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【独自解説】ロシアに歩み寄る北朝鮮がまたもやミサイル発射、狙いは「アメリカへの警告」!?“核”を巡るウクライナとの意外な関係も…専門家が解説
2022年3月9日 UP
ロシアによるウクライナ侵攻が激しくなる中、そのロシアに北朝鮮が歩み寄る動きを見せています。はたして北朝鮮の狙いとは?東アジア情勢はどうなっていくのでしょうか?北朝鮮情勢に詳しい「コリア・レポート」編集長・辺真一(ピョン・ジンイル)さんが解説します。
北朝鮮ミサイル発射の裏に「技術の向上」
北朝鮮のミサイル発射は、北京オリンピック・パラリンピック期間中は行われないと思われていました。しかし、3月5日午前9時前、北朝鮮は日本海に向けて弾道ミサイル1発を発射しました。飛距離約300km・最高高度約550kmの、高く飛行するため迎撃が困難な“ロフテッド軌道”とみられています。3月6日付けの労働新聞は、「今回のミサイル発射は偵察衛星の開発計画に従って重要試験を行ったもの」と中国に配慮した発表を行いました。
Q.このところ、ミサイルをロフテッド軌道で、日本のEEZ(排他的経済水域)の外に落としていますが、これはミサイルの技術が相当上がっているとみていいのでしょうか?
(「コリア・レポート」編集長 辺真一さん)
「2016年から始まって、2022年までおそらく100発近く発射していますが、一度も船舶や飛行機に何かあったと言う報道はありません。それだけ北朝鮮も慎重に打ち上げていると思われます。技術が向上して、自信を深めているといえます」
Q,西側諸国の目がウクライナ侵攻に向いている中、北朝鮮がミサイルを発射する意義は?
(辺真一さん)
「北朝鮮は非常にわかりやすいんです。米韓軍事演習や経済制裁などの、アメリカの北朝鮮に対する敵対政策をやめない限り、北朝鮮はミサイル発射を続けていく、ということを行動で示しているのでしょう。『ロシアの次は我々だということを忘れるな』という警告の意味があると思われます」
ロシアに歩み寄る北朝鮮 一方でウクライナとも深い関係が
北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻に対して「ウクライナ侵攻の根元は全面的にアメリカと西側の覇権主義政策にある」と批判しました。「アメリカと西側がロシアの正当な要求を無視し、NATOの東方拡大を進め、ヨーロッパの安全保障環境を破壊してきた」とも述べ、完全にロシア側に付いています。
さらに、3月2日の国連緊急特別会合でロシア非難決議案が採択されましたが、ここでの反対5票に北朝鮮も入っていたということです。そしてその翌日に、北朝鮮外務省の局長がロシア大使と会談し、両国間の戦略的協力を一層強化するための問題を討議したということです。ロシアのプーチン大統領と金正恩総書記の関係も良好で、北朝鮮はロシアに近づいていますが、プーチン大統領は北朝鮮の“核保有には反対”の姿勢です。
Q.プーチン大統領としても、北朝鮮との友好関係は維持したいけれど、核保有は別の話だということでしょうか?
(辺真一さん)
「ロシアの北朝鮮の核保有に反対する姿勢は一貫しています。北朝鮮は国連安保理に10回制裁をかけられていますが、いずれもロシアは制裁に賛成しています。北朝鮮のミサイル発射、特に人工衛星と主張する発射に対しては大目に見ても、核実験だけは許さない、というのがロシアの基本的な姿勢です。そういう意味で、両国関係は“蜜月”とは言えません」
Q.ロシアのウクライナ侵攻を見て、北朝鮮の“核”に対する態度に変化はあるでしょうか?
(辺真一さん)
「かつてリビアのカダフィ政権が、アメリカやイギリスの説得に応じて核を手放しました。その時にカダフィ大佐が、金正日総書記に向かって『われわれを見習え』と言ったんです。それに対して金正日総書記は『(カダフィ政権は)誤った判断をしてしまった』と言葉を返したんです。その後カダフィ政権はアメリカによってつぶされてしまいました。今回もウクライナが、ロシアやイギリス、アメリカの説得に応じて核を手放して、そのあとにロシアに侵攻されたのを見て、北朝鮮は二度と“核を手放そう”とは思わないでしょう」
Q.ウクライナは西側に入りたいと言いながら、北朝鮮とも関係が深いんですか?
(辺真一さん)
「ソビエト連邦の時代は、北朝鮮とウクライナは良好な関係にあって、北朝鮮の核の技術者はほとんどウクライナに留学しています。ソ連が崩壊した後、その北朝鮮の留学生たちが、恩師であるウクライナの失業した“科学者”や“技術者”約200人を、副総理級の待遇で北朝鮮に呼んで、それが今の北朝鮮のミサイルや核開発の発展に寄与することになったという経緯があります」
3月9日韓国大統領選 北朝鮮はどう見ている?
北朝鮮の隣の韓国では3月9日に大統領選が行われます。北朝鮮に融和的な与党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補と、「北朝鮮には先制攻撃もありうる」と強硬な、野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソギョル)候補の一騎打ちとみられています。
Q.北朝鮮としては、どの候補に大統領になってほしいのでしょうか?
(辺真一さん)
「有力な候補はどちらも親米だということで、北朝鮮にとってそこが問題なんです。文在寅大統領も北朝鮮に融和的ですが、3回も首脳会談をしたのに、何一つ約束を実行できなかった。アメリカの許可がないと何もできないということを北朝鮮は知っていますから、今回の韓国大統領選は眼中にないと思います」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年3月8日放送)


