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【独自解説】行動緩和制限の実証実験 埼玉県・大野知事 “参加の意向” 『限定的な地域で、大規模でない実証実験を』
2021年9月23日 UP
行動制限緩和の実証実験
政府はワクチン接種が広く行き渡る11月頃をメドに、行動制限を緩和する方針を決定。「接種証明」や「陰性証明」の提示があれば、会食人数や県をまたいだ旅行などの制限が緩和されるとみられます。
来月、その実証実験が行われますが、大阪府、北海道、愛知県、福岡県、そして埼玉県などが実証実験への参加に名乗りを上げました。来月にも始まる予定の行動制限緩和の実証実験に参加の意向を表明している埼玉県の大野元裕(おおの・もとひろ)知事にどんな目的で、誰を対象に、どんな方法で行うのか?など実証実験にまつわる様々な疑問について聞きました。
10月から予定の行動制限緩和の実証実験の中身はというと、例えば飲食店や大規模イベント、ライブハウスなどが想定されています。これはワクチンの2回接種、検査による陰性を証明できることが前提となっています。西村大臣はこの検査については国が承認した抗原検査キットの利用も、と言及しています。
実証実験の内容は?
Q. 知事には国から、このように実証実験をやってください、こういう対策をやってくださいと連絡が来ているんですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「政府から一方的に連絡が来ているというよりも、政府からの投げかけで、(スタジオの)フリップで示していただいたものは、いずれもそういった投げかけの中に入ってきています。ただその一方で、例えば飲食店と大規模イベント会場では、使えるものが違ったりするので、細部についてはこちら側の要望も含めて、随分長い間お互いにすり合わせを行ってきました。ただ途中で第5波がピークを迎えたので、検討についてはしばらく行われていなかったというのが現状です」
Q.各地で状況が違うので実証実験のルールの細部については、各都道府県知事の裁量で決めるのですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「都道府県によって状況が違いますので、埼玉のケースは1つのモデルとして、そこはしっかりとお示しをしたい。それからもう1つは、やはりワクチンの接種が随分進んできているので、そこでの効果を試すということもあるので、単なる緩和ではないと思っています」
埼玉県の感染状況は?
(埼玉県・大野元裕知事)
「ご参考までに申し上げると、これ(手元のフリップ)は埼玉県の例なんですけれども、棒線は年代ごとのワクチンの接種割合、折れ線は年代ごとの新規陽性者10万人当たりの数を表しています」
(埼玉県・大野元裕知事)
「このフリップの上の方は一番高い所が70代で、その下が60代とありますけれども、70代・60代は、第5波においても緊急事態宣言にいかない程度の人数、まん延防止等重点措置にいかない程度の人数しか陽性者が出てないです。8割、9割の(ワクチン)接種率になると、こうなっています。ただし、20代の人たちは、緊急事態宣言に入るステージ4の9倍ぐらいの数になっています。ですから、やはりこれは接種を前提として検討したいという話になっています」
Q. ある程度ご高齢の方は、ずいぶん慎重に行動されていて感染者数が増えていなかったんですが、若い方は行動範囲が広いので陽性率も高かった。この棒グラフを見ると、ワクチン接種が進んでいくと、若い方の陽性率もガクッと落ちてきてますね?
(埼玉県・大野元裕知事)
「若い方も落ちていますし、もともと8月の第5波に入るときには、60代で7割以上、80代、70代で9割近くが接種されていましたので、そうなると第5波はあれだけ厳しかったのに、その世代だけはステージ2、まん延防止等重点措置にかかる前程度しか陽性者は出なかったんです。ただこれワクチンだけが理由じゃないかもしれないので、総合的に判断する必要がありますから、やはりここは実証実験をしながら確認していくことが必要だと思います」
実証実験の具体的なやり方は?
Q.飲食店に入店するときは、「ワクチン2回接種の証明」もしくは「PCR抗原検査の陰性証明」のある人だけで行って、お酒を飲んでくださいという考え方でいいのですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「そこは細部について今詰めているところです。というのは10月以降、まん延防止等重点措置になるのか、あるいは全く制限がかからないのか、これは状況に応じて変わると思っています。しかも我々としては、今は限定的な地域で実証実験しましょうと。というのは、これは『入っていいですよ』というと、『差別だ』というふうに感じる方も中におられますし。あるいは現在我々のほうから提言しているのは、お店の中で仕切る、例えば昔よくあった、喫煙の席と喫煙じゃない席と、その間に仕切りがあったりする、例えばああいったイメージを一定の広さのところは取れるのではないかとか、こういった議論をいま重ねているところで、先ほどのその差別の話だとか、あるいは感染の状況だとか、これはまずはとにかく本番になる前に実証しないと。『いいよ』と思っている方も、『よくないよ』と思っている方も、今のところ何のファクト(事実)もないですから。これをまずしっかり実証してからやりましょうと、これが我々の提案です」
Q.実証事件では良いところだけでなく、悪いところもあぶり出さなければならない。例えばワクチンを打っている人、もしくは陰性証明を持っている人でお酒を飲んでもらうというケースだけなのか。もしくは全然未接種で陰性証明も貰っていませんという人も中に入れて、感染がどれぐらい広がるか、ワクチン打っている人が他の人にうつさないのか、うつすのか、そういう実験のやり方もあるんですが、それはお考えですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「我々としては、その未接種の方との比較で考えるということは、今のところ考えていません。ただ接種をした方がお入りになることによって、周りの社会的な影響がどうなるか。それから、実はもう既にその地域についてはある程度、頭の中にありますので、例えば夜のお店の営業状況とか、定点観測を始めようということで、始まったあとは、どういう形で皆さんが行動していただけるかどうか。それから、その結果、仮にそのようなお店でクラスターが発生したとして、LINEを使って一緒にお店の中にいた人が接触していた時間があり、仮に陽性の場合はあとから通知が行くようなシステムを持っています。そういったものを使っていただいて、その時間内に一緒にいた方の中で感染があったかどうか、こういったことを検証したいと思います」
Q.お店の形態も様々ある。カラオケ歌っていいとかいけないとか、時短でまずやってみるのか、それともフルオープンでやるのか、色々と試行錯誤があると思いますが、知事のイメージは?
(埼玉県・大野元裕知事)
「国と話していて、(対象の店舗数は)実はそんなに大規模な数になっていないので、一定程度のサンプリングになると思います。したがって、大きなお店があったり、あるいはその小さなバーみたいなところがあったり、商工団体などと話をしてエリアを限定する。もう1つは、埼玉県は東京の隣で、極めて交通の便がいい県です。東京に近すぎると、隣都県から流れ込んできてしまうかもしれません。ある程度、他の都県から遠いとか、そういった議論は今させていただいていく中で、普段とどう変わってくるのか。そしてそれが仮にフルオープンになったとしても、私は1日、2日で完全に昔の姿に繁華街が戻ると思っていません。そうすると利用される方々の反応はどうか。やっぱり段階を踏む必要があると思います」
実証実験のスタート時期は?
Q.10月1日から始まるというのも決まっていないのですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「そこは、合意はありません。ただ政府は11月ぐらいにはというふうに仰っているし、先ほど申し上げたワクチン接種の割合が11月にはということなので、仮にそこで日本全体でやるとすると、その前の10月に実証実験しないと、色々な課題がありますから、その課題を我々が検討するためには、現時点では海のものとも山のものともつかない海外の例しかないので、我々としてはやっぱりそこは限定的であっても実証実験をして右からの方も左からの方も両方がその課題について議論できるような、そんな体制を整えるのが10月じゃないと間に合わないですよ、というふうに申し上げています」
Q.各都道府県によって、実証実験のスタートはバラバラになる?
(埼玉県・大野元裕知事)
「実験はそうかもしれません。先ほど申し上げた感染者状況もありますので。ただここは政府に聞いていただきたいと思います。私は埼玉県のことしか分かりませんので…」
実証実験のエリアは?
Q. 実証実験に関しては、飲食店は埼玉県で例えば認証制度、感染対策の認証を受けているお店という意味ではなくて、一部エリアの限定されたお店で一度やってみるということですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「後者を考えています。つまり、認証制度は埼玉県全体に広がっていますけれども、やはり一定のエリアで、しかもそのエリアである程度の期間と条件を守っていただけるところとやっていかないと実証実験になりませんから、それを考えています」
Q.東京都の往来まで県として手を伸ばして効果を見極めたいというのは、現況では厳しい?
(埼玉県・大野元裕知事)
「埼玉県は、いい意味でも悪い意味でも日本の縮図みたいなところがあって、郊外部もあれば都市部もある。そういった中で、ある程度、私どもで得た知見や経験というものが、これ全国に仮に広がるときに役に立たなければなりませんので。例えば六本木のど真ん中みたいなところと離島とは違うわけですから。われわれは可能なかぎり、皆さんに共有できるような情報を実証していくことが大切だと思っています」
県民の理解は? 情報の扱いは?
Q. ここのお店は実証実験で使うので営業します。そうなってくると、他の店も開けさせてくれよとという方や、飲みに行く方も限定されると、僕も2回ワクチンを打ってるんだから、ちょっとぐらいお酒飲ましてくれよという方も出てくると思うんですが、実証実験に対する県民の理解はどうですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「いま、商工会議所とか関係団体と話をしながら、どういう地域を選ぶのがいいのか、そのときに当然お店にもプラスの面もあるかもしれませんが、マイナスの面も両方あるかもしれないので、ご理解を得てやらなければいけないので、それをきちんとご説明をさせていただいた上で、そのルールに従ってやっていただくことで実証実験をします」
Q. アプリとかLINEを使って追跡ができるということになると、どこの誰がどのお店に何時に入られたとかという情報も吸い上げるということでいいんですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「今の私どもが持っている追跡システムは、個人情報を吸い上げるのではなくて、自分のところで一緒に居たことだけが分かる。ご協力頂ける陽性の方については、自分が陽性になったときに今度はそのLINEに戻すと、一緒にいた方にLINE側から連絡がいく。我々行政府が例えば誰々が、どの時間に、この店にいたということを知ることはありません」
Q.ある程度、お店も限定してということになると、利用者も限定しなきゃいけない?
(埼玉県・大野元裕知事)
「そこはご利用いただくときに、ご了解をいただける方になると思います。つまり、今こういう実証実験やっていて、こういう条件でやっていますので、ご協力頂けますか?とお願いすることになると思います」
大規模イベントは?
Q.埼玉県には大きなイベントが出来る場所があって、東京から多くの人も来る。そういう大規模なイベントはどうするのですか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「イベントについても、国と合わせる必要がありまして、これも協議中です。ただ埼玉県としては、飲食店等の方が埼玉県はサンプルとして非常によいのではないかという話をしています」
県をまたいだ旅行は?
Q.県をまたぐ移動・旅行については、どう考えていますか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「都道府県をまたぐ移動は、最終的にはもちろん自由になってほしいと思いますけれども、今の段階ではやっぱりなかなか難しい。ただ関東圏というよりも、首都圏1都3県はすでに見ているとほとんど傾向が同じなのです。つまり東京が上がると我々も上がり、東京が下がると我々も下がる。陽性率やさまざまな属性もほとんど同じ方向で動いていますので、関東圏と言っても一緒ではありません。この1都3県については、県の境で残念ながらウイルスは分けてくれていない。その一歩先に進めるかどうかは、この次の感染状況を見ながら議論しなければいけないと考えます」
デジタル接種済み証明や陰性証明は?
Q.デジタル庁は年内にデジタルでという話もありますが、実証実験として11月から徐々に規制を緩和するとなると、接種券プラス本人確認証、もしくは陰性証明を利用者に持っていただくことになる?
(埼玉県・大野元裕知事)
「私のほうで申し上げられるのは、本来であればそういった全国共通の制度、あるいはもしかすると世界共通の制度を持っていただくのが一番便利になるのかもしれません。その意味では政府の関与が大切なんですが、私が見るかぎり、政局の時期になかなかそれをやることが難しいとすれば、私ども現場、前線に居ますので、その現場でまずはできることをやると。それを積み重ねてあとで政府にご協力いただけるような態勢を重ねることが大切だと思います。ワクチンやあるいはウイルスは待ってくれませんから。今の状況に合わせてしっかりやりたいと思っています」
民間の独自の動きは?
Q.政府とか県に先んじて、旅行会社とかお店が様々な動きをしていますが、知事はどう思いますか?
(埼玉県・大野元裕知事)
「民間の方々のお気持ちはよく分かります。ただ結果として民間の方々に責任を負わせるのか。例えば政府やあるいは県がこういう制限をしてください、そしてそれを横並びというか、Aという方はそれを守って、Bという方はいやこれはお客さんへのサービスなんですというのは、やっぱりリスクあります。そこはやっぱり我々、公のほうでルールや制度を示してあげないと、民間の方々の気持ち分かりますが、我々が責任取るべき問題だと思います」
第6波も懸念される中、埼玉県のみならず、ほかの都道府県の対応にも注目されます。
(情報ライブミヤネ屋 2021年9月22日放送)


