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「通行禁止‼」看板も…侵入する登山者ら

【無謀登山】「タクシーを呼ぶかのように気軽に救助を要請する風潮」登山期間外の富士山に登る外国人急増 “救助費用の自己負担”法的に問題は?

 登山期間外の富士山に登ろうとする外国人が急増し、救助に追われる地元自治体。多大な救助費用に使われるのは、静岡県民・山梨県民の税金です。“救助費用の自己負担”について両県の首長らから言及が相次いでいますが、果たして実現可能なのか?法的な問題は?弁護士・野村修也氏の解説です。

■SNSの間違った情報が原因?富士山に無謀登山する外国人急増

2025年の富士山登山期間

 2025年の富士山登山期間(五合目~山頂)は、吉田ルート(山梨県側)が7月1日~9月10日、その他ルートが7月10日~9月10日となっています。

「一年中登れると思った」驚きの言い分

 しかし、5月17日午前11時45分ごろ、「SNSの投稿に富士山で動けなくなっている人がいる」と通報があり、静岡県警の救助隊7人が出動。午後4時半ごろ、救助隊が中国籍・自称大学生の男性2人を発見しました。男性らは、「一年中、富士山に登れると思った」と話したということです。

 また、4月22日には、中国籍の男子大学生(27)が山頂付近で「滑り止めのアイゼンを紛失した」として、山梨県側がヘリで救助しました。しかし、その4日後の同月26日、その男子大学生は再び富士山に登り、体調不良に。今度は、静岡県警の救助隊が担架で下ろして救助しました。再び登った理由について、「山頂に携帯電話を置き忘れて取りに行った」と話したといいます。

 富士山で山岳ガイドを務めているという男性を取材すると、「SNSでは『6月が一番富士山に登れる』『静かで良い』など間違った情報が飛び交っているみたいで、そういう情報を鵜呑みにして登る外国人がいるようだ」と話していました。

閉山期間中の登山「法規制は困難」か

 2025年4月26日~5月5日までの山梨県内の山岳遭難者は、遭難数12件(うち6件が単独登山)・死亡2人となっています。しかし、山梨・富士吉田市の堀内茂市長によると、閉山期間中の登山については「法規制は困難、法的にできない」ということです。

弁護士・野村修也氏

Q.法規制が困難な理由は?
(弁護士・野村修也氏)
「憲法にある『移動の自由』を侵害すると主張する人がいるのかもしれません。ただ、もう一方には『公共の福祉』があります。公共の福祉であれば、そういった人権もある程度の制約を受けなければいけませんので、条例で『この期間中には届け出をして許可を貰わなければ入山してはいけない』と定めて、違反したら行政罰・過料を科すことができるのではないかと、私は思います」

■多大な救助費用は県民の税金から…救助の有料化を要望する考え示す

救助費用は「県民の税金から賄われる」

 救助費用の負担について、富士吉田市・堀内市長は「救出に対し県警ヘリコプターを出すのにも多大な金額がかかる。燃料費等を含めて60万~80万円かかるケースも多々ある。これらの費用も全て県民の税金から賄われる」と話しています。

 消防組織法(第八条)では「市町村の消防に要する費用は当該市町村がこれを負担しなければならない」となっていて、公的機関の救助は自治体負担です。

 一方、民間の救助は自己負担で、山岳遭難捜索費用(一般エリア)は隊員一日5万円×人数(2~10人)+隊員経費+事務経費など。民間の救助が発生するのは、例えば公的機関での捜索が打ち切られ、家族らが引き続き捜索を依頼する場合などだということです。

“救助費用の自己負担”議論に

 静岡県・鈴木康友知事は、「法律では救難救助は無償。ルールを無視したときの遭難救助費用の自己負担などの在り方は、国で検討するのが良いのではないか」としていて、富士吉田市・堀内市長も、「まるでタクシーを呼ぶかのように気軽に救助を要請する風潮があると思う。安易に登らないという警告の意味で有料化」として、ことしの夏山シーズン終了までに、県や国に対し救助の有料化を要望する考えを示しています。

■“救助有料化”、法的に問題は?

埼玉県では2018年から救助有料化

 一方で、救助有料の自治体もあります。埼玉県では2018年から、県内の6つの山(指定されたエリア)で県の防災ヘリで救助した場合、救助者から『手数料』を徴収。救助のために飛行した時間5分ごとに8000円(2024年3月までは5分ごとに5000円)となっています。これまで有料での出動が34件以上あり、徴収額は計217万6000円だということです。

Q.一つ難しいのは、遭難しても「お金がかかるから救助は呼ばないで」と言う人が出てくるかもしれませんよね?
(野村弁護士)
「それは考えなければいけないと思います。ただ、埼玉県では条例を作って有料化できているので、『必ず無償でなければいけない』ではなく『無償にするのであれば当該市町村が負担すること』と、法律には書いてあるわけです。つまり、『他の市町村や国が負担することはない』ということなので、逆に言えば、県民の税金で賄えないと判断したのであれば、条例で一定程度の手数料を取るのは合理的だと思います。埼玉県の場合、子どもたちの救助などについては無料と例外規定はちゃんと書いてありますから、本当に必要なものに限っては手数料を取る形にはできると思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年5月20日放送)

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