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倉持仁医師が“現場が求める対策”を提言

【独自解説】感染拡大で“一般医療”がひっ迫 “第6波の収束”は? コロナ治療“最前線で戦う医師”が「現場が求める対策」を提言

 連日、新型コロナの新規感染者が1万人を超える東京。2月2日からは検査をせず、医師の診断のみで陽性かを判断する“みなし陽性”の患者も合計して発表することが明らかになりました。
非常に混乱しているという医療現場で今、何が起きているのか…栃木県宇都宮市で、コロナ患者の治療にあたっている「インターパーク倉持呼吸器内科」院長、倉持仁(くらもち・じん)医師が“現場が求めている対策”を提言します。

検査急増で“職員も徹夜” 医療現場の現状

「インターパーク倉持呼吸器内科」院長 倉持仁医師

 1月30日の「インターパーク倉持呼吸器内科」の外来受診者は572人、コロナ陽性率は約30%で、病床使用率は約90%になりました。入院患者9人のうち2人が中等症でデルタ株に罹患、7人は軽症でオミクロン株に罹患していますが、重症者は0人ということでした。

 倉持医師によると、「1月30日、日曜日は、私が医者になって23年間で最も多くの患者が受診に来られた。現場は非常に混乱している状況で労力的にもスタッフは疲弊してきている」といいます。

Q.この状況が連日続くと先生方も大変ではないですか?
(「インターパーク倉持呼吸器内科」院長 倉持仁医師)
「そうですね。私ども医師より、PCR検査などを行う検査技師は交代で朝までやって、やっとこなしているので、これが続くともたないと思います。デルタ株とは違ってこれだけ患者が来ても肺炎で亡くなりそうな方が何人もいないというのが幸いですが、最近では子どもたちの感染を中心に、80代~90代の高齢者が動けなくなって入院するという状況が増えています」

Q.オミクロン株は“入り口“である検査の段階でつまっていますか?
(倉持医師)
「その通りです。今回は検査が追いついていなくて、濃厚接触者かどうかも保健所さんの方でもわかりません。接触者であっても医療機関には知らされないので、我々もいつのタイミングで検査したらいいのか全くわかりません。とにかく来た方の検査をしていくしかないという状況です。当院では検査キットは“第5波”以上のものが来ても大丈夫なように備えて準備してありましたが、今、少ないのはマンパワーです」

倉持医師の提言(1)家庭内感染を抑えるために隔離施設の拡充を!

倉持医師の提言 「隔離施設の拡充を」

 そんな倉持医師からの提言、一つ目は「隔離施設の拡充」です。「第1波から第6波まで感染の起点となる年代が、高齢者→若者→子どもと移り変わっており、これまでの飲食店を規制する“まん延防止等重点措置”や“緊急事態宣言”は意味がないのではないか」と倉本医師は話します。つまり、今主流の“家庭内の感染”を抑えるために、隔離施設の拡充が必要だということです。

Q.具体的にどういった対策をとれば良いとお考えですか?
(倉持医師)
「家庭内で小さな子どもから若い夫婦へ感染するのはある程度はやむを得ないと思いますが、今までとは逆の考えで、高齢者の方へ感染させないために、健康な高齢者を隔離するような施設を増やすことが必要だと思います。受け入れる側も感染者を受け入れるわけではないので対応しやすいですし、介助も回しやすいと思います。自宅待機が増えていますので、ここで高齢者への感染を防がないとまずいと思います」

Q.濃厚接触者を追えない状況で方針を決めるのは難しいと思いますが、いかかですか?
(倉持医師)
「現実的にはもう指定感染症の枠を外れてしまっていますので、現場でどうやって感染を防ぐかということに一番フォーカスして話し合って頂きたいです。実際に、(例えば)弟が通っている保育園で感染者が出た、しかしお兄ちゃんは学校に行っていい、みたいな運用になっていますから、訳が分からないんですね。我々医師が一生懸命検査をしても、『いやいやそこで学校に行っちゃ、それはどんどん広がっちゃうでしょ』っていう現状を、個別、個別にその学校なり、保育園で対応策を決めているような状況なんです。一番いいのは感染しているか、していないか、ちゃんとPCR検査をやることです。陰性であればいいわけですから。検査と隔離が感染症を抑えるには原則であるんです」

Q.検査ができれば待機期間を短縮することなどもできますか?
(倉持医師)
「そうですね。我々のクリニックでは職員全員出てきた人に検査をしていたのですが、今は職員の家族単位でプール法で検査しています。PCR検査では増幅値が判るのですが、毎日やって数値が増えてきた職員は個室で電話対応をするような、感染しないような仕事をしていただきます。ちゃんと検査をすれば、そのような運用に変わっていけますので、検査の態勢の在り方を見直すべきだと思います」

倉持医師の提言(2)「公表していない発熱外来」の活用を!

発熱外来の約3割が積極的に公表していない

 2月1日、後藤厚労相は、都道府県が発熱外来に指定している医療機関の約3割が積極的に公表していないとし、「一部の医療機関に患者が集中し、検査や診察の予約が取りづらいという声も聴いている」と明らかにし、積極的に公表していない医療機関に対し医師会から協力を呼びかけるよう求めています。

 倉持医師は「積極的に公表しない発熱外来の存在は、当院の外来患者が増えている理由の一つでもあり現場はかなりの余波を受けている。発熱外来担当医師が3人いるが、完全にキャパシティーを超えてヘトヘトになっている」といいます。

一般医療のひっ迫で“入院の優先順位”をつけざるを得ない状況に

 東京都の大森赤十字病院は1月下旬、東京都の要請で、一般病床を約100床減らしコロナ病床増やしたということですが、現在は、一般医療もコロナの影響を受け、ひっ迫しており、“入院の優先順位”をつけざるを得ない状況だということです。

Q.コロナ以外の患者の診察・治療はどういう状況ですか?
(倉持医師)
「軽症の脳梗塞の方などは、従来であればほぼ入院して経過観察をしていましたが、今は軽いとみんな帰されてしまうという話もあります。そういう状況になっているということは、一般の方も認識した方がいいと思います」

倉持医師の提言(3)新たな“変異株”への備え日本独自のデータ収集が必要

倉持医師の提言 「日本独自のデータ収集を」

 また、倉持医師は「第5波中に第6波が想定できていれば医療体制も整えられ、現在のような事態にはなっていなかったかもしれない。自治体と企業が協力して、日本独自のデータを収集し“第7波”の備えをするべきだ」としています。

Q.先生方が欲しいと思われるのはどんなデータですか?
(倉持医師)
「今回のオミクロン株の特性について、東大の医科学研究所やイギリスのケンブリッジ大学が共同で研究した論文がネイチャーという雑誌に載ったんですけれど、各大学や研究機関はそういうデータを集積するメゾットをもっているわけです。それは国も、国をあげてやればできることなのですが、どうも疫学にこだわってしまって、感染状況の結果をみて後から『こうだった』ということしかできない体制しかないんです。“みなし感染者”が増えれば、正式な化学データが取れません。きちんとPCR検査ができなければ変異株の検索も出来ないし、次にどういう変異株が増えるのかということもわかりません。今回の論文にも掲載されていますが、新たな変異株にはどういう薬やワクチンが利くかという検証は実は、タイムリーにできるんですね。やる気がないからできないんです。なるべく国のためになるように体制づくりを至急構築して頂きたいと思います」

Q.疫学的な検証と最前線の現場の状況がかけ離れているということですか?
(倉持医師)
「そうですね。いま起こっていることは、我々はその場で起こったことがすぐわかるので、皆さんより1~2週間先が見えるんです。そういった現場の意見を吸い上げたうえで、国の政策に活かして頂きたいです。的がずれている“まん延防止”の措置ではなくて、今の問題点は、働きに行けないお父さんお母さんたちが大勢いることで、そういった人たちにどれだけ隔離期間を置いて検査を優先的にしていくか、というようなことをやっていくべきだと思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年2月2日放送)

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