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ホストクラブに蔓延る「売り掛け」という闇

【独自解説】一晩で最高額1000万円、支払いのために風俗…“ホスト沼”にはまる女性たち 裏に存在する接客マニュアル、売り掛けに規制は?国会でも議論

 2023年11月9日、ホストクラブへの多額の売掛金のために若い女性が売春などを行っている問題について、異例の国会審議が行われました。明らかになる“ホスト商法”の悪質な実態。なぜ女性たちは抜け出せないのか?売り掛けは規制できないのか?「青少年を守る父母の連絡協議会」代表・玄秀盛氏と、弁護士・亀井正貴氏のダブル解説です。

「マインドコントロール」「アイドル営業」マニュアル化された“ホスト商法”

「青少年を守る父母の連絡協議会」代表・玄秀盛氏

 玄秀盛氏は2011年、東京・新宿の歌舞伎町に「一般社団法人日本駆け込み寺(現在は公益社団法人)」を設立し、DV・家出・金銭トラブル・ストーカーなどの被害者の相談に応じてきました。2023年7月には「青少年を守る父母の連絡協議会」を設立し、ホストの売り掛けによる性搾取(売春)を根絶するため、「売掛禁止条例」化へ向け現在署名活動中です。

 以下は、玄氏が受けてきた相談事例です。

相談①娘がホストにハマり、900万円の借金がある
相談②ホストに貢ぐために風俗で働くという娘を止めたい
相談③弁護士がいきなり『お嬢さんが作ったホストクラブへの借金600万円を払ってほしい』と乗り込んで来た

Q.ホストクラブの“売り掛け問題”は、昔から相談があったのですか?
(「青少年を守る父母の連絡協議会」代表・玄秀盛氏)
「売掛問題の相談はコロナ前からありましたが、その頃はまだホストの店が200店舗前後ぐらいで、そこまで目立ってはいませんでした。コロナによって3年間は静まり返り、コロナ後5月にマスクが解禁になってからは店舗が爆発的に増えて、今は300店舗ぐらいあります」

一晩で1000万円使い果たした女性も

 10代からホストクラブに通うAさん(23)は、大学生のときホストに一目惚れしたことがきっかけで、通うようになりました。一晩で使った最高額は、1000万円。ホストクラブに通う理由は、「仕事やプライベートの話を聞いてくれるし、楽しませてくれるところが良い。今を楽しんでいる感じで通っている」といいます。現在は、「ホストに行きたいから」という理由で自ら風俗店で働いていて、売掛金は300万円あるということです。

ホストが使う「マインドコントロール」の手口

 なぜ、ホストにハマってしまうのでしょうか。玄氏が入手したノートには、「鎖をかける」「地雷を置く」という、「マインドコントロールするマニュアル」がありました。

 まず、「鎖をかける」。これは、「〇〇ちゃんなら、いろいろ相談できる」「〇〇ちゃんって、俺だけをまっすぐ見てくれるから、嬉しい」など甘い言葉をかけることです。

 そして、「地雷を置く」。これは、「すぐ怒らないで、話を聞いてくれる人はステキ」「好きな担当がいるのに、他店に行く女の子って最低だよね」など、ホストに嫌われる“地雷”を日常的に伝えることで、女性はホストに嫌われることを避けるために“理想の女の子”になっていくといいます。

Q.女性にとって、親切に相談に乗ってくれる唯一の人がホスト、ということもあり得ますよね?
(玄氏)
「一番心を開いていたり、日常的に『おはよう』から『おやすみ』までLINEで送ってくれたりして、それで実際にホストクラブに行くと“リアルアイドル”じゃないですけど、隣に座って、真っ直ぐ目を見て悩み相談から入っていって、ちょっとアルコールが入ったら、一気にやられてしまいます」

ホストは「手の届くアイドル」?

 また、玄氏が入手したノートによると、「使わず」「呼ばず」「煽らない」という「『アイドル営業』の3要素」というものもありました。

Q.テレビなどで活躍しているアイドルは絶対に手が届かないけど、すぐ身近にいてLINEもくれる“推し”を全力で応援したくなるということですか?
(玄氏)
「体験入店から始まって、マニュアル通りにできるとは限りませんが、あの手この手でとにかく女性の関心を買います。まず絶対に怒らず、おしぼりを渡すときも下から上へそっと渡し、お姫様扱いするなど優しさに溢れた言動で、女性は『これだけ私を想ってくれる人は、この人しかいない』と精力的になってしまいます」

“伝票はラブレター”売り掛けを払うため風俗で働く女性たち

国会でも議論された「売り掛け」

 ホストにハマることで一番怖いのが、今問題となっている「売り掛け」です。代金を後日支払う“ツケ払い”のことで、会計の後払いを約束する青い売掛伝票は「青伝」と略され、「伝票はラブレター」「運命の青い糸」などと呼ばれているということです。

「売り掛け問題」について異例の国会審議

 「売り掛け」について、ついに国会でも議論されました。11月9日の参議院・内閣委員会で立憲民主党・塩村あやか議員は、「倫理観的な目を含めて、問題ではないのか」と指摘しました。これに対し松村祥史国家公安委員長は、「返済困難な売り掛けをさせることは、常識的に考えて問題ではないかと考えている」と、対策を進めるよう警察を指導する考えを示しました。

売り掛けは、いわば「ホストの借金」

Q.「売り掛け」を回収できないとホストが自腹を切らないといけないので、働き口を紹介するよと風俗などを女性に紹介するのですか?
(玄氏)
「基本的には、そうです。しかし、直接は紹介せず、“匂わせ”ます。だんだん売り掛けが溜まってきたら、時給1000円ちょっとの普通のバイトでは到底払えません。何より、売り掛けのお金は、店から請求されたホストが立て替えているというところにマジックがあります。好きな人が借金を肩代わりしてくれるから私は彼を苦しませるわけにはいけないという、恋愛というところまでマインドが入ったら、抜けません」

Q.マインドコントロールされていると、周囲の人が「風俗で働いてホストクラブにお金を流すのはおかしい」と言っても、聞かない女性が多いのではないですか?
(玄氏)
「いくら説得されてもホストを見つめたままですから、逆に周囲の人たちから距離を置きます。家のお金や親の生命保険なども全てを持ち出したり、親が知らない間に借り入れしていたりすることもあります」

売春持ちかけは法に抵触しないのか?国会でも議論

「職業安定法に抵触」する?

 「職業安定法63条」には、「精神または身体の自由を不当に拘束する手段で、職業紹介などを行ってはいけない」「公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で、職業紹介などを行ってはいけない」とあります。国会でも、風俗の仕事を紹介することが「職業安定法に抵触するのでは」と議論されました。

弁護士・亀井正貴氏

Q.職業安定法に抵触するのではないかという意見、いかがでしょうか?
(弁護士・亀井正貴氏)
「職業紹介ですから、単に『売春をやっている所に行け』ではダメで、実際に店に連れて行って契約させるところまでが必要です。この法律は、量刑としては非常に重いです」

「デート商法」になり得るか?

 また、いわゆる「デート商法」というものもあります。「デート商法」とは、消費者が勧誘者に対して恋愛感情を持ち、両想いだと相手が信じていると知りながら、契約を締結しなければ関係が破綻する旨を告げ、契約を締結させる」ことです。ホストクラブでの借金が消費者契約法の要件に該当する場合は、取り消せる可能性もあるといいます。

Q.「消費者契約法」には、当てはめられますか?
(亀井氏)
「これは、“統一教会”と同じ問題です。いわゆるマインドコントロールを受けた消費者の契約を取り消して、保護しようという規定なのですが、これは社会経験に乏しいということが前提です。恋愛をしているように思わせるという状況を立証させる必要があることと、法律だけではダメで、マインドコントロールを解くことが大事です」

Q.一定の年齢・収入でない人は売り掛けを禁止するなど、ホストクラブが自浄作用を働かせることはできないのでしょうか?
(玄氏)
「本来は、そうあるべきです。私もオーナーや店舗、いろんなところに問いかけましたが、誰も耳を貸しませんでした。売り掛けがなくなると、極論で言えば7~8割の店舗の経営が厳しくなるでしょう」

Q.「売り掛け」を法律で規制するのは、難しいですか?
(亀井氏)
「難しいです。売り掛けは代金の後払いで債権化するという法制度ですので、一般的に規制するのは非常に難しいと思いますから、ピンポイントで条例や特捜でやるなどしないと弊害が大きいです」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年11月10日放送)

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