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「文書通信交通滞在費」とは?

【独自解説】国会議員の“文通費” 在職1日で100万円支給に批判の声!なぜ日割りにしない? 元・経産省官僚「野党提案を与党がどこまで真摯に向き合って、法律を変えるかがポイント」

「在職1日で100万円」支給

 在職たった1日で100万円。国会議員に支給される「文書通信交通滞在費」、いわゆる「文通費」について波紋が広がっている問題で、自民党の茂木幹事長は、10月31日に当選したばかりの議員については、10月分の「文通費」を全額、寄付する方針を示しました。内情を良く知る元経産省官僚で政策アナリストの石川和男さんが独自解説します。

「文書通信交通滞在費」とは?

 疑問の声が上がっている「文書通信交通滞在費」(以後、「文通費」と記載)。名目は、郵送代、通信費、交通費などで、国会議員一人当たり月々100万円が支給されます。年間にすると1200万円、税金で賄われています。国会議員の交通費には、そもそも特権があります。民営バス・鉄道・地下鉄は無料、JR、航空会社の運賃は公費で負担されます。にもかかわらず、この「文通費」は非課税で、領収書の提出は不要、使途の報告や返還義務はなく、目的外に使用しても、罪に問われません。

元経済産業省官僚・政策アナリスト・石川和男さん

Q.この「文通費」の100万円支給については、知っていましたか?

(元経済産業省官僚・政策アナリスト・石川和男さん)
「私は元官僚ですので、議員じゃないにもかかわらず、なぜ私がこの問題をしゃべることが出来るかというと、役人時代に当然政治家の方と色々お付き合いがあって、その時に本人から自慢気に聞いたことあるんです。調べたら法律があって、他にも色々“何とか費”はあるんですけれども、この『文通費』というのは、便利なものが支給されているなと、当時はあんまり問題意識がなかったんですが、官僚組織というのを離れて、政府から一歩距離を置いて見てみると、これは相当非常識ですね。」

「文通費」は何に使われる?

 「文通費」は、実際は何に使われているのかというと、石川さんによると、法律上では文書はハガキや封書代など、通信は郵送代や電話代など、交通費は航空運賃など、滞在費は宿泊代などとなっていますが、実際は議員本人の日ごろの小遣いや議員事務所スタッフへの小遣いなどになっているということです。

Q.交通費は、国会議員はそもそも無料が多いですよね? 交通費が要るとするならば?

(石川和男さん)
「タクシーですね。20年近く役人をやっているので、1回か2回こういう経験があると思いますが、国会議員と仕事の打ち合わせをすると帰りが遅くなる。議員と丁々発止の議論を真面目にやって、終電が無くなって泊まる所もない時に、『はい、これで帰ってよ』と言って交通費で貰う、議員もそれを使って議員宿舎や自宅に帰るということが、ままありました。昔は。今は分かりません。そういう点でいうとこの交通費は、そういうところに使われていることもあるんだなと私は思います。」

Q.現金でもらうのですか?
「そう、乗る前に貰うのです。」

Q.宿泊代というのは、地元には自宅があり、東京には議員宿舎があるので、地方に行った時の宿泊代ですか?
「宿泊代が含まれる滞在費っていう言葉は、昭和22年からあるんですよ。当時の世情を考えると、普通の会社員の出張と同じようなことだったと思うんですが。これが長年の慣例でそうじゃなくなってきて、自分の懐に入れるとかなんでしょうか。法律を作る時は、ちゃんと考えるんです。どの法律もそうなんですけど、とくに運用がいい加減でかつ、この文通費のような国会議員のための法律というのは、我々一般市民もほとんど分かりません。長年その条文をずっと変えないでやってくると膿がドンドン溜まってくるので、今となっては『滞在費って何ですか』となりますよね。」

維新の新人議員が疑問を投げかけた

維新の新人議員が実態暴露

 この「文通費」に関して、日本維新の会の新人議員が、こんな実態を暴露し、波紋を呼びました。元熊本県副知事で維新の小野泰輔衆院議員(47)が11月12日に投稿サイトに文書を次のような公開しました。「10月が31日の一日しか任期がなかったのに、 “文書通信交通滞在費”は1か月分の満額100万円が支払われた。」

 また、税理士でもある、維新の池下卓衆院議員(46)は、11月14日にNHK「日曜討論」で次のように発言しました。「10月31日に、議員になったが、『文書通信交通滞在費』は税金。任期たった1日で100万円出るという世間の常識では考えられないようなことがありました。」

「文通費」の問題点は?

議員の“お小遣い”?と問題視されている

“議員のお小遣い”とも揶揄され、かなり前から問題視されている「文通費」の盲点は、“使途を報告する義務がない”ところにあります。過去には、「文通費」を投資などに流用する議員もいて、“国会議員の第二の給与”と問題視されています。

ちなみに、国会議員になると、基本給は年間約1500万円、ボーナスは約600万円、文書通信交通滞在費は1200万円、立法事務費は780万円、秘書給与は1800~2400万円の合計で約6000万円~6500万円となります。

Q.「文通費」は年間1200万円出ますが、余ったらポケットに入れていいのですか?

(石川和男さん)
「領収書を求めないというルールになっているところからして、そもそも使途は自由だってことなんですよね。だから余っているかどうかについても、実際お金に色がないので、それが歳費なのか、文通費なのか、相当グチャグチャになっているのかなと思います。これはルールが悪いですね。」

Q. もちろん税金なので、我々としたら何にどれぐらい使ったかっていうのは開示は当然して欲しいですが、一方で議員は選挙とか、地元に私設秘書や事務所を設けたりとか、けっこうお金がかかるそうですね?

(石川和男さん)
「そうです、お金はかかる。確かにけしからんという意見もある一方で、議員はほんと忙しいから、いちいち領収書を取るだとか細かいこと言ったら政治活動ができないとか、まあある意味言い訳というか、これは正しいという言い方もあれば、そうじゃないって意見もあると思うんですが、『文通費』というのは、戦後すぐ昭和22年に出来た法律なんですよ。昭和22年当時の日本の状況を私なりに調べてみたんですが、今とは全然違った風景が見えてくるんです。その時に今のように、お金のかかる政治っていうのを昭和22年にやっていたかというと、立法趣旨は全く違っていて、当時は物価も安いんですけど1日何十円っていう世界で。それが巡り巡ってここまできて今みたいな金額になったのは、私の記憶が正しければ、1990年代の前半かと思うんですけど。もともと、この法律の趣旨は、例えば議員が忙しいから何か他のものに使っていいという趣旨ではないんです。議員はお金がかかるというのは分かりますが、これについてこのまま放置するというのは、僕はないと思いますね。」

Q.ある議員に聞いたら、「選挙はお金が掛かるので、『文通費』を地道に貯めておかないと選挙費用が出ないのです」と言われましたが?

「それは私相当、当たっていると思いますね。選挙に出る方っていうのは現職議員の方でも新人でも、とにかくやたら金がかかること、これは本当に皆さんおっしゃっているので、選挙の在り方そのものについて、金のかからない選挙をと昔から言っていますよね。なかなかそれが直らないから、それを直してからっていうふうな意見もあるんですけども、だからといってこの『文通費』という名目のものを選挙に当てていいかっていったら、それは駄目ですよ、立法趣旨からしても、駄目です。」

あの人から厳しい指摘

橋下徹氏の主張(1)「文通費」支給に“喝”

 「文通費」の満額支給をめぐってこの人が吠えています。橋下徹氏が、11月14日にツイッターで発信しました。

「国会議員の税率からすると、100万円を手元に残すなら約200万円の収入が必要。しかも開票の31日20時から、1日0時までの たった4時間で200万円!それが我々の納税で賄われるのです」

橋下徹氏の主張(2)「文通費」支給に“喝”

「立憲民主も国民民主も、れいわも、共産も起きてまっか? 山本太郎さんも4時間で200万円相当の収入を丸取りでっか?丸取りなら、あんたらの言うこと信用ならんで!」

大阪府・吉村知事の主張

 一方で、大阪の吉村知事も「文通費」の批判をしましたが、翌日、自身にブーメランとなって返ってきた形になりました。

 吉村知事の11月14日のツイッターには「領収書の要らない経費って 民間である? 税務署から問われて “領収書はないけど経費です!”って認められる?おかしいよ」と書かれていました。

 しかし翌日のツイッターで「僕自身、6年前に国会議員の身分を捨て、橋下市長の後を受けて、大阪市長選に挑戦しました。その際、議員辞職備が10月1日だったので記憶が曖昧ですが、文通費を受けています。今回の文通費のおかしさを僕自身が取り上げています。ケジメがつきませんから、6年前のことですが、満額寄付を致します」と発信しました。

各党の反応は?

自民 茂木幹事長は(11月16日)

 「文通費」に関して、日本維新の会の松井一郎代表は、11月15日、「永田町というのは、世間の常識からかけ離れている。受け取らざるを得ないらしい。返せない。まずは返せるように法律改正が必要だ」と述べました。さらに、維新の新人議員の「文通費」については、100万円を党費として徴収し“コロナ”で困っている人などに全額寄付する考えを示しました。

 では、与党の自民・公明や野党第一党・立憲はどうするのでしょうか。11月16日、自民の茂木幹事長は、

(自民・茂木幹事長)
「1日しか議員でない方、場合によっては当選したのが11月1日だと0日かもしれない。常識的に全額返金してもらうのがいいと私は思います。いずれにしろ、自民党としては、やります。」

 と、新人議員に「全額寄付」を求める方針を表明。それに対し公明・山口代表は…

(公明・山口代表)
「我が党として、どう今後対応していくべきか検討していきたいと思っている。」
Q.返還、寄付という形で戻す選択肢は現時点ではある?
「検討した上で、合意を造る努力をしていくということが大事だと思っている。」

立憲 早急に議論を(11月16日)

 立憲の福山幹事長は役員会の後、こう語りました。

(立憲・福山幹事長)
「文通費について、日割りで法案を出す。これはもういち早く出す。」

国民 玉木代表は(11月15日)

国民民主党の玉木雄一郎代表は、11月15日のツイッターで

(国民・玉木代表)
「文書通信交通滞在費の問題点はこれまでも指摘されてきました。制度改正できず維持してきたことは、立法府の一員として大変申し訳なく思います。国民民主党としても、日割での給付を可能とするため与野党各党との協議を進めるよう古川国対委員長に指示をしました。」

「文通費」今後、どうすればいいのか?

石川さんの提言

 石川さんは「領収書決済にすれば良い」と提言しています。

(石川和男さん)
「普通の会社員が会社に経費を経理部に要求するのと同じやり方なんです。それをやるという事。だから普通のことやってくれということなのです。」

Q.「100万円かかるのですよ」と言われれば、国民も納得すると思いますが、本当に100万円もかかっているのですか?というところなのですが?

(石川和男さん)
「結局、何に使ったんですかってことですよ。50万円でも100万円でもかかるのは分かっているんで、お付き合いしてればね。だけど、何に使ったんですかっていうところを、ちゃんと領収書を取る、国会議員は忙しくて領主書を取る暇ないと言いますけど、そんなこと言ったら、中小企業の社長だってたいへんですよ。要するに普通の人と同じ事やっていれば、文句が出ないと思うんですけれども、グレーで、滞在費であるとか通信費だ文章費だって、何言ってるんだお前みたいな話になっているんで。おかしいことになっているので、ちゃんと日割りだろうと領収書添付だろうと、あと一番いいのが電子マネー化するのが一番いいと思うんですけど、そういうふうに、ルールをきちんと変更して、有権者から『これ何に使ったのですか』って言われた時は、『これなんですよ』と言えるぐらいにしてくださいねということです。」

石川さんの指摘

 また、石川さんは「日割り給付にするには、与党が動くかどうかがカギ」と指摘しています。

(石川和男さん)
「茂木幹事長や公明党の山口代表、与党の代表の方々が『各党会派に任せると、これから検討』っておっしゃっているというのは、各党会派で検討ということは『法律は変えない』ということなんですよ。だけど、これは驚くべきことに、100万円配ると法律に書いてある。なぜ与党がカギかというと、与党が過半数とっているじゃないですか。自民党は絶対安定多数とっているんで、与党がウンと言わなきゃ、法律は変えられないのです。だから野党が言う法案を、与党がどこまでそれに真摯に向き合って法律を変えるか、それがポイントなんです。」

Q. 国会で新しい法律を作り直すってなった時に、与野党の人たちがどれだけ賛成するのか、反対するのか、これは大注目ですね?

「そう、見ものですよ。どういう党がどういう提案で、普通の庶民から有権者から後ろ指差されないようなものを提案してくるかということで。与党の幹事長や代表が言ったことがいいのか、それとも野党の方々が言っていることがいいのか、野党もみんな色々あるんだけど、これは尾を引きます。ちゃんとやらなければダメです。」

(情報ライブミヤネ屋 2021年11月16日放送)

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