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【危険】知らない間に赤の他人が“きょうだい”に!?勝手に印鑑を変更され3000万円借り入れに株式譲渡まで…『養子縁組』のハードルの低さを悪用
2026年4月4日 UP
高齢者の一人暮らしが増える中、財産目当てで知らない間に赤の他人が家族になっているという問題が起きています。実際に被害に遭った方を取材すると『養子縁組』のハードルの低さが浮き彫りになりました。『養子縁組』制度を悪用されないための対策を亀井正貴弁護士が解説します。
■知らない間に知人男性が父親と『養子縁組』?
『養子縁組』とは、血のつながりのない子どもとの間に法律上の『親子関係』をつくる制度のことです。この制度を巡り、都内に住む60代の女性が、思わぬ“トラブル”に巻き込まれました。
女性には、89歳になる父親がいましたが、『認知症』と診断されたことで、女性が成年後見人となり財産を守ってきました。父親は、一人暮らしを続けることを望んだため、離れて暮らす女性は毎日のように家に通い、身の回りの世話をしていましたが、ある日、役所から届いた一通の知らせを見て、言葉を失ったといいます。
そこに書かれていたのは、父親が知らない間に、75歳の知人男性と『養子縁組』を行ったという内容でした。
【父親との実際のやりとり】
(娘の60代女性)
「お父さんは最近、〇〇(知人男性)という人と養子縁組した?」
(父親)
「いや、してない」
(娘の60代女性)
「この書類に、お父さんの名前が書いてあるけど、これはお父さんが書いたの?」
(父親)
「いや、俺の字じゃないね。俺はもう少し下手な字だから。誰かが俺に代わって書いたんだね」
父親は、「養子縁組をしたことはない」と否定しました。
なぜ、赤の他人が突然、養子になったのでしょうか?実は知人男性は、かねてより“怪しい動き”をしていたといいます。かつて、機材メーカーの社長を務めていた父親。知人男性とは、仕事を通じて数年前に知り合い、頻繁に家を訪れるようになったということです。
(娘の60代女性)
「うちの父が住んでいたマンションに、しょっちゅう出入りしていました。いろいろ“うまい話”を持ち掛けていたみたいです。おだてて持ち上げられると、父も気分が良くなって気を許してしまうという状態でした」
認知症を患う父親の懐に入り込んだかと思えば、父親を勝手に別の病院に連れて行き、「認知症は軽度である」という医師の言質を取るなど、怪しい動きを見せていました。
そして、極めつきは、印鑑登録証明書を変更していたといいます。その変更した印鑑を使い、『養子縁組』の書類を作成して、勝手に届け出ていたのです。さらに、変更した印鑑を使い、父親の名義で3000万円の借り入れを行っていたという知人男性。しかも、父親の会社の株式を譲渡する契約書まで作成していたといいます。
そして娘は、知人男性が財産目当てで勝手に養子縁組したのではないかと疑い、2023年に、養子縁組の無効を求めて東京家庭裁判所に提訴しました。判決は『父親の認知症は重度で、経緯に強い疑問が残る。娘が日常生活をサポートしているので、知人男性と親子関係を作る必要性が認められず、財産狙いがあったと指摘せざるを得ない』として、無効になったということです。
2024年度の養子縁組の届け出数は約5万4000件だといいます。15歳未満の場合は、家庭裁判所が審査しますが、15歳以上で養親が20歳以上の場合は、双方が署名し届け出るだけで『養子縁組』が成立するということです。
Q.養親のみの署名で、その他の家族の署名などはいらないということですか?
(亀井正貴弁護士)
「いらないです。当人同士だけです」
Q.認知症を患っている場合、音声と映像は証拠となり得るのでしょうか?
(亀井正貴弁護士)
「決定打にはならないけど、なり得ます。一番大事なのは、後見人を選任しているところです。家庭裁判所が入っていて、恐らく認知の関係をチェックしていると思うので、これが大きいです」
■知らないうちに隣人の“娘”と養子縁組に…
さらに別の例で見ていきます。
80代女性は、亡夫との間に子どもがいないため、法定相続人がいませんでした。2002年に持病が悪化し入院。家の隣人が、入院中、毎日お見舞いに来て、退院後も食事の支援など、身の回りの世話をしてくれていたのですが、実は入院から2日後に、隣人は自分の娘を80代女性と養子縁組させていました。隣人の娘は80代女性と交流はなかったということです。
そして、隣人とその娘は、2004年に80代女性が亡くなると、亡くなった翌日に定期預金口座を解約して払戻金の約350万円を受け取りました。さらに3か月後、同じ手法で160万円を受け取り、4か月後には不動産の相続手続きを行ったといいます。
一連の出来事を不審に思い、80代女性の財産管理団体が提訴しました。大阪高裁は2009年、80代女性と隣人の娘との間に交流がなかったほか、親子としての関係を築く意思が全くなく財産目的だったとして、80代女性の意思を欠くと判断し、養子縁組が無効となりました。
Q.引き出されたお金は返ってくるんですか?
(亀井弁護士)
「もちろん相続で得たものであれば無効ですから、返還請求ができます。ただ、故意がある人には全額請求できますが、ウソであるということを知らずに貰った人の場合には、今あるものだけを返還するので、返還請求の範囲が違ってきます」
Q.財産目当てか普通の養子縁組かを見極めるのは難しくないですか?
(亀井弁護士)
「財産目的であったとしても、“親子関係を築く”という意思があれば認定されてしまうので、この場合は非常にきわどいです」
高齢者の養子縁組が悪用されないようにするためには、どうすればいいのでしょうか?60代女性の弁護士によると、「養子縁組の届け出からは分からない。本人の当時の意思の有無をどう証明するかが一番の壁」だといいます。
注目するポイントは、
●そもそも養子縁組が必要だったか?
●養子縁組で作られた親子の関係性は親密か?
●複数の印鑑が作られていないか?
●養子が不動産を売却していないか?
という点だといいます。
亀井弁護士によると、悪用を防ぐ策として、養子縁組が受理されないよう役所に申し出ることができ「仮に養子縁組の届け出がなされても、市役所は手続きを中断し、親族らは本人の意思などを確認することが可能になる」ということです。
(「情報ライブミヤネ屋」2026年3月18日放送)


