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芸能リポーター 駒井千佳子さん

【独自解説】名優・市川段四郎さん「“脇役”の立場を息子に強いたくない…」猿之助さんを想う親心と兄・猿翁さんとの宿縁

 歌舞伎役者として、演出家として、類稀な才能に恵まれた市川猿之助さん。影響を与えたであろうご両親は、どんな方だったのでしょうか?猿之助さんの父・市川段四郎さんが抱えていた猿翁さんとの宿縁、澤瀉屋一族の歴史、そして近年の猿之助さん親子の様子について、芸能レポーター駒井千佳子さんの解説です。

名優と呼ばれた父・市川段四郎さん

 “名優”と呼ばれた猿之助さんの父・市川段四郎さんは、初代・市川亀治郎を名乗り活躍していましたが、17歳の時に祖父と父が他界しました。1966年から兄・猿翁さんと自主公演を開催し、スーパー歌舞伎・古典歌舞伎で重要な脇役を担い、幅広い演技力で澤瀉屋を支えた“副将格”です。

Q.段四郎さんは祖父・父という後ろ盾を失い、兄の猿翁さんと二人で、17歳で自主公演をやったのですね?
(駒井さん)
「猿翁さんは、何百年と続いた歌舞伎の歴史を全て紐解いて調べ直し、その中から『“宙乗り”をもう一度復活させよう』ということで、1968年に復活させました。それを支えていたのが、段四郎さんです。段四郎さんは穏やかで、非常に気を遣ってくださる方で、実直で、芸事に物凄く秀でていた方だったと、周囲の方は皆さんおっしゃいます」

息子の成功を支えた母

 猿之助さんのお母様は、京都の友禅画家の家に生まれ、日本舞踊「坂東流」の踊りをたしなみました。1974年に段四郎さんと結婚し、翌年に猿之助さんが誕生。女将の“まとめ役”として、ごひいき筋の評判も大変良かったということです。また、梨園関係者によりますと、猿之助さんを「カメちゃん」と呼んで溺愛していて、学校行事には積極的に参加するなど、ずっと猿之助さんを支えていたといいます。

Q.ごひいき筋へのご挨拶も重要ですよね?
(駒井さん)
「ごひいき筋のお宅に回ってのご挨拶や、季節のご挨拶などもありますが、そういう細かいことをきちんとこなされる方で、他の奥様方が集まったときにも、“まとめ役”をなさっていたということです。皆さんから非常に信用されている、しっかりしたお母さまだったということです」

猿之助さん「家族が先生なんです」

 猿之助さんは以前、インタビューで「母は坂東流の踊りを習っていたので、芸については厳しい。父は若い頃テレビで『遠山の金さん』を演じていたことがあったので、大河ドラマの信玄役については、立ち振る舞い等について注意してくれます。家族が先生なんです」と、ご両親のことを話していました。

“猿之助劇団”離脱の想い

 2003年、段四郎さんは当時27歳だった猿之助さんと共に、猿翁さんが率いる劇団を一度離れたことがありました。猿之助さんは離脱について、「『出るということは、生ぬるいものじゃない』と言われたが、決意は揺るがなかった。大きな傘の中で平凡な道を行くより、いろいろ試したかった」と語っていました。

段四郎さんの親心

 猿翁さんの劇団を親子で離れた背景には、スーパー歌舞伎における段四郎さんの体力的問題と、「息子に古典歌舞伎を学ばせたい」という思いもありました。また、「猿翁と一緒にいたら、ずっと主役にはなれない。“生涯、脇役”の立場を、息子に強いたくない」という、ご自身が猿翁さんを支える立場だったが故の親心もあったといいます。

Q.一度は猿翁さんの下を離れて、古典で基礎を固めてから、スーパー歌舞伎に戻っての“猿之助襲名”なのですね?
(駒井さん)
「当時、猿之助さんは亀治郎を名乗っていたのですが、初代・亀治郎はお父様の段四郎さんです。段四郎さんは、亀治郎を大きくしてくれたのは息子だから、この名前を大切にしてほしいと、それが誇りだったそうです。猿之助襲名の際は、亀治郎という名前がなくなってしまうことに対しての寂しさもあったと思いますが、やはり澤瀉屋の中心になるのは“猿之助”ですから、『重責だと思うが、しっかり継いでほしい。息子なら、できる』という誇りの気持ちもあったと思います」

最近の段四郎さんの様子

 そんな段四郎さんですが、近年は体調が優れず、舞台から遠ざかっていました。最近の段四郎さんについて、歌舞伎評論家は「肝臓がんを患っており、自宅で療養していると聞いた。それ以前からセリフを覚えるのに苦労していたようだ」と話しており、梨園関係者も「認知症を患って、寝たきりに近い状態が続き、要介護認定を受けて、猿之助さんの母が世話をしていた」と話していたということです。

Q.舞台では市川團子さんや中村隼人さんが代役を務めていますが、あの日、猿之助さん親子に何が起きたのかという真相が判明しないと、なかなか前に進めませんね。
(駒井さん)
「映画の公開も控えていますが、捜査の進み具合がどうなのかというところで、今は様子を見ているという状況です」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年5月26日放送)

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