けているようなケースがあるのであれば、それは個別にその人の人権を守るために各政治家が動く。ここはきっちり問題を分けて取り組んでほしいと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」 2022年12月15日放送)

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