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『地面師』その衝撃の手口とは―

【独自取材】“大阪・ミナミの地面師”と接触した男性が語る交渉の裏側 「身内のゴタゴタで水面下に…」仕掛けられた“出来過ぎた話”に抱いた違和感

 土地や建物の所有者になりすまし、架空の不動産売却を持ち掛けて代金を騙し取る『地面師詐欺』。近年地価の高騰が著しい大阪・ミナミでは、被害額14億円超となる地面師詐欺が発生し、主犯格とされる福田裕被告(53)と粂凌平被告(25)が逮捕・起訴されました。読売テレビは、実際に福田被告らに取引を持ちかけられ、交渉を行ったという人物を独自取材。一体、どのようにして難を逃れたのか?見え隠れしていた違和感の数々とは―。

■巧妙な偽装工作で会社“乗っ取り”⁉14億円超被害『地面師詐欺』の裏側

地面師詐欺事件の構図

 2025年5月から6月にかけて逮捕された福田裕被告と粂凌平被告が目をつけたのが、一等地にありながら、長年周辺の不動産業者間で「絶対に売りに出ない」とされてきた3つのビルと土地です。警察によると、“指示役”とされる福田被告は、グループの中で“実行役”“なりすまし役”“なりすまし役のサポート”など細かく役割を分けていたといいます。

違法に偽造免許証を作成

 今回の事件で“なりすまし”の対象となったのは、ビルの所有者であり、大阪市にある不動産会社Aの代表女性(70代)でした。捜査関係者などによると、粂被告は、まず“債権者”を装い、区役所でニセの借用書などを提示して、女性の住民票の写しを不正に入手。そこに記された個人情報を基に、免許証を偽造したということです。

偽装工作を重ね、会社を乗っ取った

 2024年1月、再び区役所を訪れた地面師グループは、“偽造免許証”などを使って女性の印鑑登録を勝手に変更しました。粂被告は次に、“女性の孫”になりすまし、ニセの株主総会議事録や印鑑証明書を使い、大阪法務局で法人登記の書き換えを行ったとみられています。こうした巧妙な偽装工作を重ね、地面師たちは登記上“本物の所有者”になりました。

プロの目も欺いた

 そして、2024年2月下旬~3月1日、不動産業者らに「“A社代表の孫”(粂被告)が会社の代表取締役に就任するとともに、祖母(A社代表)から譲り受けた物件の売却を希望している」とウソの情報を流した福田被告。購入を希望した2つの不動産会社は、それぞれ4億円超と10億円超をほとんど現金で支払い、騙し取られました。売買契約の席には、司法書士など不動産売買のプロが同席していましたが、偽装を見破れませんでした。

 なぜ地面師たちは“プロの目”をかいくぐり、14億円超の大金を騙し取れたのか?実は、そのウラに“知られざる失敗”がありました。数々の土地売買に携わった経験を持つ亀井正貴弁護士は、「1月の失敗をもとに手口をブラッシュアップした可能性がある」と指摘します。その失敗とは…?

■「100%の答えが多すぎる」被害を逃れた男性が抱いた“違和感”

実際に取引を持ち掛けられた男性を直撃

 今回、2024年1月に福田被告らの地面師詐欺グループに取引を持ち掛けられたものの、被害を逃れたという不動産会社役員の男性に話を聞くことができました。男性は、仲介業者から大阪・ミナミにあるビルの売却話を紹介されたといいます。

(取引を持ち掛けられた不動産会社の役員)
「すごく有名な土地なので、テンションは上がりました。売るほうも相手が釣れるし、買うほうも釣られますよ。『身内でゴタゴタしているので、水面下で話を進めたい』と言ってきて、そこまでは疑わなかったですね」

 大きな不動産を巡り「水面下で早く話を進めたい」というのは“よくある話”だとして、交渉を始めることにしました。

「人目を避けたい」と言われ…

(取引を持ち掛けられた不動産会社の役員)
「場所は、ホテルの喫茶店やラウンジと思ったんですけど、『人目を避けたい』と言われて。最初は、車の中と言われたんです」

 男性は「車の中は狭すぎる」と断り、ホテルを取ると提案しました。しかし、それもNGで、話し合いの末に了承されたのが、民泊での交渉でした。男性によると、こういった交渉で民泊を使うのは初めてだったということです。

本名を名乗っていたという被告ら

 そして当日、男性の前に現れたのが、福田被告と粂被告でした。2人は本名を名乗っていて、福田被告は“資産管理役”に、粂被告は土地の本当の所有者だった女性(A社代表)の“親族”になりすましていたといいます。男性が、身分確認のため粂被告に免許証などの提示を求めて確認すると、福田被告が「車に乗っておいて」と、なぜか粂被告を車に戻るよう指示したといいます。

民泊で始まった交渉

 その後、民泊の部屋で、福田被告との交渉が始まりました。

(取引を持ち掛けられた不動産会社の役員)
「福田被告からは、不動産を5億5000万で売却したいと言われました。破格です。欲しい物件で、しかも安い」

 男性は、福田被告から“金に焦っている様子”を感じたといいます。しかし、示してきた金額が相場としてはかなり安いことと、福田被告が「親族一同、売却することを承認した」という議事録を持ってきたことで信用し、購入を前向きに考えることにしたといいます。

書類の不備に不信感が…

 しかし、交渉を進める中で、男性が不信感を募らせた出来事がありました。

(取引を持ち掛けられた不動産会社の役員)
「売買契約書も用意していましたが、いろいろ書類の不備がありました。資産管理している不動産のプロという割には、契約書の土地の地番がなかったんです。そういうところで、クエスチョンが出たんですよ」

交渉中の物件は“内見不可”

 さらに―。

(取引を持ち掛けられた不動産会社の役員)
「条件が何か、ちょっと怪しかった。『物件を見に行ってはいけない』とか、内見もできないという…」

 しかし、“物件を見に行ってはいけない”などの条件の理由について、福田被告は「管理人が対立している親族側の人間で、内見すると親族に売却を妨害される可能性がある」と説明したといいます。

“100%の答え”に違和感

(取引を持ち掛けられた不動産会社の役員)
「“親族の内紛がバレたくない”という、うまくストーリーができているんですが、そういうのを積み重ねていった結果、ちょっとおかしいと思いました。100%の答えが多すぎるので、優秀というよりも、ちょっと怪しいと思って…」

 “話がうまく出来過ぎている”と感じた男性は、「書類の不備など、不安を解消してくれたら購入する」と伝えたといいます。

話が二転三転し、連絡が取れなくなった

 すると、福田被告からは「売り先が見つかった」「やはり買ってほしい」などと説明が二転三転。ついに連絡が取れなくなり、男性が被害に遭うことはありませんでした。

(取引を持ち掛けられた不動産会社の役員)
「昔から存在する『地面師』なので、どんどん手を替え品を替え…ですよね」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年9月4日放送)

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