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　SNS上に相次いで投稿・拡散され、社会問題となっている“迷惑動画”で、ついに逮捕者が出ました。回転寿司チェーン「くら寿司」の店舗で、しょうゆ差しを口につける様子を撮影し、SNS上に投稿。店の業務を妨害したとして、21歳の男ら3人が逮捕されました。3人は「面白いと思ったから」という趣旨の供述をしているということです。この事件について、元大阪地検検事の亀井正貴弁護士が解説します。

犯行動機は「面白いと思ったから」

　2月3日、愛知県名古屋市の「くら寿司 名古屋栄店」で、男がしょうゆ差しの注ぎ口を口に付ける様子を撮影した動画が、SNS上に投稿されました。事件発生翌日の2月4日、「くら寿司」は被害届を提出、防犯カメラの映像などを警察に提供していました。2月5日、この迷惑動画の撮影と投稿をした19歳の少年が「威力業務妨害の疑い」で逮捕されました。さらに3月8日、住居不定・無職の吉野凌雅容疑者（21）と、自称15歳の少女も同容疑で逮捕されました。警察は3人の役割、犯行に至った経緯などを慎重に捜査しています。

Q．「威力業務妨害」とは、どういったものですか？
（亀井正貴弁護士）
「人の自由意思を制圧するような行為をして、営業を妨害するような行為です。つまり、しょうゆ差しに口を付けることによって、恐らく一般ユーザーにとって『あの店は衛生に問題がある』と、お店に行く自由意思を制圧され、従業員についてもあの衝撃的な行動で自由意思を制圧されるということです」

Q.実際に迷惑行為を行った吉野容疑者だけではなく、撮影や投稿を行った少年、一緒にいた少女も同じ「威力業務妨害」に問われるのですか？
（亀井弁護士）
「そうです。これは撮影・投稿自体が実行行為ですので、当然、被写体になった人間と共謀の上でやっていますから逮捕されます。少女については恐らく、事前に『こういうことをやろう』と相談したか、なんらかのサポートをした、そういう容疑で逮捕したのではないかと思います」

　捜査関係者によると、逮捕された3人は容疑を認め、犯行の理由については「面白いと思ったから」という趣旨の供述をしているということです。これまで「迷惑をかけて申し訳ない」と供述していますが、店への直接の謝罪はないということです。

　今回の逮捕について、亀井弁護士は「防犯カメラの映像など、物的証拠が保全されていた点で立件が早かった。企業の『厳正に対処する』とのアナウンスだけでなく、現実に身柄拘束にまで至った事実が世間に与えた衝撃は大きく、この種の事案の発生を抑制する予防効果も大きい」としています。

Q.「くら寿司」の厳正な対処は、今後の抑止効果も考えてのことでしょうか？
（亀井弁護士）
「はい、この効果は非常に大きいと思います。通常は『いたずらだろう』ということで、在宅での不起訴が想定されるのですが、逮捕にまで至るというのは、私自身もかなり衝撃を受けました」

迷惑行為は「犯罪」　今後の対策は？

　3月7日、くら寿司株式会社は、「当社は2月3日の事件発生後、速やかに被害届を提出し、当社のカメラシステム等を活用して収集した情報を提供するなど、全面的に捜査に協力してまいりました。今回の逮捕をきっかけに、こうしたお客さまとの信頼関係に基づく仕組みを根底から揺るがす迷惑行為が『犯罪』であるということが広く世の中に認知され、今後、模倣犯がなくなることを切に願います（一部抜粋）」とコメントを出しています。

「くら寿司」では3月2日から、システム改修した「新AIカメラシステム」が全店舗に導入されています。レーン上に設置しているAIカメラが、迷惑行為などの不審なカバーの開閉を検知します。すると、本部で不正確認のアラートが鳴り、担当者が該当店舗の責任者への電話連絡を行います。異常が検知された皿を速やかに撤去し、該当テーブルの客へ確認の声かけを行うということです。

Q.今回は刑事で逮捕されていますが、民事でも争うことになるのでしょうか？
（亀井弁護士）
「もちろん、これは損害賠償請求の対象になります。未成年の場合、親も親権者としての監督責任を問われる可能性があります。営業損益、利益の減少を立証できれば数千万円や億単位でも請求できる理論は立つのですが、一般的にはそれは難しいので、無形損害・慰謝料・実損で数十万～数百万円単位の請求になると思います」

（「情報ライブ ミヤネ屋」　2023年3月9日放送）