記事

小池都知事が政府の対応に苦言(2月8日会見)

【独自解説】急増する“子どもの感染”どう防ぐ?コロナ治療最前線の小児科医「子どもではなく大人が感染予防対策をきっちりと」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、急がれている3回目のワクチン接種。東京都の小池百合子知事は、政府のコロナ対策に対して「対応が間に合っていない」など苦言を呈しています。

 増加する子ども達の感染や相次ぐ家庭内感染を防ぐための対策を、最前線でコロナ治療にあたっている、日本ワクチン学会理事で小児科医の長崎大学大学院・森内浩幸(もりうち・ひろゆき)教授が解説します。

3回目のワクチン接種、どう進めるべき?

長崎大学大学院 森内浩幸教授

Q.もともと3回目接種は8か月経ったらということでしたが、“第6波”で前倒しになり、自治体の作業は追いついていませんよね?
(長崎大学大学院 森内浩幸教授)
「そうですね。そもそも8か月というのには医学的な根拠は全くなくて、足並みをそろえられるのが8か月ということだけが理由だと思います。デルタ株の時でも6か月、オミクロン株になって3か月でも打たないといけないというのが、世界的には医学的な根拠として推奨されていたことですので、もっともっと前倒しをする、たとえそれが足並みそろわなくても、やるべきだったと思います。」

大阪の大規模接種会場の予約状況(2月9日現在)

 2月9日現在、大阪の大規模接種会場の予約状況をみると、大きな2つの会場では予約人数にまだ余裕があることが判りました。その原因として、大規模接種会場で接種できるモデルナ社製のワクチンは「副反応が強い」と敬遠する人がいることや、ワクチンを打たない選択をする人、打ちたくても会場まで行く足がないという人がいるといったことが考えられます。

モデルナの交互接種に対する心配は?

Q.今の状況はどうお考えですか?
(長崎大学大学院 森内浩幸教授)
「まず、モデルナを敬遠している人たちは漠然とした不安があって、選べるならファイザーがいいというふうに思っているので、最初から高齢者はモデルナ、若い人はファイザーとした方がいいと思います。モデルナは有効性も強い分、副反応も出ますが、高齢者はそんなに副反応が出ませんので、あんまり気にすることはないと思います。逆にモデルナの方が、より抗体が高く上がるメリットがありますので、私が自分で選べるんだったら、3回目は絶対モデルナだと思いました。3回目は量が半分になっていることもありますので、2回目よりも副反応が強くなる人が少ないと思います。」

Q.デルタ株流行のときはすぐに予約が埋まったんですが、今回余裕があるのは「オミクロンは軽いのではないか」という意識の違いもあるのでしょうか?
(長崎大学大学院 森内浩幸教授)
「そうですね。でも、オミクロン株を軽く見てはいけないと思います。今回の新型コロナは、致死率は1%~2%程度ですが、感染力が非常に強いので、あっという間に広がって、結果としては圧倒的に多くの死者を出しています。そしてインフルエンザと同じように、肺炎だけで命を落としてしまうのではなくて、持病が重くなる形で亡くなるケースがあります。実はインフルエンザが流行したときの、インフルエンザの死亡の圧倒的大多数は、そういう形で命を落としています。それを考えると、オミクロン株が“インフルエンザ化”してきています。ただ、インフルエンザと同じだと思うためには、3回目のワクチン接種が終わり、重症化するリスクのある人に点滴や飲み薬を使うことができるようにならなくてはなりません。デンマークのように、65歳以上が94%・95%も接種している国であれば、そういうことは十分可能だと思います。」

感染予防対策のあり方は?「子どもではなく大人がしっかりと」

感染予防対策のあり方は?「子どもではなく大人がしっかりと」

 森内教授は、家庭内感染を防ぐための対策として、子どもではなく大人がマスクを着用する、大人がワクチンを接種し重症化を防ぐ、部屋の換気、子どもがよく触るおもちゃなどの消毒、子どもに症状が出た場合には保育所などには預けない、などをあげています。

Q.子どもはなるべく自由にさせてあげるということが理想ということですか?
(長崎大学大学院 森内浩幸教授)
「そう思います。例えば、昨年の夏に、保育所に預けるぐらいの子どもたちにとっては何十人もの命を奪う『RSウイルス』が流行したときでも、子どもたちにマスクだとか休園だなんて全くやってないんですよ。インフルエンザだって、1歳~9歳の子どもたちの死因の第5位で、毎年何十人もの命を奪っていますが、今はそれより圧倒的に軽い基準で学校や保育園を閉めてしまっている。それは子どものことを何も考えていないんですよ。子どものことを考えているんだったら、もっと大人が色々しているはずです。大人の都合で、子どもからうつされたくないと思うんだったら、重症化を防ぐためにワクチンを打ったり、自分たちでもっともっと感染予防対策をきっちりすれば、それで済むことだと思います。」

必要なのは“オミクロン株仕様”の病床管理

厚労省が発表した新たな指針

 厚生労働省は病床のひっ迫を防ぐため、オミクロン株の特性を踏まえた新たな方針を発表しました。新型コロナでの入院4日目以降で、中等症になっていない人は、自宅療養かコロナ病床以外への転院の積極的検討を推奨しています。

Q.オミクロン株を甘く見ているわけではありませんが、コロナに偏在し過ぎると、本当に一刻を争う病気が救えないっていうおかしな状況に、今なりつつありませんか?
(長崎大学大学院 森内浩幸教授)
「おっしゃる通りだと思います。コロナの患者さんたちを診るにしても、どこで・どういう形で診るのかの見直しは重要だと思います。確かに今オミクロン株になって、発症から大体3~4日ぐらいまでみて重症化していなければ、コロナそのものが重症化することはないだろうと。その代わり、もともと持っている病気が悪くなることは当然あるわけですので、そのステージになったら、やっぱり別の病院でちゃんと診ていくことが必要です。心筋梗塞でも脳卒中でも交通事故でも、そういう救急なことに対応できる、病院の本来の機能をちゃんと残しておかないと、日本全体として国民の命を守る・健康を守るということには繋がらないと思います。役割分担を“オミクロン株仕様”でどんどん進めていかないと、不均衡が改善されないと思います。」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年2月9日放送)

SHARE
Twitter
facebook
Line

おすすめ記事

記事一覧へ

MMDD日(●)の放送内容

※都合により、番組内容・放送日時が変更される場合があります。ご了承ください。

※地域により放送時間・内容が一部異なります。