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全社的にハラスメント“まん延”か

【検証】中居氏の性暴力・口封じ・上納文化「こんな仕事の仕方は時代錯誤」 フジ社内にハラスメント“まん延”か 「メディア業界全体で、業務の必要と認められない飲み会は、やめていかなきゃいけない」

 中居正広氏の女性トラブルに端を発したフジテレビの一連の問題で、第三者委員会は中居氏による性暴力や口封じに当たりえる行為もあったと厳しく断罪しました。企業風土にまで踏み込んだ調査内容を、橋下徹氏・野村修也氏の二人の弁護士と共に検証します。

■第三者委員会が中居氏による性暴力を認定 「CXの業務の延長線上にあった」

第三者委員会・竹内朗委員長

 元タレント・中居正広氏の女性トラブルを巡るフジテレビの問題で、2025年3月31日に行われた第三者委員会の報告会見。述べ394ページに及んだ調査報告書に記載されていたのは、衝撃の言葉でした。

(第三者委員会・竹内朗委員長)
「当委員会は2023年6月2日に女性Aが中居氏のマンションの部屋に入ってから退室するまでの間に起きたこと、本事案について、女性Aが中居氏によって性暴力による被害を受けたものと認定しました」

“フジテレビ社員B”の関与について

 第三者委員会は、中居氏と女性Aとの間に、性暴力があったと認定し「重大な人権侵害が発生した」とし、さらに女性Aが、フジテレビの元アナウンサーであったことが公表されました。

中居氏からB氏へのメール

 そして、これまで“鍵”を握っているとされていたのが、“フジテレビ社員B”の関与です。2023年5月、中居氏から社員Bにバーベキューを開催する旨のあるメールが送られました。中居氏は社員Bに対して、フジテレビのアナウンサーを集めるよう求め、社員Bは女性Aなど、女性スタッフを招集。

 そして、中居氏が所有するマンションに移動する際、女性Aは社員Bに「仕事でプラスになる」と言われたといいます。中居氏と男性タレント2人などを含む、9人ほどで行われたバーベキューで、この日、女性Aは中居氏と連絡先を交換し、お礼のメールを送信しました。

複数人での食事会だと思っていた…

 しかし、この二日後、中居氏から女性Aに「今晩、ご飯どうですか?メンバーの声かけてます。また、連絡します」とメールが届きます。女性Aはこれまでの経験から複数人での食事会だと思い、「今夜暇だ」と送りました。参加できるメンバーを探していると伝えてきた中居氏ですが、実際には誰にも声をかけていなかったといいます。

女性Aとタレントの間に権力格差があった

 その後、中居氏が提案したのは、バーベキューを行ったマンションでした。女性は、少し嫌な気がしたものの、誘いを断ることで今後の仕事に差し障ると考え、行くことにしたといいます。そして、この夜、女性Aは中居氏から性暴力を受けたと、第三者委員会は認定しました。

(竹内委員長)
「業務上の人間関係であったこと。仕事上の関係で、交際関係ではなかった。著名なタレントと、入社数年目のアナウンサーということで、そこには権力格差があった。CXの“業務の延長線上にあった”という認定をしております」

社長への報告は事案発生から2か月後

 そして、これをフジテレビ側が把握したのは、4日後のことでした。調査報告書によると、女性Aの異変に気付き、声をかけたフジテレビの社員は、女性Aが中居氏から性暴力を受けたと認識。事案の内容と女性Aの心身の状況から、“自死の危険性”を強く感じたといいます。

 しかし、港前社長に報告が上がったのは、事案発生から2か月後のことでした。上層部に報告しなかった理由について、フジテレビ社員は『プライベートな男女間のトラブル』と認識していたとのことです。

中居氏は社員Bに相談

 一方、女性Aは6月2日の出来事をきっかけに、摂食障害などで入院したことを、中居氏にメールで伝えていました。そして、その事を中居氏は社員Bにメールで相談していたといいます。

 そして中居氏は社員Bに見舞金100万円を女性Aに渡すようお願いしましたが、女性Aは受け取りませんでした。第三者委員会の報告書には、『女性に対する口封じ、二次加害行為とも評価し得る』と書かれています。

 その後も中居氏は、フジテレビの番組に出演を続け、フジテレビは、トラブルを把握したあとも1年半にわたって、中居氏が出演する番組の放送を継続していまいた。

■フジテレビの企業風土についても言及「全社的にハラスメント被害がまん延していた」

過去の“類似事案”の有無について

 一方、第三者委員会はフジテレビの企業風土についても言及し、過去のフジテレビによる“類似事案”の有無についても報告しました。

 指摘されたのは2021年に行われた『スイートルームの会』で中居氏が女性アナウンサーに対し、膝や肩などに触れる・顔を近づけるなどの行為があり、これについて第三者委員会は“セクハラ”と認めました。さらに、このときのスイートルーム代約38万円は、社員Bが、番組のロケ施設等使用料の名目で“経費”として会社に請求していたといいます。

 そして今回、新たに“10年以上前”の事案も明らかになりました。こちらも、関与していたのは社員Bです。B氏に誘われた女性社員が番組出演者の男性と二人きりにさせられ、その男性が下半身を露出したといいます。

「全社的にハラスメント被害がまん延していた」

 今回の被害女性Aさんの問題で、企業としての責任を厳しく指摘された件についてフジテレビ・清水賢治社長は―

(フジテレビ・清水賢治社長)
「元社員が性被害を訴えていたにも関わらず、上司である局長から当時の社長まで、“人権問題と捉えなかった”こと、被害女性に対し『会社は自分より中居氏を守った』と思わせてしまったこと、こうしたことを通じて、被害女性をどれだけ傷つけてしまったかと思うと、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 企業としての責任を認め被害女性への謝罪を述べました。一方で、第三者委員会はフジテレビについて「全社的にハラスメント被害がまん延していた」と指摘しました。

 そして、フジテレビの第三者委員会の報告書の公表・会見を受け、被害女性の元女性アナウンサーがコメントを発表しています。

(元アナウンサーの女性のコメントより一部抜粋)
「昨日、第三者委員会の調査報告書が公表されてその見解が示されほっとしたというのが正直な気持ちです。他方で本事案後の中居氏と編成部長であったB氏とのやりとりや、フジテレビの当時の港社長らの対応など、この調査報告書で初めて知った事案も多く、改めてやり切れない気持ちにもなっています。私が受けた被害は一生消えることはなく、失ったものが戻ってくることはありません」

■「こんな仕事の仕方は時代錯誤」今後フジテレビは再生のためにどうしていくべきか―

中居氏側は守秘義務を解除しないと回答

 被害に遭われた女性と中居氏の双方からヒアリングを行いましたが、女性側は守秘義務の全面解除に応じましたが、中居氏側は守秘義務を解除しないと回答しているといいます。

橋下徹弁護士

(橋下徹弁護士)
「今回、第三者委員会の報告書で、一番の核心部分である中居さんのマンションでのトラブル内容を、しっかりと事実解明・ヒアリングしなきゃいけないと思っていたんですが、第三者委員会は、そこはヒアリングできていないんです。性暴力として認定はしたけれども、核心部分のところについては、両方からヒアリングができていない」

アナウンス室のメンバーは適切な対処だったか

Q.社員Bが「仕事でプラスになる」と言って飲み会に誘ったことについてどう思いますか?
(橋下徹弁護士)
「メディア業界全体で、業務の必要と認められない飲み会に参加させられるのは、やめていかなきゃいけない。Bさんが『仕事になる』と言ったことは、かなりアウトのルール違反の感じがします。ただ、この報告書の中で、抜けていると思っているのが、女性は中居さんから誘われたとき、なぜ直属の上司に相談しなかったのか。報告書の中にも、直属の上司である“アナウンス室のメンバーは適切な対処をしていた”ということになっている。じゃあその上司に、中居さんから2人で飲もうと言われて、しかもそれがマンションだという報告・相談というものが、なぜ無かったのか」

野村修也弁護士

(野村修也弁護士)
「それは日常的にアナウンス室が上司として機能してなかった。コンプライアンス室も機能してなかった。これを救ってもらえる関係という構造になっていないのが認定されているわけです」

(橋下弁護士)
「初動で相談したときに、普通だったら、2人きりの部屋・マンションに行くという話を聞いたら、上司はまず止めますよ。アナウンス室のほうが、最初の相談で機能していたかどうかというのは、報告書には書いてないですよ」

(野村弁護士)
「でもそこは、結局、相談に行ったあとの歪みを見ていけば、この会社のいびつな構造が分かりますよね。つまり、“初動はうまくいっていた”と報告されているのに、なぜそれが、港社長のところに繋がっていかないかというと、その間の大きな壁になっている編成局長と編成幹部Bさんという人がいるわけです。この人たちが、社員に寄り添わないから、相談するに値しないって思っているんですよ」

ヒアリングしていないのが問題

Q.港前社長らが、女性Aが自死をする危険性もある中で、“プライベートの男女間のトラブル”に落とし込むという対応をしましたが…
(橋下弁護士)
「決定的にフジテレビが今回、ガバナンス欠如だったのは、こういう重要な評価・判断するときに、中居さんにも、女性に対してもヒアリングしていないんです。中居さんの番組を継続しようとしたときも、中居さんから一切、詳しくヒアリングしていない。ここが今回のフジテレビの最大の間違い」

これからのフジテレビについて―

Q.これからフジテレビは、視聴者やスポンサーからの信頼を得るためにどうしていくべきですか?
(橋下弁護士)
「フジテレビの飲み方の文化、まずそこは徹底的に改めなきゃいけない。港さんはじめ経営陣は、人間関係を円滑にするために、アナウンサーを連れて、そういう飲み会を開くこともあると言われていましたが、ここは厳格に考えなきゃいけない。一切飲み会ダメだとはならないけど、どういう飲み会だったらいいのかをしっかり明記して、それ以外は行かないようにする。でもそういう社風にするためには、一回ゼロにしてから立て直さないと、修正じゃ、中々変わらないと思いますね」

Q.野村さんはどうお考えですか?
(野村弁護士)
「出世する人は、大物タレントとの密な関係を作って、社員をそこに連れて行って接待をしながら社員にも良い思いをさせるという構図を作ってきたと思うんです。こんな仕事の仕方は時代錯誤だとしなければいけない。あともう1つ大事なのは、再発防止策を、色々書いていますが、やや作文に見えるんですよね。良い事は書いていますが、本当に出来るかどうかは、一人一人が変えていかないと、組織って変わっていかない。だから、良い作文が出来て、皆に報告したというのは、宿題をやっただけですから、そうではなくて、実体を伴ったものにしていくことが大事だと思います」

(「情報ライブミヤネ屋」2025年4月1日放送)

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