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ウクライナ侵攻でどうなる北方領土問題

【独自解説】懸念されるロシアの「北海道侵攻」に「サイバー戦争」それでも日本は”専守防衛”なのか?アメリカに守ってもらうには?専門家が解説

 ウクライナ侵攻は、日本とロシアの“北方領土問題”にも影響を与えています。北海道周辺で軍事活動を活発化させるロシアの狙いは?有事のとき、はたしてアメリカは守ってくれるのか?軍事専門家で笹川財団の上級研究員 小原凡司さんが解説します。

笹川財団 上級研究員・小原凡司さん

 北方領土に対しては、「これまで一度も外国の領土になったことがない“わが国固有の領土”」というのが、一貫した日本政府の立場です。日本がポツダム宣言を受諾して無条件降伏した後もソ連は攻撃を続け、北方四島を不法に占拠しました。1945年当時北方領土に住んでいた、1万7291人の日本人が故郷を追われています。戦後様々な外交交渉もあり「日ソ共同宣言」では“平和条約締結後の歯舞・色丹2島の返還”に同意しましたが、現在も日本とロシアとの間で“平和条約”の締結はされていません。

プーチン大統領の北方領土問題に対する発言

 そしてウクライナ侵攻での日本の経済制裁に対し、ロシア外務省は3月21日、「日本は公然と非友好的な立場をとり、我が国の国益を害しようとしている」と反発。「北方領土問題を含む日本との“平和条約交渉”を中断する」と発表しました。

北海道周辺で活発化、ロシアの軍事活動

 さらにその後、ロシア国防省が「北方領土を含む千島列島で行われた軍事演習に、兵士ら3000人以上が参加した」と発表。4月1日には国後島と択捉島で、ロシア兵士ら1000人以上と車両およそ200台が参加した軍事演習が行われるなど、北方領土でのロシアの軍事活動が活発化しているといいます。

極東におけるロシアの戦力(2022年1月防衛省資料・防衛白書より)

 極東地域におけるロシア軍の戦力は、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)原子力潜水艦艇3隻・陸上兵力約8万人・主要水上艦約20隻・航空機約320機など、強力です。

Q.北海道周辺や北方領土などにおける、ロシア軍の動きの目的はなんですか?
(小原凡司さん)
「ロシアはアメリカの方を向いているので、このオホーツク海は、アメリカに対する核抑止のために、絶対に軍事的にコントロールしておきたい海域です。なので、国後・択捉を返す気はないと思います。その上、できれば北海道まで占領して、オホーツク海をロシアの領土で囲みたい、と考えていると思います」

Q.北海道を占領されるというのは、私たちには現実味がないのですが、日本が攻撃されたときは、本当にアメリカが守ってくれるのでしょうか?
(小原凡司さん)
「今回のプーチン大統領によるウクライナ武力進攻によって『アメリカをいかに安全保障の枠組みの中に引き留めて軍事介入させるか』っていうことが、一つの重要な課題にはなっていると思います。日本はウクライナと違ってアメリカと“同盟関係”がありますので、日本が攻撃されたときに、アメリカ側が必然的に参戦せざるをえなくなる“状況”を作っていく必要がありますし、アメリカ側も今それを求めています。オースティン国防長官が言っている『統合抑止』という考えは、『同盟国との統合を図る』というものなので、こういった方向に今日本はあると思います」

Q.今は“サイバー空間での戦い”というのもありますが、これを“戦争”ととらえたときも、日本は「専守防衛」なんでしょうか?
(小原凡司さん)
「日本の場合は専守防衛です。サイバー空間に対する認識自体が、欧米と日本は違います。その欧米も考え方は様々です。中でもイギリスが一番極端で、『サイバー空間に主権はない』という考えで『サイバー空間ではどこで何をしても構わない』と言っています。アメリカはサイバー空間の主権は『状況に応じて』という考えです。日本は『サイバー空間にも主権がある』という考えなので、『国境がある』と言っているのと同じなんです。ということは、サイバー空間で活動しようとしたときに“憲法の制約”が出てきます。自衛隊の活動は有事に限定されていますから、本来、有事になる前に“抑止”をしなければいけないのに、その段階では自衛隊がまったく活動できない、という本末転倒の状況にあります」

“サケ・マス漁業交渉”とは

日本がロシアに対し経済制裁を科する中で、新たな問題となっているのが、例年だと4月10日に解禁されるサケ・マスの流し網漁です。これはロシアの川で生まれたサケ(ロシアに権利がある)を日本の排他的経済水域でとる漁で、毎年春先にロシア側と、その漁獲量などの交渉が行われています。しかし今年はウクライナ侵攻の影響で遅れ、4月11日になってようやく漁獲枠に関する日ロ交渉が始まりました。今後 、昆布やサンマやスケソウダラなどの話し合いも予定されていますが、先行きは不透明です。

Q.ロシアとしては外貨が欲しいので、サケ・マスの流し網漁などの協力費を釣り上げてくる可能性はありますか?
(小原凡司さん)
「日本が“非友好国である”というロシアの主張を示す必要があるので、なんらかの嫌がらせはしてくると思います。ただ日本は、今の欧米に比べるとまだロシアに対して融和性があると思われているので、この関係を完全に切ることはないと思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年4月14日放送)

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