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【独自解説】韓国“コロナ”感染爆発…連日最多水準で“K防疫”崩壊の声も 「オミクロン株」の市中感染にどう立ち向かう?
2021年12月14日 UP
“医療崩壊”の懸念も強まる韓国
新規感染者数が連日、過去最多水準を記録する韓国。ワクチンの接種率は8割を超えていますが、重症者数が“過去最多”を更新するなど、感染拡大に歯止めがかかりません。さらに、ソウルを含む首都圏で重症者用の病床使用率が8割を超えているほか、空き病床が“0”の自治体も出るなど医療体制のひっ迫が続いています。深刻な感染状況を受け、韓国政府は12月10日、ワクチンの追加接種について、2回目からの接種間隔をさらに短縮し、18歳以上は、希望すれば3か月で接種可能と発表しました。
韓国政府は11月1日に規制を大幅に緩和する“ウィズコロナ政策”を始めましたが、12月6日には中断しています。“ウィズコロナ政策”は崩壊してしまったのか、「オミクロン株」の影響はあったのか?現地、ソウルからの最新情報を基に独自解説します。
PCR検査に“長蛇の列” 現地からの最新情報
(NNNソウル支局長 原田敦史)
「こちらは、ソウル市内のヨンサンという場所で、日本人も多く住んでいるエリアです。こちらの駅前広場では、新型コロナの発生以降、PCR検査場ができ、今も稼働しているんですが、最近は検査数が非常に多く、ひっきりなしに検査する人が入っているという状況です。この広場が非常に広いのですが、時間帯によっては広場を囲むように人が並んでいて2時間以上待つケースもあるということです。現地の日本人からも不安の声が上がっています。」
Q.検査場は、国内にはいくつもあって、無料で誰でもいつでも検査できる体制ではあるのですか?
「その通りです。ソウルにはかなりの数の検査場が出来ており、さらに臨時の検査場を設置するという動きも起きています。ですが、昨日取材した時には、広場を取り囲む長い列ができており、検査の待ち時間に対する不満が出ていました。」
Q.韓国の、特にソウル、インチョン辺りの医療体制への影響は?
「首都圏の医療体制は相当ひっ迫していると思います。現在、重症者向け病床が8割埋まっていて、実際にはゼロというところもありますので、すぐに入院ができない状況になっています。その為、入院を待機しながら亡くなる方が増えており、かなりの懸念材料となっていると思います。」
Q.ソウルから郊外にかけての感染者が多いですか?
「そうですね。人口が集中しているエリアですので、ここで感染が起きてしまうと爆発的に感染が多くなる傾向はあると思います。今も感染者はソウル・首都圏に集中しています。」
“ウィズコロナ政策”と感染者数増加の因果関係
Q.規制緩和“ウィズコロナ政策”との因果関係は?
(NNNソウル支局長 原田敦史)
「この1年の韓国での新規感染者の推移を表したグラフを見ると、今年の7月から第4派が来ました。そこから感染者が増え始めていて、現在7000人を超えている状況です。ウィズコロナに踏み切った11月1日時点(画像 赤い矢印)にも2000人以上の新規感染者がいたということになります。そこから週を追うごとに増加していますので、踏み切るのが早かったのではという意見が相当出ています。」
Q.2022年3月に大統領選もある、飲食店など様々な業種から出た不満、などを受けて規制緩和に踏み切った側面もある?
「そうですね。韓国は、飲食店経営などの自営業者が多いので、そういった方々から『生活が苦しい』などの意見は相当出ていました。韓国政府も経済を回すことを優先して、かなり思い切った決断をしたと思いますが、結果的には1か月余りで中断に追い込まれた状況になっています。」
“K防疫”破綻の声も…
Q.韓国は、とにかく感染源を追いかけて特定する“K防疫”と言われてきましたが、もう追いきれずに破綻しているのでは?
(NNNソウル支局長 原田敦史)
「最近、韓国メディアでも“K防疫”破綻の論調が頻繁にでるようになりました。朝鮮日報の見出しには“国民が危ない 崩壊したK防疫”と書かれています。もはや“K防疫”が立ち行かなくなったという論調です。朝鮮日報は、もともと政権に対して批判的なのですが、一方で、普段政権を擁護している革新系の新聞からも『月内には感染者が1万人を超えるんじゃないか』、『政府は対策を強めるべきだ』という批判が出ています。市民からも、今の政府の対応に対する不満が高まっていると思います。」
Q.今、韓国で猛威を振るっているのは、「デルタ株」ですよね?
「はい。デルタ株が新規感染者の99.8%を占めています。このデルタ株についてはワクチンの有効性に特徴があります。韓国はアストラゼネカ、ファイザー、モデルナ、ジョンソン&ジョンソンの4種類のワクチンを使っています。これらが、デルタ株に対してどのくらい抗体が出るかということですが、一番高く出るのはモデルナで、その次がファイザーです。そして、アストラゼネカとジョンソン&ジョンソンというワクチンについては、抗体があまり出てないというようなデータがあります。ただ、興味深いのはアストラゼネカとファイザーを混ぜた交差接種を韓国は結構、行っていますが、その場合はファイザー単体より抗体が多く出ているというような結果がありますので、アストラゼネカを打ったからといって、一概にかかりやすいということは言い切れないと、韓国の当局は言っています。」
Q.日本の感染者が減って、韓国が増えているっていうのは、このデータだけ見るとワクチンの種類の差なのかとも思いますが
「これは一つのデータですけども、それだけではなくて、細胞の免疫など、複数の要因があるということで、抗体価だけで、ワクチンの種類によって、かかりやすい、かかりやすくないというのを断定することはできないというふうに、当局は説明しています。」
「オミクロン株」の市中感染も…
Q.韓国で「オミクロン株」に感染した方々の情報は?
「今のところ、『オミクロン株』には累計で63人感染していますが、重症化したという例は報道されていません。最初にアフリカから『オミクロン株』を持ち込んだ牧師夫婦がいますが、既に退院したという情報もあり、今のところ、重症化して亡くなるといったケースについては、出ていないというふうに認識しています。」
Q.ワクチン接種をしていない子どもたちの感染者率、重症化率は?
「重症化する例も出てきているそうです。韓国では若年世代でワクチンを打っていない人がまだまだ多く、特に10代に関してはワクチン接種が始まったばかりで、期末テストの時期と重なるので親御さんが体調を気遣って、積極的に打っている状況ではありません。その為、政府はこの若年世代の学校内での感染を懸念して、積極的なワクチン接種を呼びかけています。」
Q.ワクチン接種をしないという教会や村の様子は?
「韓国では、教会でクラスターが起きるケースが多いです。当初の感染爆発を起こしたのも新興宗教の教会が起点でしたし、その後も礼拝をきっかけに感染が広まったというケースが多く、今回も『また教会か』という新聞記事も多くみられます。」
Q.原田さんも怖いのでは?
「そうですね、身近にコロナが近づいているという感覚があります。私の周りでも毎日のように、『コロナに感染しました』とか、『検査を受けます』といった報告がありますし、いつかかってもおかしくないなという意識を持っています。ワクチンの追加接種に関しても、3か月に短縮されたので、今月の中旬以降、私も打つことができるんですけれども、早く打っても4回目の接種をいつかしなくてはならないのかなと思うと悩ましいです。」
Q.病院に入れない恐怖はありますよね
「その通りですね。今は感染しても病院に入らず、在宅治療が基本になっています。よほど重症化しないと病院に入れてもらえないという状況になっていますので、異国の地で、もし重症化した場合を考えるとやはり怖いですね。」
(情報ライブ ミヤネ屋 2021年12月10日放送)


