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習近平国家主席 新年の挨拶(2022年)

【独自解説】イギリスで“中国スパイ”発見!?中国側「007の見すぎ」と反発、カナダとはオミクロン株感染めぐり火花、国内では“闇塾”問題…五輪を前に様々な危機に直面する中国のいま

 中国・習近平国家主席は、新年の挨拶で「世界は中国に期待しており、中国の準備は万全だ」と演説していました。しかし、各地で確認される「オミクロン株」の市中感染で“ゼロコロナ政策”を世界は危険視。北京オリンピックへの不安、急激に進んでいるという少子高齢化や“闇塾”問題、さらにはイギリス国会で“スパイ活動疑惑”が持ち上がるなど、いま中国では無視できない様々な危機に直面しています。中国事情に詳しい、ジャーナリストの福島香織(ふくしま・かおり)氏に真相を聞きました。

イギリスが報じた“中国スパイ”の存在

 1月13日、イギリスで、中国に関する衝撃のニュースが報じられました。新聞の見出しには“中国スパイがイギリス議会で工作活動”の文字が。警告を出したのは、イギリス国内で情報収集活動を行う「MI5(情報局保安部)」です。「BBC」などによると、中国政府のスパイとして疑惑が浮上したのは『クリスティン・リー』という女性。リー氏はロンドンなどで法律事務所を経営し、中国共産党の工作部と秘密裏に連携。イギリスの野党議員に、6年間で42万ポンド、日本円で約6500万円を献金し“政治に介入していた”とされています。

 中国の“スパイ疑惑”は、2021年からくすぶっていました。イギリスの人気スパイ映画「007」にも登場する、秘密情報部・МI6が異例の会見を開き、“我々とは異なる価値観を持つ独裁的国家”と中国を猛批判していたのです。これに対し、中国側でも、異例の動きがありました。

 中国国営メディア「新華社通信」が“パロディー動画”を公開したのです。登場する主人公の名前は、ジェームズ・ボンドならぬ「ジェームズ・ポンド」。コードネームは「0.07」。元ネタはもちろん「007」です。中には、こんな意味深なやり取りが・・・

(CIAの声) 「最高の友には最高の贈り物をしないと」
(女性)「待って、なぜ急にイギリス訛りになったの?」
(CIAの声) 「なぜなら私はイギリスをスパイする任務を与えられたからだよ」

 「007」のパロディー動画で、イギリス側を“けん制”したともみえる中国。その後、イギリス議会では、与党・保守党のイアン・ダンカン・スミス元党首が「中国政府のスパイが国会内で活動し、議員と結託して政治に介入している。これは重大な懸念事項だ。」と、スパイ疑惑に危機感を露にしました。しかし、中国の外務省・汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は、「『007』を見すぎて余計な連想をしすぎているかもしれない」と、イギリスの主張は映画の見過ぎだと言い放ち、「政治介入は、する必要もないし、したこともない」と反論しています。

急速な少子高齢化と“結婚できない男性”の激増

深刻な少子高齢化…消える働く世代

一方、中国国内では、人口の減少と高齢化が問題になっています。1979年以来、人口抑制策として「一人っ子政策」を進めてきた中国。しかし、急速な少子高齢化を背景に、2016年に政策を撤廃。2021年には、3人まで産めるように出産制限を緩和しましたが、労働人口の減少に歯止めがかからない状況です。2021年の出生数は、前年より138万人少ない1062万人。  人口1000人当たりの出生率は7.52で、建国以来最低になったといいます。

元・中国駐在記者 フリージャーナリスト 福島香織氏

Q.少子高齢化というのは、豊かになった国では起こることですよね?
(元・中国駐在記者 福島香織氏)
「中国の場合は、あまりにも急激に起こったことと、日本と違って高齢者がお金を持っていないことが問題で、まだ福祉政策が完成されていないので、急に市場が縮小したり、断崖絶壁・ナイアガラのように経済が悪化をしていく可能性が指摘されています。高齢者の面倒を、少ない若者で福祉政策ではなく、実費を払ってみなくてはいけない、ということが問題です。子どもを増やそうと思っても、教育費が高いなどの理由で、みんな2人・3人とは産まない。この少ない子どもたちが高学歴を目指しているにもかかわらず、高学歴者の就職率というのは、あまり広がっていないという問題もあって、全体的に貧困になっていくことが今、懸念されているところです。」

激増する“結婚できない男性”

そして、多くの家庭は一家の跡取りに男の子を欲しがったため、現在でも男性が女性より3000万人以上も多く、結婚できない男性が激増。加えて、中国の独身男性の重荷となっているのが、結婚するにあたり求められる“3大条件”「良い家」・「車」・「高額の結納金」だと言われています。しかし、これらを若者が用意するのは難しく、全て親が準備するという厳しい状況だということです。

(元・中国駐在記者 福島香織氏)
「ほとんどお金結婚です。経済婚って言ったらおかしいですけれども、中国の貧しい人たちがステップアップするには、いい学歴を取って高給を取る職に就くとか官僚に出世する、あるいは金持ちの相手と結婚する、大体この2つぐらいなんです。社会の階層の固定化というのが進んでいる大変な時代ではあります。」

摘発される“闇塾”…目指すは“14億総ブルーカラー化”!?

超学歴社会の中国 子育てコストが激増している

 “大学入試で人生が決まる”と言われるほど、超学歴社会の中国。親たちは多額の費用を払い、複数の塾に子どもを通わせていましたが、行き過ぎた受験戦争を抑えるため、2021年に政府が打ち出したのが“学習塾規制”。塾の新設は認められず、既存の塾も営利目的の活動は禁止されました。その結果、塾の閉鎖や倒産が相次ぎ、失業者は1000万人に上るともいわれています。

 さらに規制の裏で問題になっているのが、違法に営業するいわゆる“闇塾”の存在。例えば、表向きは「ピアノ教室」を装いながら、実際はピアノの前に子どもを座らせて勉強を教えていたことが発覚。他にも「絵画教室」や「ヨガ教室」を装う“闇塾”が各地にでき、当局が続々と摘発しているといいます。

 福島氏は、「格差を生む“学歴偏重”を是正するため塾などの規制を強化し、同時に職業訓練校を拡充してレベルの高い技術を持つ若者を育成する、習近平国家主席による“14億総ブルーカラー化”だ」といいます。

Q. “14億総ブルー化”ということはつまり、超エリートは一部でいい、あとは労働者になりなさいと。また“世界の工場”の中国に戻ろうとしているのですか?
(元・中国駐在記者 福島香織氏)
「そういうふうに見えますね。本当の天才は、一生懸命に塾に行かなくても大学に行くだろうと。今問題なのは、みんなが高学歴を目指していることで、実際すごく中国の進学率は高いのですが、大学に行くための勉強コストがものすごく高いことです。このコストを回収できるだけのホワイトカラーの職というのは、中国には用意されていません。高学歴失業の問題が今、非常に深刻です。学校の授業だけで大学に行けないような子どもたちは、大学に行かないで職業訓練校に行きなさいよということです。」

五輪を前に各地でロックダウン 感染者めぐる発言でカナダと衝突も

オミクロン感染の原因が「カナダからの郵便物」と発言

 そして、2月4日の開幕が目前に迫ってきた北京オリンピック。しかし現在、中国各地で「オミクロン株」の市中感染が確認されていて、12月23日から西安が、1月10日から安陽市が、1月12日からは天津市の一部が、ロックダウンされています。さらに、北京市での初めての「オミクロン株」感染者を巡る中国側の発言が、外交問題に発展。北京市当局が会見で、「カナダからの国際郵便物を介して感染した可能性が否定できない」と指摘したのです。カナダの保健相は「全く突拍子もない見方だ!」と反発しています。

Q.オリンピックを前に“ゼロコロナ政策”でロックダウンしているんですが、一方、春節で12憶の人が動くのは許しているんですね?
(元・中国駐在記者 福島香織氏)
「北京は完全に人の動きを制止していますが、春節での移動を止めると大変なことになるので、それはやらないと思うんです。専制国家ならではのオミクロン対策・ゼロコロナ対策が実施されていますので、これで五輪をやってしまうと私は、五輪が“専制国家の宣伝”になってしまうんじゃないかな、というふうには見ています。」

 習近平国家主席が向かう中国が今後どうなっていくのか、注目です。

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年1月19日放送)

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