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【前代未聞】「今回の不祥事は人についてきた」巨額の不正融資の裏に20年間トップに降臨した“絶対的存在”『いわき信用組合』旧経営陣はどんな罪に?法律の専門家が解説
2025年6月25日 UP
福島県にある『いわき信用組合』で明らかになった、20年以上に及ぶ巨額の不正融資。2004年から組織ぐるみで続けていたという前代未聞の事態に、預金者からも怒りの声があがっています。地域に根付く金融機関で一体、何が?その悪質な手口とは?元検事・亀井正貴弁護士の解説です。
■累計247億円以上・使途不明金10億円超…前代未聞の“不正融資”発覚
2025年5月30日に第三者委員会が公表した調査結果によると、『いわき信用組合』の不正融資は2004年3月~2024年11月までで累計247億円以上、使途不明金は少なくとも10億円にのぼります。
また、263名義・1316口座が無断借用名口座として、不正利用されていました。役員や職員の親族など一定の関係がある人の名義が使用されていたといいますが、中には無関係の人の名前もあったといいます。
預金者からは、「預金なども解約に来た。知らないところで勝手に操作されていると思ったら不安になるし、不信感がある」「いわき市民として恥ずかしい」といった声が聞かれました。
『いわき信用組合』は、経営難に陥った大口取引先に資金を注入するため、実態のない企業、いわゆる“ペーパーカンパニー”を使い、う回融資を行っていました。ただ、際限なく“ペーパーカンパニー”に融資を続けることはできず、架空とはいえ貸した分を返してもらわなければ、銀行としては成り立ちません。そこで、名義人に無断で開設した口座を使って、大口取引先への融資に流用するという手口で、不正融資を行っていたということです。
Q.なぜ“ペーパーカンパニー”を通さなければいけなかったのですか?
(元検事・亀井正貴弁護士)
「20年前、私は何度もこういった手口を担当しました。大口取引先は実質的に破綻していますが、銀行としてはそれを隠さなければいけないので、そのために『う回融資』をします。別の所を経由して融資したことにすると、債権者は銀行ではなく、う回融資先になりますから、破綻している会社が見えてこなくなります。その後、大口取引先から銀行に返させます」
Q.う回融資・不正融資したお金を銀行に返して、それを繰り返すんですか?
(亀井弁護士)
「そうです。20年前に多くの金融機関がやっていた手口です。それだけだと大口取引先は生きていけないので、今度は『架空融資』も使います。ただ、う回融資は還流しているだけですが、架空融資は完全に焦げついていきます」
Q.亀井先生が担当したケースで、名義人に無断で口座を開設していたことはありましたか?
(亀井弁護士)
「さすがに、そこまではなかったです。これは、すごく悪質だと思います」
Q.“う回融資→不正融資→大口取引先が銀行に返済”を繰り返していたら247億円になった、と考えていいんですか?
(亀井弁護士)
「私は、そう思っています。第三者委員会を全部は見ていませんが、恐らく焦げつきはもっと少なく、不正融資は銀行に返ってきても不正融資になるので、累計で247億円になったということだと思います」
■不正は“旧経営陣”主導で?20年間トップに降臨・江尻前会長の存在
第三者委員会が特に厳しく批判したのは、20年間トップに君臨していた江尻次郎前会長です。第三者委員会のヒアリングアンケートには、「江尻氏に嫌われると出世できない」「役員報酬も江尻氏が単独で決めていた」という回答があったといいます。
『いわき信用組合』本多洋八理事長も会見で、「今回の不祥事は、人についてきていたもの。旧経営陣が起点となり、江尻前会長が強力な存在であった」と、一連の不正は“旧経営陣”の主導で行われたと強調しました。過去には不正をただそうとした人もいたということですが、本多理事長によると、「私の先輩がそういう行動をしていたが、それが組織の中で大きな力にはならなかった。賛同する人が少なかった」ということです。
■調査“妨害”も…“旧経営陣”は何罪に問われる?
そんな中、第三者委員会の弁護士は会見で、「組合側が協力的だったとは、とても言い難い。あるべきものを隠滅したという話も出てきたり、そういう事象が数多く続いた」と話し、組合側がノートパソコンをハンマーで破壊する・手帳を処分するなど、調査を妨害したということです。
Q.江尻前会長をはじめ、どういう罪に問われますか?
(亀井弁護士)
「不正融資に関しては『背任罪』、それ以外には『文書偽造』や『証拠隠滅』の可能性も出てきます。他人名義を使ったなら、名義についての情報が漏れていますから、『個人情報保護法違反』もあります」
Q.旧経営陣に返済義務は発生しますか?
(亀井弁護士)
「不正融資すること自体が善管注意義務違反ですから、損害賠償義務を負います」
Q.新しい経営陣が前会長などを訴える可能性は?
(亀井弁護士)
「訴えるでしょうし、民事的な請求もするでしょうし、刑事告発にいく可能性もあります。ただ、払えないでしょうから、破産するしかないと思います」
Q.亀井先生が担当した多くの金融機関は、破綻したんですか?
(亀井弁護士)
「もう何十と破綻して、経営者に対して責任追及して、告発していました。ただ、預金者は守られます。当時(20年前)より補償はもっと上がっているかもしれません」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2025年6月12日放送)


