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【独自解説】財政難・京都市の“苦肉の策”『高さ規制の緩和』『空き家税』 専門家は「徴収コスト」を指摘…その効果は?
2023年4月24日 UP
実質的な借金残高が約8420億円と、深刻な財政難に陥っている京都市は、21年にわたり毎年赤字を穴埋めするために借金返済の基金などを取り崩してきましたが、先日、2023年度の予算案でようやく収支均衡を達成し、基金の取り崩しなどを回避できると発表しました。また、京都市は、新たに財政立て直しを図るべく、これまでの歴史を覆すような“苦肉の策”を打ち出しました。
京都市の財政改善の対策のひとつが、「高さ規制」の緩和です。京都市では、2007年の「新景観政策」により“京都らしい”街並みを守るため、屋外の看板や点滅するネオンの禁止、建物の高さの制限などが設けられましたが、今年3月の「審議会」において、京都市内の西側や京都駅付近などで建物の高さ制限を大幅に緩和する案を議決しました。中でも市内東部の山科区の一部エリアでは、条件を満たせば高さ制限が完全撤廃され、タワーマンションが建つ可能性もあります。京都市の門川市長は、「結婚期、あるいは子どもが誕生した時に、住宅を求めて(京都市から)出ていかれる傾向がある。若い人が住みやすい、購入しやすい住居を創造していく」とコメントしています。
さらに、京都市が全国に先駆けて導入を目指しているのは“空き家税”です。「非居住住宅利活用促進税」通称“空き家税”は、不動産にかかる固定資産税にプラスして、土地の評価額と建物の評価額で課税額を算出します。京都市内には人の住まなくなった空き家や別荘が10万個以上あるといわれていて、例えば、一戸建てで市街地から比較的離れている山科区にある築50年・床面積35平方メートルの空き家の場合、年間の“空き家税”は約6000円となります。また、マンションで中京区にある築5年・最上階で床面積100平方メートルの空き家の場合年間の“空き家税”は94万円と幅があります。市は早ければ2026年度の導入を目指していて、毎年約9億5000万円の税収を見込んでいます。
一方、大正大学客員教授の村山祥栄氏は、“空き家税”の問題点を3つ挙げています。「“別荘”ではなく“空き家”を対象にしたことで京都市民の重税に繋がる」「どの家が“空き家”なのか判別するのに『徴収コスト』が多くかかる」「資産価値の低い建物は、課税対象外となるため、本当に流通させるべき古い物件はそのまま残ってしまう恐れがある」としています。
Q.この政策では、京都のブランドがどんどん上がって、本来の狙いの若い人たちが住める街ではなくなる可能性もありますね。
(関西学院大学 特別客員教授 小西美穂氏)
「京都市が目指す人口の規模などの設定ができていないのではと感じます。人口が減少しているというのは分かるのですが、この特殊な、国宝や文化財のある京都というまちで、どれくらいの規模を目指すかが政策にどう反映されているのかな?と思います」
(情報ライブミヤネ屋2023年4月19日放送)


