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関西福祉大学 勝田吉彰教授

【独自解説】「オミクロン株」濃厚接触者の待機“原則10日”に短縮検討へ 医師「隔離期間が必要以上に長いのは産業医の現場から見ても、副作用がある」

濃厚接触者の“待機期間”短縮へ

 「オミクロン株」の感染が急拡大する中、議論となっている“濃厚接触者の待機期間”。複数の政府関係者によると、政府は短縮する方向で検討しています。そんな“新型コロナ”の最新情報とその対処法を元・外務省医務官、関西福祉大学の勝田吉彰(かつだ・よしあき)教授が解説します。

急増する国内の“新型コロナ”感染者

国内の新規感染者数の推移(1月12日現在)

Q.感染者数の増え方からみると、感染力はかなり強力ですか?
(関西福祉大学 勝田吉彰教授)
「そうですね。大体2、3日で感染者の数は倍になると言われていますし、ここで注意しなくてはいけないのは、まだ嵐は始まったばかりなんです、日本の場合。過去欧米、特に欧州なんかはずっと前からそうなんですが、始まってから8週間ずっと増え続けました。一度フラットになってまたゴンと上がるということなんですね。これからさらに増えると予見されるということです。」

Q.今のところ沖縄でも、人手が必要な人工呼吸器やECMOを大量に使っている話は聞かないですね?
(勝田教授)
「そうですね。そういう外側からの医療崩壊というよりも、例えばニューヨークの現場であるのは、内側からの医療崩壊ですよね。出勤できない人がいるとか、今全米で24%の病院が医師不足あるいはスタッフ不足といっていますし、エンプティーベッドつまりベッドは確かに何床もあるけど、そこが使われていない、入れないということが発生しているんです。」

「オミクロン株」の重症化について

日本医師会 中川会長はオミクロン株の重症化について…

 1月12日、日本医師会の中川俊男会長は、「オミクロン株」の重症化について、「1月以降、沖縄県内では8000人以上の感染者を確認していますが、人工呼吸器の装着やICUに入室する重症者は一人も発生しておらず、若者にとって「オミクロン株」はほとんどが軽症か無症状。ハイリスクの方、特に高齢者については、沖縄県でも症例が少ないため、現時点で判断するのは困難である」ということを示しました。

「オミクロン株」 陽性者の症状

Q. 若い方は軽症ですが、リスクの高い高齢者などにうつしてしまう懸念がありますよね?
(勝田教授)
「実際、発熱症状が72%という数字が出ていますけど、諸外国を見ると本当はもっと少なくてもいいはずなんです。つまり、海外では発熱もない嗅覚異常も何もなくても受診しているんです。やはり、元気はつらつではない普段の自分とは違うなと思ったらまずは高齢者やリスクの高い人、中高年でも健診で何かに引っ掛かったという人には近づかないというところは徹底すべきかなと思います。」

ワクチン“3回目接種”のスケジュール

 高齢者などへの3回目のワクチン接種を急ぎたい状況の中、勝田医師は3回目のワクチンの打ち手として、1月2週目から大阪市で参加予定でしたが、大阪市から、「国からワクチンが来ない」と連絡があり、2月ごろからのスタートになったということです。

Q.大阪市では3回目のワクチン接種は決まったが、ワクチンが来ない?
(勝田教授)
「そうですね。メールには、国からワクチンが来ないという理由をちゃんと明記してあって、いったんキャンセル、全部外しますと。これは、1回目のときと全く同じ現象です。1回目も医師やスタッフはもう全部準備されていて、だけど物が来なかったから打てなかったということが多くありました。全く同じことを繰り返しているということなんですよね。2月にはまた新しいシフトを作って、まだ発表になっていないんですけどね。」

Q. 日本国内にモデルナとかファイザーのワクチンは一定数ありますよね?
よね?
(勝田教授)
「恐らくあるんだろうと思います。ただ、それが十分な量入っているかどうか厚労省が発表しないから、混乱の元なんです。ワクチンが今どれだけ日本国内にあるのか、厚労省もぜひ情報をきちんと出してほしい、リスクコミュニケーションしてほしい、ぜひそこはお願いしたいと思います。」

濃厚接触者の“待機期間”短縮を巡る反応

濃厚接触者の“待機期間”を巡り意見が

 濃厚接触者の隔離期間を短縮することついて、東京都の小池都知事は1月12日、「例えば、科学的知見に基づいて、どのような方法が一番いいのか、国の考えを示してほしい」としています。また、大阪府の吉村知事は1月12日、「オミクロン株の特徴に合わせた対応を求める。潜伏期間が3日程度なのであれば、隔離期間は5日にするとか、社会インフラを止めない取り組みが必要。エッセンシャルワーカーの定義が難しいのであれば、濃厚接触者そのものの隔離期間を短縮すればいい」と述べました。

Q. 隔離期間を短くすると、他の人にうつす感染リスクはないのでしょうか?
(勝田教授)
「あることはあります。ただ、実を言うと私の意見は、むしろ吉村知事側で、私はエッセンシャルワークである産業医をやっています。隔離期間が必要以上に長いというところは、やはり産業医の現場から見ても、ちょっと副作用はあるのかなと、そんな気もします。」

厚労省 各都道府県に再周知

 後藤厚労相は1月12日、「医療従事者の濃厚接触者は毎日検査を行うなどによって勤務をすることができる」と改めて自治体に通知した一方で、「エッセンシャルワーカーなど、ほかの業種への適用は検討課題である」としています。

Q.コロナもありますが、コロナ以外のほかの重大な疾患を持っていらっしゃる方も困りますよね?
(勝田教授)
「そうですね。慢性疾患というのは、感染症でなくともベースにウイルスの炎症というものがあるんです。このコロナの感染によってバランス崩して、例えば糖尿病の人が糖尿病の発作、まさに命を左右するというところで、運ばれてくるというのが実は今、ニューヨークの救急の現場の声として聞こえてくるんですね。コロナが原因ではなくて本来、自分が持っている慢性疾患の悪化で、まさに生命の危機に行ってしまうというのが、もうぼろぼろとニューヨークでは出ています、恐らく日本でも出てくると思います。」

Q.ワクチンも打って、飲み薬もあるから大丈夫だと思っていましたが、飲み薬は使い勝手が悪いのですか?
(勝田教授)
「そうなんですよね。ひとつの問題が、それが700ドル、7万円、8万円するということなんです。そうすると、例えばインフルエンザのタミフルでしたら、高齢者施設で1人感染者が出たら、周囲の人10人ぐらいに、あるいはもっと多くのケースも予防投与ができる。それによって未然に発症を防いで、そしてクラスターの発生を防ぐ。それが1人頭7万円だと、10人投与すると70万円ですよね。しかも国家管理で、財務省のお役人も入ってきちゃうわけだから、なかなか使えない。早く飲まないといけませんが、軽症でコロナ感染が分かっても、なかなかすぐに来ない。それを申請をして、それで答えが来て、『1日待ってください』、『家で待っていてください』という話なんですよ。」

“5類”への見直しは?

“5類”への見直しについて 大阪府の吉村知事は…

 感染症“5類”への見直しについて、大阪府の吉村知事は1月12日、「5類にした場合、保健所の関与が少なくなり、各自が診察、入院を決めることになる。一人一人に委ねることで、ある意味、行政としては感染のコントロールを放棄することになり、感染の拡大リスクは圧倒的に高く
なる。ただ、リスクは高いと思うが、そのリスクを取って社会を回していくのか許容するのかどうか。すべての病院で新型コロナ患者を受け入れる社会にするなら、国で本質的な議論をしないといけない」と述べています。

Q. “5類”ということになると、季節性のインフルエンザのように「ご自身で病院に行ってください」ということですよね?
(勝田教授)
「そうですね。ただ、全数把握はちょっとしにくくなるので、国が発表する感染者数などの、国際信用という面ではまずいけれども、ただ、その国際信用と言っても、どこの国も全数把握が難しいという話になってきたら、そこのところから崩れるわけですので、どこかで変わるとは思います。」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年1月13日放送)

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