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ウクライナ代表団とロシア代表団が会談

【独自解説】ロシアとウクライナの交渉の行方は?「プーチン大統領の思惑外れた」ウクライナ侵攻の今後を専門家が解説

 ロシアのウクライナ侵攻による戦闘が続く中、28日、ウクライナの代表団がベラルーシ入りし、ロシア代表団と“前提条件なし”での会談が行われました。ウクライナのゼレンスキー大統領は「結果が出ると思わないがやってみよう」と語っていましたが、果たして停戦に向けた進展はあるのでしょうか。ロシア政治に詳しい慶応義塾大学の廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)教授が解説します。

プーチン大統領の判断は合理性のない「私的感情」

Q.ロシアが交渉にシフトした背景にある誤算の一つが「ウクライナの激しい抵抗」とありますが、ウクライナ側、キエフ市民の抵抗は相当激しいということでしょうか?
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「はい、そう思われます。当初、2日でキエフ陥落ではないか、というようなことが言われておりましたが、相当善戦していると思いますね。」

慶応義塾大学 廣瀬陽子教授

Q.「ロシアのプーチン大統領は正常な判断ができなくなっている」ということは、フランスのマクロン大統領や様々な専門家も言っていますね?
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「そうですね。この一連の動きを見ますと合理性が全く感じられないんです。これまでは冷徹に非常に合理的に動いてきた指導者だと思うんですけれども、そういう判断力がみじんも感じられず、すべて感情論で動いているように見えます。」

Q.プーチン大統領は新聞などに論文と称してウクライナに対しても色々書いてきていますが、それが近年は非常に感情論に任せて書いているような印象があると聞きますが。
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「まさにそうでして、勝手にウクライナの歴史観みたいなのも出したりしているんですけれども、“プーチン大統領が考えている歴史観”というような感じでして、真実からはかなり遠いものなんです。そういう怖さが最近見られていると思います。」

ロシアが懸念するNATO軍の状況

Q.プーチン大統領の人生観として、いわゆる東西ドイツの統一や祖国ソ連の崩壊というのを見てきていて、自分の威信や国力が落ちた時にあっという間に国が消え失せてしまうという体験をしているわけですよね。今回、ウクライナとNATOの関係が近くなったときにそういう事を考えしまっているのですか?
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「それはもちろんあります。やはり根底にあるのは、欧米にずっと自分が辱的な状況に置かれてきたという被害者意識がものすごく高まっているというのは、確実にあることなんです。その被害者意識の出し方というのが、最近少しおかしいのではないかという指摘だったんですけど、悔しい思いをずっと募らせているというのは間違いないです。」

停戦交渉の行方は?

内容が異なる?両者の「中立化」

Q.ロシアメディアが「ウクライナ代表団、ベラルーシ入り」と報じているんですが、この報道はどう見ますか。
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「これはやはり、ウクライナが乗ってきたということをまず示す、ということだと思います。ロシアが上に立った形で、しかもベラルーシでやるというのは、ウクライナが最初は嫌がっていた選択肢でしたので、より強気の立場で交渉するという姿勢を世界にアピールしたものだと思います。」

Q.今回のウクライナ侵攻、プーチン大統領は綿密に計画を練って進めてきて、恐らく停戦に向けた話し合いはプーチン大統領の頭の中にあったと思いますが、これはウクライナとロシアで交渉するのではなく、西側諸国も巻き込んで話し合いたかったのではないでしょうか?
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「はい、プーチン大統領の思惑は外れたと思います。交渉はキエフが陥落した状態で、敗戦国に対して要求を突きつけるような形で行いたかったはずです。その状況を欧米にも認めさせる展開に持っていきたかったはずなのですが、思わぬ交戦でいわゆる交渉の形を取らなければならなくなった。しかもロシアが求めている停戦の条件というのは、ウクライナにとっては飲めるものではありません。ほとんど主権を放棄するような内容になっていますので、この交渉というのは相当厳しいものになると思います。」

Q.ロシアのいう「中立化」は、NATOに半永久的に入らないでくれということだと思いますが、ゼレンスキー大統領のいう「中立化」というのはどういう意味合いなのでしょうか?
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「ロシアとウクライナの『中立化』には相当なズレがあると思いますが、恐らくゼレンスキー大統領が考えている『中立化』というのはフィンランド的なものだと思います。『拘束力はそれほどないけれども、当面はNATOには入らない』というようなものだと思いますが、ロシアは恒久的に『中立化』、つまり『絶対的にどこの同盟にも入らないように』というイメージだと思います。政権が変わってもNATOには入らないという確約です。」

Q.ウクライナの全土に侵攻していったプーチン大統領の姿勢を見ていると、ロシアと同じ政治体制にするんだということすら見えてくるんですが、ウクライナの人達の「中立化」や「自治や民主主義を守る」という落としどころは出てきますか?
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「そこが非常に難しいところで、もし仮にロシアがウクライナを飲み込もうとしているなら、戦争をすればするほどウクライナ人の心はロシアから離れていきます。そうしたら、とても安定的な政治体制が維持できるはずもなく、常に抗議行動しているような状態になると思います。やっていることが非常に矛盾しているような気がします。」

「SWIFT」から“排除” 効果は?

「SWIFT」から排除することで合意

Q.SWIFTの銀行決済システムから排除、これは経済の核攻撃と言われていて、相当厳しいものであるんですけれども、これがどれぐらい効いてくるのか、即効性のあるものではないと思いますが。
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「そうですね、まず即効性がないということと今問題となっているのは、どれぐらい対象にするかというところで、影響の大きいエネルギーの分野を排除すると、それだけヨーロッパの国々も助かるわけですが、ロシアも助かってしまうというところがありすごく難しいところです。ロシアは中国のCIPSに入っていますので、中国を抜け穴にして色々な貿易を続けられる可能性というのもあるんですけれども、そこはロシアにとっても怖いところで、それを使ってしまうと、ますます中国依存が高まってしまうので、せっかくアメリカに対して強く出ても、中国に対しては下になってしまうというようなジレンマも抱えることになると思います。」

Q.中国は今週パラリンピックも始まります。中国としてはやっぱりこういうことを起こしてもらっちゃ困るということもあると思うんですね。ロシア説得に中国が出てくるということはないですか?
(慶応義塾大学 廣瀬陽子教授)
「可能性としてはありますが、そもそもプーチン大統領がパラリンピック前に戦闘を終わらせようとするような気がいたします。そういうこともあって、ベラルーシ軍も入れて早急に戦況を元に戻そう、つまりロシア優勢に戻そうとしているのではないかと思います。」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年2月28日放送)

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